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平成21年度 行政書士試験 問題32は、「費用償還請求権」に関する横断的問題でした。

問題30を作成した試験委員が作ったものと推測されますが、こちらの方が出来がいい感じがします。
試験委員ががんばってくれているので、当方としても解説の書き甲斐があります。

問題としては、肢イが常識的にみて妥当でないことはわかって欲しいですね。
後は、選択肢との関係で、肢エと肢オですが、肢オが常識的にみて妥当だなぁと感じられれば、得点できますね。

なお、肢エにおいて、「賃借人が増築した部分は、附合により建物所有者に帰属する(最判昭和38・5・31)。なぜなら、賃借人には、建物を増築する権限はないからである 。」旨の解説を見つけました。
この解説は、最判昭和38年10月29日の判例と矛盾します。
最判昭和38年10月29日は、賃借人が増築した部分が、建物と一体となった(つまり建物の構成部分となった)かが争われた事案で、「二階建木造建物の階下の一部を賃借した者が、判示事情のものに賃貸人の承諾をえて賃借部分をとりこわしその跡に自己の負担で店舗を作つた場合には、右店舗の一部に原家屋の二階が重なつており、既存の二本の通し柱および天井の梁を利用していても、他に特段の事情のないかぎり右店舗部分は従前の賃借人の区分所有権に帰すものと解すべきである。」旨を判示しています。
最判昭和38年5月31日は、「所論増築部分が甲建物と別個独立の存在を有せず、その構成部分となつている旨の原審の認定は、挙示の証拠に照し、首肯するに足りる。このような場合には、右増築部分は民法242条により甲建物の所有者である被上告人の所有に帰属し、上告人は右増築部分の所有権を保有しえず、従つて、その保存登記をなしうべきかぎりでない。」としています。
この判例は、賃借人には、建物を増築する権限がないから増築部分の所有権は建物所有者に帰属するとしたものではなく、増築部分が甲建物の構成部分となって独立性を有しないゆえに、その部分の所有権を観念することはできないとしたものです。
誤解を生じやすい部分ですので、ご注意ください。

では、平成21年度 行政書士試験 問題32の解答解説を載せておきます。




問題32 他人の財産に対する費用の支出とその償還請求に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア A・B間の家屋売買契約が解除されても、買主Aは解除前に支出した有益費の償還を受けるまで家屋を留置することができるが、Aは、留置中にこれを使用することにより、法律上の原因なく利得することとなるから、その利得を不当利得として返還する義務がある。

イ Aは、Bに対して自己が所有する土地を売り渡したが、この売買契約と同時に買戻しの特約をしていた場合において、Aが買戻権を行使したときは、この売買契約成立後Aが買戻権を行使するまでにBがその土地につき必要費を支出していたとしても、Bは、Aに対してこの費用の償還請求をすることができない。

ウ Aは、Bから建物を賃借して居住し、その問に同建物につき有益費を支出したが、その後に、B・C間で賃貸人たる地位の移転が生じた場合に、Aは、原則としてBに対しては有益費の償還を請求することができない。

エ Aは、Bに対して自己が所有する建物を賃貸していたが、Bが有益費を支出して同建物に増築部分を付加して同建物と一体とした場合において、後にその増築部分が隣家の火災により類焼して失われたときにも、Bは、Aに対して増築部分につき有益費の償還請求をすることができる。

オ Aは、Bと寄託契約に基づき受寄物を保管していたが、保管事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、Bに対し、その費用および支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

1 ア・ウ
2 ア・エ
3 イ・エ
4 イ・オ
5 ウ・オ









問題32 正解 3
ア 妥当である
 判例 (大判昭和10年5月13日) は、家屋の賃借人がその賃借中に支出した必要費若しくは有益費のため留置権を行使し、その償還を受けるまで当該家屋に居住するのは、他に特殊の事情がない限り、民法298条2項ただし書の規定する留置物の保存に必要な使用をすることに当たるとした。
 また、判例 (大判昭和13年12月17日) は、家屋の賃借人であった者が、契約終了後にその建物に対して留置権を有する場合、留置家屋の居住によって得た利益は、不当利得として家屋所有者に償還すべきであるとした。

イ 妥当でない
 民法583条2項本文は、「買主又は転得者が不動産について費用を支出したときは、売主は、第196条の規定に従い、その償還をしなければならない。」と規定している。このように、買戻権者 (売主) は、相手方 (買主又は転得者) に対して必要費等の費用を償還しなければならない。

ウ 妥当である
 判例 (最判昭和46年2月19日) は、「建物の賃借人または占有者が、原則として、賃貸借の終了の時または占有物を返還する時に、賃貸人または占有回復者に対し自己の支出した有益費につき償還を請求しうることは、民法608条2項、196条2項の定めるところであるが、有益費支出後、賃貸人が交替したときは、特段の事情のないかぎり、新賃貸人において旧賃貸人の権利義務一切を承継し、新賃貸人は右償還義務者たる地位をも承継するのであつて、そこにいう賃貸人とは賃貸借終了当時の賃貸人を指し、民法196条2項にいう回復者とは占有の回復当時の回復者を指すものと解する。」とした。

エ 妥当でない
 判例 (最判昭和48年7月17日) は、「民法608条2項、196条2項が、貸借人に有益費償還請求権を与えている法意は、貸借人が貸借物につき有益費を支出してその価値を増加させているときには、増加価値を保持したまま貸借物が返還されると賃貸人は貸借人の損失において増加価値を不当に利得することになるので、現存する増加価値を償還させることにあると解される。そうすると、前述のように増・新築部分が返還以前に滅失したときには、賃貸人が利得すべき増加価値もすでに消滅しているから、特段の事情のないかぎり、有益費償還請求権も消滅すると解すべきである。」とした。

オ 妥当である
 民法665条の規定により準用される同法650条1項は、「受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。」と規定している。このように、受託者は、寄託事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、寄託者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

以上により、妥当でないものは、イ・エであるから、正解は3になる。

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2009.12.22 Tue l 行政書士試験 平成21年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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