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平成18年度 行政書士試験 問題27は、「制限行為能力者と取引をした相手方の保護」に関する問題でした。

出題の意図が、民法4条~21条だけでなく、98条の2や120条1項を含めた幅広い知識を問うものであるとするならば、良問であると考えます。

正解肢は、受験生の常識を問うものであり、得点すべきでした。

なお、市販の過去問を見ましたが、資格学校系や出版社系でも個人名が出ていないものについては、民法に入って執筆者のレベルが特に上がった感じです。おそらく、司法試験を受けていた方が執筆なさっているのでしょうね。個人名が出ているものは、執筆者のレベルにばらつきがあり、誤っているものも見つけました。たとえば、選択肢5で、相手方からの取り消しを認める記述を見つけましたが、これは明らかな誤りだと考えます。

また、選択肢5には、誤植があると思います。この年の問題は、問題5でも指摘しましたが、誤植が多いですね。この誤植により没問になることはありませんが、国家試験の性格を有している試験だけに注意してほしいところです。

では、平成18年度 行政書士試験 問題27の解答解説を載せておきます。






問題27 制限行為能力者と取引をした相手方の保護に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 制限行為能力者が自己の行為を取り消したときには、相手方は受け取っていた物を返還しなければならないが、相手方は、制限行為能力を理由とする取消しであることを理由に、現に利益を受けている限度で返還をすれば足りる。

2 制限行為能力者が未成年者の場合、相手方は、未成年者本人に対して、1か月以上の期間を定めてその行為を追認するかどうかを催告することができ、その期間内に確答がなければその行為を追認したものとみなされる。

3 制限行為能力者が成年被後見人であり、相手方が成年被後見人に日用品を売却した場合であっても、成年被後見人は制限行為能力を理由として自己の行為を取り消すことができる。

4 制限行為能力者が被保佐人であり、保佐人の同意を得なければならない行為を被保佐人が保佐人の同意またはそれに代わる家庭裁判所の許可を得ずにした場合において、被保佐人が相手方に対して行為能力者であると信じさせるために詐術を用いたときには、制限行為能力を理由としてこの行為を取り消すことはできない。

5 制限行為能力者が被補助人であり、補助人の同意を得なければならない行為を被補助人が補助人の同意を得てした場合であっても、相手方は、制限行為能力を理由として補助人の行為を取り消すことができる。




問題27 正解 4
1 誤り
 民法121条本文は、「取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。」と規定している。このため、制限行為能力者が自己の行為を取り消した場合には、相手方は、受け取っていた物を返還しなければならない。
 そして、取引の当事者は、原則として、受け取った物の返還義務を負うが、制限行為能力者を保護する趣旨から、この者は、取引行為によって現に利益を受けている限度で返還すればよい (同条ただし書)。このように、制限行為能力を理由とする取消しであっても、相手方の返還義務は限定されない。

2 誤り
 民法98条の2本文は、「意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者又は成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。」と規定しており、当該規定は、催告のような意思の通知にも類推適用されると解されている。このため、制限行為能力者が未成年者の場合において、相手方が未成年者本人に対して催告をしたとしても無意味であり、何ら法律効果は生じない。したがって、制限行為能力者が未成年者の場合において、相手方が未成年者本人に対して1か月以上の期間を定めてその行為を追認するか否かの催告をし、その期間内に確答がないときでも、制限行為能力者が当該行為を追認したものとはみなされない。
なお、制限行為能力者の相手方の催告は、本人が制限行為能力者である間は、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、本人が行為能力者となった後は、その者に対してすることができる (同法20条1項2項)。

■ 人 (法人を含む。以下同じ。) の行為により、一定の法律効果が発生するもののうち、人が一定の法律効果の発生を欲してする行為を法律行為といい、それ以外の行為を準法律行為という。
法律行為は、意思表示 (意思表示とは、わかりやすく言えば、法律効果の発生を欲する意思を表示することである。) を要素として成立する点に特徴があり、法律行為が行われると意思表示の内容どおりの法律効果が発生する。たとえば、売買であれば、買主は、物の所有権を取得することを欲して意思表示をし、売主は、その代金を取得することを欲して意思表示をし、その意思表示の内容どおりの法律効果が発生する。なお、法律行為は、意思表示の表れ方により、単独行為、契約、合同行為の三つに分類される。
 これに対して、準法律行為においては、意思的な要素を伴うものであっても、その意思内容が法律効果の発生に向けられていないため、法がある行為に一定の法律効果を付与している。たとえば、能力取得後の催告 (民法20条1項) は、本人 (制限行為能力者であった者) に対して取り消すことができる行為を追認するか否かの確答を求めるものでしかなく、催告に基づく法律効果 (=本人が当該催告に対して一定の期間内に催告を発しないことにより、当該行為が追認されたものとみなすこと) は、法によって付与される。なお、準法律行為は、催告 (民法20条等)、受領の拒絶 (同法493条等) 等のような意思の通知、代理権授与の表示 (同法109条)、承諾延着の通知 (同法522条) 等のように一定の事実を知らせる観念の通知等に分けられる。
 法律行為と準法律行為を区別するのは、民法第1編第5章の表題が「法律行為」とされているとおり、民法90条以下の規定等の法律行為に関する規定が適用されない行為を明らかにするためである。しかし、準法律行為の性質に応じて法律行為に関する規定を類推適用すべきであると考えられており、区別の意味はそれほど大きいものではない。

3 誤り
 民法9条は、「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」と規定している。このように、成年被後見人の法律行為は、原則として、取り消すことができるが、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、取り消すことができない。

4 正しい
 民法13条4項は、「保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。」と規定しているが、同法21条は、「制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。」と規定している。このように、保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、原則として、取り消すことができるが、被保佐人が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

5 誤り
 民法17条4項は、「補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。」と規定している。この規定を反対解釈すれば、補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意を得た行為は、補助人であっても取り消すことはできないことになる。制限行為能力制度が制限行為能力者を保護するために設けられた趣旨からしても当然である。
 なお、同法120条1項は、「行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。」と規定している。この規定から明らかなように、制限行為能力者と取引をした相手方は、取消権者に含まれない。

■ 本文中「相手方は、制限行為能力を理由として補助人の行為を取り消すことができる」との記述の「補助人」は、「被補助人」の誤りであると思われる。

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2009.07.29 Wed l 行政書士試験 平成18年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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