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平成18年度 行政書士試験 問題41は、「違憲審査制の法的性格」に関する多肢選択式問題でした。

基礎知識の部分からの出題ですし、著名な判例の事案ですから、すべて得点すべきでした。

なお、市販の過去問は、よく書けているものと、「判例名は暗記すること」「『具体的』の反対語である『抽象的』が入る」等というようにほとんど解説らしい解説をしていないものがあります。後者は、精神論、技術論としては傾聴に値するとも思われますので、そちらが合う方は、いいかもと思います。

では、平成18年度 行政書士試験 問題41の解答解説を載せておきます。






問題41 憲法81条の定める違憲審査制の性格に関する次の文章の空欄 [ ア ] ~ [ エ ] に当てはまる言葉を、枠内の選択肢 (1~20) から選びなさい。

 違憲審査制の性格に関する最高裁判所のリーディングケースとされるのは、1952年のいわゆる [ ア ] 違憲訴訟判決である。ここで最高裁は次のように判示し、[ ア ] の憲法違反を主張する原告の訴えを却下した。「わが裁判所が現行の制度上与えられているのは司法権を行う権限であり、そして司法権が発動するためには [ イ ] な争訟事件が提起されることを必要とする。我が裁判所は [ イ ] な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法及びその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し [ ウ ] な判断を下すごとき権限を行い得るものではない。けだし最高裁判所は法律命令等に関し違憲審査権を有するが、この権限は司法権の範囲内において行使されるものであり、この点においては最高裁判所と下級裁判所との間に異るところはないのである(憲法七六条一項参照)。……要するにわが現行の制度の下においては、特定の者の [ イ ] な法律関係につき紛争の存する場合においてのみ裁判所にその判断を求めることができるのであり、裁判所がかような [ イ ] 事件を離れて [ ウ ] に法律命令等の合憲性を判断する権限を有するとの見解には、憲法上及び法令上何等の根拠も存しない」。かような性格の違憲審査制を通例は付随的違憲審査制と呼び、これを採用している最も代表的な国としては [ エ ] を挙げることができる。

1 治安維持法  2 独立的  3 直接的  4 ドイツ  5 抽象的
6 一時的  7 客観的  8 フランス  9 付随的  10 オーストリア
11 間接的   12 アメリカ  13 政治的  14 不敬罪  15 警察予備隊
16 具体的  17 終局的  18 主観的  19 農地改革  20 イギリス





問題41 正解 ア 15 警察予備隊
         イ 16 具体的
         ウ 5 抽象的
         エ 12 アメリカ
 憲法81条は、最高裁判所に「一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限」を与えている。この権限を違憲審査権と呼び、この裁判所の有する違憲審査権を通じて個々の国民の憲法上の権利を保障する制度を違憲審査制と呼んでいる。
 この違憲審査制の法的性格に関しては、大きく次の二つの考え方がある。一つは、通常の裁判所が、具体的な訴訟事件を裁判する際に、その前提として当該事件の解決に必要な限りにおいて違憲審査権を行使すべきである (付随的違憲審査制) という考え方である。もう一つの考え方は、特別に設けられた憲法裁判所が、具体的な訴訟事件とは関係なく、法令その他の国家行為の違憲審査を行うべき (抽象的違憲審査制) とする考え方がある。
 この点、判例 (最大判昭和27 (1952) 年10月8日―警察予備隊違憲訴訟判決) は、「わが裁判所が現行の制度上与えられているのは司法権を行う権限であり、そして司法権が発動するためには具体的な争訟事件が提起されることを必要とする。我が裁判所は具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法及びその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下すごとき権限を行い得るものではない。けだし最高裁判所は法律命令等に関し違憲審査権を有するが、この権限は司法権の範囲内において行使されるものであり、この点においては最高裁判所と下級裁判所との間に異るところはないのである(憲法76条1項参照)。……。要するにわが現行の制度の下においては、特定の者の具体的な法律関係につき紛争の存する場合においてのみ裁判所にその判断を求めることができるのであり、裁判所がかような具体的事件を離れて抽象的に法律命令等の合憲性を判断する権限を有するとの見解には、憲法上及び法令上何等の根拠も存しない。」と判示した。この判決は、付随的違憲審査制を採ることを明らかにしたものであると解されている。

ア 15 警察予備隊
 前記のとおり、違憲審査制の法的性格に関する最高裁判所のリーディングケースとされるのは、[
15 警察予備隊] 違憲訴訟判決 (最大判昭和27 (1952) 年10月8日) である。
イ 16 具体的
 前記のとおり、わが国の違憲審査制の法的性格に関しては、通常の裁判所が、[16 具体的] な訴訟事件を裁判する際に、その前提として当該事件の解決に必要な限りにおいて違憲審査権を行使すべきである (付随的違憲審査制) という考え方がある。

ウ 5 抽象的
 前記のとおり、わが国の違憲審査制の法的性格に関しては、特別に設けられた憲法裁判所が、具体的な訴訟事件を離れて、[5 抽象的] に法令その他の国家行為の違憲審査を行うべき (抽象的違憲審査制) とする考え方がある。

■ 抽象的違憲審査制においては、具体的な訴訟事件とは関係なく違憲審査権が行使されるため、その「具体的な訴訟事件とは関係がな」いという点をとらえて「抽象的」と呼ばれている。

エ 12 アメリカ
 付随的違憲審査制は、[12 アメリカ] において確立した制度であり、抽象的違憲審査制は、ドイツ等の大陸法系の諸国で採られている制度である。

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2009.08.19 Wed l 行政書士試験 平成18年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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