fc2ブログ
平成22年度 行政書士試験 問題20は、「国家賠償法2条の判例」に関する正誤問題でした。

どの判例も著名なものですから、非常に出来が良かったようですね。
本問を落とされた方は、猛反省が必要です。

では、平成22年度 行政書士試験 問題20の解答解説を載せておきます。


問題20 道路の設置管理に関する国家賠償についての次の記述のうち、判例に照らし、妥当なものはどれか。

1 国家賠償の対象となるのは、道路の利用者の被害に限られ、沿道住民の騒音被害などについては、道路管理者は、賠償責任を負わない。

2 土砂崩れなどによる被害を防止するために多額の費用を要し、それについての予算措置が困難である場合は、道路管理者は、こうした被害についての賠償責任を免れる。

3 道路上に放置された故障車に追突して損害を被った者がいたとしても、道路自体に瑕疵があったわけではないから、道路管理者が賠償責任を負うことはない。

4 ガードレールの上に腰掛けるなどの通常の用法に即しない行動の結果生じた損害についても、道路管理者は、賠償責任を負う。

5 道路の欠陥を原因とする事故による被害についても、道路管理者は、それを原状に戻すことが時間的に不可能であった場合には、賠償責任を負わない。














問題20 正解 5
1 妥当でない
 判例 (最判平成7年7月7日―国道43号線事件) は、「国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態、すなわち他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいうのであるが、これには営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連においてその利用者以外の第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含むものであり、営造物の設置・管理者において、このような危険性のある営造物を利用に供し、その結果周辺住民に社会生活上受忍すべき限度を超える被害が生じた場合には、原則として同項の規定に基づく責任を免れることができないものと解すべきである (最大判昭和56年12月16日)。そして、道路の周辺住民から道路の設置・管理者に対して同項の規定に基づき損害賠償の請求がされた場合において、右道路からの騒音、排気ガス等が右住民に対して現実に社会生活上受忍すべき限度を超える被害をもたらしたことが認定判断されたときは、当然に右住民との関係において右道路が他人に危害を及ぼす危険性のある状態にあったことが認定判断されたことになるから、右危険性を生じさせる騒音レベル、排気ガス濃度等の最低基準を確定した上でなければ右道路の設置又は管理に瑕疵があったという結論に到達し得ないものではない。」と判示している。
 よって、国家賠償請求の対象となるのは、道路の利用者の被害に限られるものではなく、沿道住民の騒音被害等についても、道路管理者は、損害賠償責任を負うことがある。

2 妥当でない
 判例 (最判昭和45年8月20日―高知落石事件) は、「本件道路における防護柵を設置するとした場合、その費用の額が相当の多額にのぼり、上告人県としてその予算措置に困却するであろうことは推察できるが、それにより直ちに道路の管理の瑕疵によつて生じた損害に対する賠償責任を免れうるものと考えることはできない」と判示している。
 よって、土砂崩れなどによる被害を防止するために多額の費用を要し、それについての予算措置が困難であるとしても、道路管理者は、こうした被害についての損害賠償責任を免れうるわけではない。

3 妥当でない
 判例 (最判昭和50年7月25日―故障自動車放置事件) は、「道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し、修繕し、もつて一般交通に支障を及ぼさないように努める義務を負うところ (道路法42条)、前記事実関係に照らすと、同国道の本件事故現場付近は、幅員7.5メートルの道路中央線付近に故障した大型貨物自動車が87時間にわたつて放置され、道路の安全性を著しく欠如する状態であつたにもかかわらず、当時その管理事務を担当する橋本土木出張所は、道路を常時巡視して応急の事態に対処しうる看視体制をとつていなかつたために、本件事故が発生するまで右故障車が道路上に長時間放置されていることすら知らず、まして故障車のあることを知らせるためバリケードを設けるとか、道路の片側部分を一時通行止めにするなど、道路の安全性を保持するために必要とされる措置を全く講じていなかつたことは明らかであるから、このような状況のもとにおいては、本件事故発生当時、同出張所の道路管理に瑕疵があつたというのほかなく、してみると、本件道路の管理費用を負担すべき上告人は、国家賠償法2条及び3条の規定に基づき、本件事故によつて被上告人らの被つた損害を賠償する責に任ずべきであり、上告人は、道路交通法上、警察官が道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、道路の交通に起因する障害の防止に資するために、違法駐車に対して駐車の方法の変更・場所の移動などの規制を行うべきものとされていること (道路交通法1条、51条) を理由に、前記損害賠償責任を免れることはできないものと解するのが、相当である。」と判示している。
 よって、道路上に放置された故障車に追突して損害を被った者がいた場合、道路自体に瑕疵があったわけではないとしても、道路管理者が損害賠償責任を負う。

4 妥当でない
 判例 (最判昭和53年7月4日) は、「国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理に瑕疵があつたとみられるかどうかは、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきものであるところ、前記事実関係に照らすと、本件防護柵は、本件道路を通行する人や車が誤つて転落するのを防止するために被上告人によつて設置されたものであり、その材質、高さその他その構造に徴し、通行時における転落防止の目的からみればその安全性に欠けるところがないものというべく、上告人の転落事故は、同人が当時危険性の判断能力に乏しい6歳の幼児であつたとしても、本件道路及び防護柵の設置管理者である被上告人において通常予測することのできない行動に起因するものであつたということができる。したがつて、右営造物につき本来それが具有すべき安全性に欠けるところがあつたとはいえず、上告人のしたような通常の用法に即しない行動の結果生じた事故につき、被上告人はその設置管理者としての責任を負うべき理由はない」と判示している。
 よって、ガードレールの上に腰掛けるなどの通常の用法に即しない行動の結果生じた損害について、道路管理者は、賠償責任を負わない。

5 妥当である
 判例 (最判昭和50年6月26日―奈良赤色灯事件) は、「本件事故発生当時、被上告人において設置した工事標識板、バリケード及び赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたのであるから、道路の安全性に欠如があつたといわざるをえないが、それは夜間、しかも事故発生の直前に先行した他車によつて惹起されたものであり、時間的に被上告人において遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことは不可能であつたというべく、このような状況のもとにおいては、被上告人の道路管理に瑕疵がなかつたと認めるのが相当である。」と判示している。
 よって、道路の欠陥を原因とする事故による被害についても、道路管理者は、それを原状に戻すことが時間的に不可能であった場合には、賠償責任を負わない。

【宣伝】
平成23年1月23日14時から2時間ほど、東京法経学院福岡校にて以下の講座のガイダンスを行います。
福岡市周辺の方で、平成23年度 行政書士試験 合格を目指されている方は、ぜひおいでください。
(なお、当方は、3月の行政法から登場の予定)
行政書士 本科(基本講座)'11


ブログランキングに参加しています。よろしければ、ポチっとお願いします。
人気ブログランキングへ ホームページ制作会社探しなら【BB Planet.jp】
スポンサーサイト



2010.12.23 Thu l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top

コメント

コメントの投稿












トラックバック

トラックバック URL
http://hiroohirooyagi.blog54.fc2.com/tb.php/924-1da91435
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)