fc2ブログ
平成21年度 行政書士試験 問題34は、「不法行為の成立」に関する正誤問題でした。

肢1、4及び5は、基礎知識により解けます。
そこで、肢2又は3に絞ることができますが、そのいずれが正解であるかの判断は、難しかったでしょうね。
「得点できれば、ラッキー!」でよいかと思います。

なお、ここ数年、民・商法については、単純な条文問題ではなく、事例問題が増加しています。
実務重視の傾向なのでしょうね。この点は、非常に高く評価することができます。
ただ、適切な事案の設定がむずかしいためか、事例判決(=普遍的な規範を提供する判決ではなく、その事例についてのみ当てはまるような判決)を出題することが増えています。たとえば、本問の肢2、3は、事例判決に近い感じです。
実務重視といっても、受験生に事例判決の知識を求めること(たとえば、事例判決の事案を正解肢とすること。ただし、他の4肢が、基本知識で解けるのなら問題ありません。)は、行き過ぎだと感じますね。

では、平成21年度 行政書士試験 問題34の解答解説を載せておきます。







問題34 不法行為の成立に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1 鍵が掛けられていた、他人の自転車を盗んだ者が、その自転車を運転している最中に不注意な運転により第三者に怪我を負わせてしまった場合、自転車の所有者は、第三者に対して不法行為責任を負う。

2 責任能力を有する未成年者が不法行為をなした場合、親権者の未成年者に対して及ぼしうる影響力が限定的で、かつ親権者において未成年者が不法行為をなすことを予測し得る事情がないときには、親権者は、被害者に対して不法行為責任を負わない。

3 飲食店の店員が出前に自動車で行く途中で他の自動車の運転手と口論となり、ついには同人に暴力行為を働いてしまった場合には、事業の執行につき加えた損害に該当せず、店員の使用者は、使用者責任を負わない。

4 請負人がその仕事について第三者に損害を与えてしまった場合、注文者と請負人の間には使用関係が認められるので、注文者は、原則として第三者に対して使用者責任を負う。

5 借家の塀が倒れて通行人が怪我をした場合、塀の占有者である借家人は通行人に対して無過失責任を負うが、塀を直接占有していない所有者が責任を負うことはない。









問題34 正解 2
1 妥当でない
 民法709条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定している。このように、不法行為責任が成立するためには、①自己の故意又は過失ある行為に基づくこと、②行為者に責任能力があること、③行為が違法であること、④違法な行為によって損害が生じたこと (因果関係) の要件を充たすことが必要である。そして、①の要件については、他人の行為であっても、その者が違法な事実を生ずることにつき故意又は過失があるときは、なお自己の行為による加害行為と解するべきであると解されている (有力説)。
 本肢において、自転車の所有者は、それに鍵を掛けて他人による利用を禁止しており、他人が違法な事実を生ずることにつき故意又は過失があるとはいえない。
 よって、自転車の所有者は、第三者に対して不法行為責任を負わない。

2 妥当である
 判例 (最判平成18年2月24日) は、「未成年者が責任能力を有する場合であっても,その監督義務者に監督義務違反があり,これと未成年者の不法行為によって生じた損害との間に相当因果関係を認め得るときには,監督義務者は,民法709条に基づき損害賠償責任を負う」とした上で、本肢と同様の事案 (親権者の未成年者に対して及ぼしうる影響力が限定的で、かつ、親権者において未成年者が不法行為をなすことを予測し得る事情がない) において、監督義務違反があったとはいえないとして、親権者に対する民法709条に基づく損害賠償責任を認めなかった。
 よって、親権者は、被害者に対して不法行為責任を負わない

3 妥当でない
 判例 (最判昭和46年6月22日) は、すし屋の店員2名が、使用者所有の自動車を運転し、またはこれに同乗して、出前に行く途中、その自動車の方向指示器を点燈したまま直進したため、これと衝突しそうになった他の自動車の運転者と口論になり、そのあげく同人に対し暴行を加えて負傷させたため、同人がその使用者に対して使用者責任 (民法715条) を追及した事案において、「被上告人の被つた原判示の損害は、右訴外人両名が、上告会社の事業の執行行為を契機とし、これと密接な関連を有すると認められる行為をすることによつて生じたものであるから、民法715条1項にいう被用者が使用者の事業の執行につき加えた損害というべきである。」とした。

4 妥当でない
 民法716条は、「注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。」と規定している。
 このように、注文者は、原則として、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない

5 妥当でない
 民法717条1項は、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」と規定している。
 このように、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、責任を免れることができる。
 したがって、占有者の責任は、無過失責任ではない。
 また、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

ブログランキングに参加しています。よろしければ、ポチっとお願いします。
人気ブログランキングへ

 

 

 

ホームページ制作会社探しなら【BB Planet.jp】
スポンサーサイト



2009.12.24 Thu l 行政書士試験 平成21年度 l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

三番の選択肢が酷すぎます。
他の判例では確か違う結論だったはずですし、合理的に考えても暴行を働くことと事業の執行が関連しているとは到底考えられません。
2017.03.05 Sun l . URL l 編集
No title
事業執行性の要件について、判例は、外形理論を採っています。この外形理論では、外形に対する信頼が、これを肯定する重要な要素とされています。もっとも、外形に対する信頼は、取引行為については妥当しても、事実行為については、妥当しづらいといえます。そこで、判例は、被用者の勤務中の喧嘩については、「事業の執行行為を契機として、これと密接な関連を有すると認められる」ことといった別の基準によって処理しているようにみえるとする見解(平野教授)があります。この見解は、とても説得的ですね。ただし、受験生がこの基準を使って問題が解けるとは思えません。結局のところ、判例の結論を覚えておくほかないのでしょうが、どの基本書でも取り上げられているとは言えない判例を、「行政書士試験受験生は、覚えておけ!」というのは、おっしゃる通り、「酷」ですね。したがって、当方は、捨て問として、時間短縮の方向で対処された方が良いかと考えます。
2017.03.06 Mon l 笠原 裕明. URL l 編集

コメントの投稿












トラックバック

トラックバック URL
http://hiroohirooyagi.blog54.fc2.com/tb.php/679-285644f1
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)