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平成18年度 行政書士試験 問題21は、「都道府県の処理する自治事務と法定受託事務」に関する問題でした。

平成11年の地方自治法の改正により、地方公共団体の事務が再編成され、機関委任事務(団体委任事務と異なり、国の事務でした)は廃止されました。これに伴い、新たに設けられた自治事務と法定受託事務の区別や差異を理解しておく必要があります。
本問は、自治事務と法定受託事務の差異を問う問題であり、地方自治法等に規定されている条文の幅広い知識を問う問題であり、良問であると考えます。

なお、市販の過去問の中には、「法定受託事務は、自治事務と同様に地方公共団体の事務である」ことを理由に、その執行の費用を地方公共団体が負担すること、国の大臣から一般的な指揮監督を受けないこと等を導いている解説を見つけました。
しかし、旧地方自治法には、地方公共団体の事務に対する内閣総理大臣の是正改善措置要求権が存在していたように、上記理由から論理的にそのような結論を導くことができるかは疑問があります(国家賠償責任についても、法定受託事務については、国もそれ相応の責任を負うべきと考えられています)。
上記結論を導くに際しては、条文がある以上、やはり条文を理由にすべきでしょう。
ただ、受験テクニックと割り切るならば、上記の考え方には、一定の評価を与えることができると思います。

では、平成18年度 行政書士試験 問題21の解答解説を載せておきます。




問題21 都道府県の処理する自治事務と法定受託事務に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1 自治事務の執行の経費は、都道府県が負担するのが原則であるが、法定受託事務の執行の経費は、国が負担するのが原則である。

2 都道府県議会は、自治事務に関しては、国の法令に違反しなければ条例を制定できるが、法定受託事務については、国の法令の特別の委任がなければ条例を制定できない。

3 都道府県の監査委員は、自治事務の執行については原則として監査できるが、法定受託事務の執行については、政令で定めるものについてのみ監査できる。

4 都道府県による法定受託事務の執行については、国の大臣は、一般的な指揮監督の権限を有するが、自治事務については、法定された関与のみが認められる。

5 都道府県による法定受託事務の執行については、国の大臣による代執行の手続があるが、自治事務の執行については、こうした手続はない。





問題21 正解 5
1 妥当でない
 地方財政法9条は、「地方公共団体の事務 (地方自治法第252条の17の2第1項及び第291条の2第2項の規定に基づき、都道府県が条例の定めるところにより、市町村の処理することとした事務及び都道府県の加入しない同法284条第1項の広域連合 (第28条第2項及び第3項において「広域連合」という。) の処理することとした事務を除く。) を行うために要する経費については、当該地方公共団体が全額これを負担する。ただし、次条から第10条の4までに規定する事務を行うために要する経費については、この限りでない。」と規定しており、この地方公共団体の事務には、自治事務のみならず法定受託事務も含まれる (地方自治法2条2項8項9項参照)。このように、普通地方公共団体の事務の執行の経費は、自治事務であるか法定受託事務であるかを問わず、原則として、当該普通地方公共団体が負担する。
 したがって、「法定受託事務の執行の経費は、国が負担するのが原則である」との記述は妥当でない。
 なお、本選択肢の前半部分の記述は妥当である。

■ 法定受託事務は、自治事務と同様に地方公共団体の事務である (地方自治法2条2項8項9項) から、両者の区別の基準は、事務の帰属主体にあるのではない。両者の区別の基準は、主として、国等の普通地方公共団体に対する関与、行政不服審査 (同法255条の2) 等において認められる。

2 妥当でない
 地方自治法14条1項は、「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる。」と規定し、同法2条2項の事務には、自治事務はもちろん、法定受託事務も含まれるから、普通地方公共団体の議会は、法令に違反しない限りにおいて法定受託事務に関し、条例を制定することができる。
 したがって、「都道府県議会は、……、法定受託事務については、国の法令の特別の委任がなければ条例を制定できない。」との記述は妥当でない。
 なお、「都道府県議会は、自治事務に関しては、国の法令に違反しなければ条例を制定できる」との記述は妥当である。

3 妥当でない
 地方自治法199条1項は「監査委員は、普通地方公共団体の財務に関する事務の執行及び普通地方公共団体の経営に係る事業の管理を監査する。」と規定し、同条2項前段は、「監査委員は、前項に定めるもののほか、必要があると認めるときは、普通地方公共団体の事務 (自治事務にあつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその他の事由により監査委員の監査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。) の執行について監査をすることができる。」と規定している。このように、都道府県の監査委員は、原則として、自治事務の執行のみならず法定受託事務の執行についても監査することができる。
 したがって、「都道府県の監査委員は、……、法定受託事務の執行については、政令で定めるものについてのみ監査できる。」との記述は妥当でない。
 なお、「都道府県の監査委員は、自治事務の執行については原則として監査できる」との記述は妥当である。

4 妥当でない
 平成11年の地方自治法の改正により国の大臣の普通地方公共団体に対する国の大臣の一般的な指揮監督の権限について定めた規定 (たとえば、平成11年改正前地方自治法150条) は廃止され、現在の地方自治法245条の2は、「普通地方公共団体は、その事務の処理に関し、法律又はこれに基づく政令によらなければ、普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与を受け、又は要することとされることはない。」と規定している。
 したがって、「都道府県による法定受託事務の執行については、国の大臣は、一般的な指揮監督の権限を有する」との記述は妥当でない。
 なお、選択肢の後半部分は妥当である。

■ 平成11年改正前の地方自治法には、機関委任事務に対する国の大臣の一般的な指揮監督権を認める規定が置かれていた。たとえば、平成11年改正前地方自治法150条は、「普通地方公共団体の長が国の機関として処理する行政事務については、普通地方公共団体の長は、都道府県にあつては主務大臣、市町村にあつては都道府県知事及び主務大臣の指揮監督を受ける。」と規定していた。
 また、国の行政の統一と均衡を保持するという見地から、普通地方公共団体の事務 (公共事務 (いわゆる固有事務)、(団体) 委任事務及び行政事務の三種類に分けられていた。) についても、内閣総理大臣の是正改善措置要求権 (同法246条の2) の規定が置かれていた。

5 妥当である
 地方自治法245条の8は、都道府県による法定受託事務の執行については、国の大臣による代執行の手続についての規定を置いている。しかし、自治事務の執行については、このような手続についての規定を置いていない。

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2009.07.21 Tue l 行政書士試験 平成18年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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