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11月11日付記事で、平成30年度行政書士試験 問題44の解答について、次の通り記載しました。

「この記述(=A県を被告として、農地転用許可の義務付けの訴えに不作為の違法確認訴訟を併合して提起すべき。(45字))は、行政書士試験の趣旨または題意に沿って解答した場合です。
しかし、問題文を素直に読めば、申請書がA県知事に届かなかったように読めます。
そうなると、A県知事に農地転用許可の申請に対する何らかの応答義務が発生したということは、いえないと考えます。
したがって、A県を被告とする不作為の違法確認は、不適切であるように思います。
不受理について処分性を認めることができれば、その不受理の取消しを請求するということができるかもしれません。
そうなると、次の解答になります。
B市に対し、申請の不受理処分の取消しを求めて処分の取消しの訴えを提起すべき。(38字)」

当方は、当初、上記の通り考えました。
しかし、そうなると、次の問題が生じます。
①A県知事とB市農業委員会は、別個独立の機関であると解されるから、(本問では、あくまでもB市農業委員会の行為しか問題にすることができず)A県知事の許可を問題とすることはできない→農業委員会の不受理行為または意見を付さなかった不作為について審査請求できないか?
 ↓
②農業委員会が不受理とすることは、行政手続法の一般原則から言えば、できないはず→そうなると、不受理に処分性が認められないのではないか。また、意見を付すことは、行政内部の事項であり、これまた、処分性が認められないのではないか?
※知事に対する建築許可の申請に関し、消防法7条に基づいて消防長が知事に対して行う同意、不同意は処分に該当しないという判例(最判平成34年1月29日)
 ↓
③しかし、そうなると、Xの救済手段がない→救済手段のない法はあり得ない(正義に反する)→農地法等の特別法で農業委員会には、不受理とする権限が与えれれているのではないか。または、正義の観点から、農地委員会の不受理について、処分性が認められるという解釈ができないか?
 ↓
④そうなると、上記の通りの答えが導けないか?
 ↓
⑤この考え方は、行政書士試験の範囲を逸脱しているから、当局は、「A県を被告として、農地転用許可の義務付けの訴えに不作為の違法確認訴訟を併合して提起すべき。(45字)」という答えを求めていることは明らか
 ↓
⑥「A県を被告として、農地転用許可の義務付けの訴えに不作為の違法確認訴訟を併合して提起すべき。(45字)」を第1解答として提示したうえで、異議を留めるため、「B市に対し、申請の不受理処分の取消しを求めて処分の取消しの訴えを提起すべき。(38字)」という第2解答を提示し、後日、検討しよう。

以上が、ここ2日ほどの経過でした。

昨日は、東京法経学院の試験講評(速報版)を書いていたため、ようやく時間が取れました。

判例・裁判例を検討していたところ、類似の事例を発見しました。(詳細判例は、後掲)

1 平成19年9月26日さいたま地方裁判所  第4民事部
 ①農業委員会をもって都道府県の一機構とみることはできない。そして,上記申請に対する手続に照らすと,本件申請は,埼玉  県知事を名宛人に対してなされたものではあるが,春日部市農業委員会から同知事に対する申請書の送付がない限り,同知  事に対する申請として認められないことになる。したがって,本件においては知事に対する申請はなく,また本件申請に対する  知事の処分は存しない。
 ②農業委員会には申請書の受領を拒否する権限はないのであるから,本件申請の受理拒否は無効な行為といわざるをえない。そうであるとすれば,農業委員会に対する本件申請は残存しており,農業委員会は,これに意見を付して送付すべき義務をな  お負っていることになる。他方,本件申請があってから40日以上が経過したことも明らかである。したがって,原告としては,農  地法施行令1条の2第3項に基づき,知事に直接申請書を提出することができ,これにより本件における原告の救済は達せら   れるし,このように解することが原告に特段不合理な結果をもたらすともいえない。
 ③争点5(知事に不作為の違法があるか)について
   本件において,春日部市農業委員会から埼玉県知事に対し,本件申請にかかる申請書が送付されたことはないのであるか   ら埼玉県知事に本件申請に対する作為義務が発生することはない。そうであれば,原告の本件申請に対する作為義務を前提  とする予備的請求にかかる訴えは不適法であるといわざるをえない。

※ ②の法的構成は、感心しましたね。救済手段を考えたうえで、農地法施行令1条の2第3項の規定を探し当て、本件申請の受理拒否は無効な行為という方向で処理した感じです。この裁判例を見て、当方の上記第2解答は、無理な構成だと悟りました。

2 上記1判決の控訴審判決
  法5条1項の許可に係る申請書の提出先は農業委員会とされているところ,農業委員会は,農業委員会等に関する法律に基 づき設置された市町村の行政機関であって(農業委員会等に関する法律3条 ,地方自治法に基づき設置された都道府県の行 政機関である都道府県知事からは独立した行政委員会である。このように,行政組織法上,処分行政庁からは独立した行政機関を経由機関として,申請を受理する法制度の下においては,申請権を有する者が 経由機関に申請書を提出した場合には これによって処分行政庁の応答を得ようとする意思の表明があることは明らかであって,処分行政庁は,申請に対し,相当の期間 内に応答する義務を負うことになると解すべきである。そして,経由機関を経由して申請書を提出すべきことが定められている場合にあっては,上記相当の期間は,経由機関から処分行政庁に申請書を進達等するために要する相当の期間及び処分行政庁が申請に対する処分をするために要する相当の期間を通じた期間をいうものと解され,こうした相当の期間を経過しても,申請に対する応答がされない場合には,処分行政庁は,申請に対する応答義務を怠るものとの評価を免れない。

※この法的構成には、正直驚きました。法的救済のため、法制度に解釈を加えて救済手段を編み出したもので、さすがというべきでした。この方向性が正しいのでしょうね。
なお、原審のさいたま地裁判決に対しては、「令1条の15第2項 1条の2第3項が上記のように直接都道府県知事に申請書を提出することを認めているのは,行政不服審査,行政事件訴訟の手続による救済とは別に,新たに都道府県知事に申請書を提出することによって,簡明に申請に対する応答を得る途を開いたにすぎないものというべきである。」として、令1条の15第2項 1条の2第3項は、救済手段を定めたものではないから、申請に対し行政庁がきちんと対応しない場合に備えて、それ自体の救済手段を考えましょうとする考え方にも、感心しました。さすがというべきです。

3 平成元年1月23日 名古屋高等裁判所金沢支部
※ 裁判所の判例委員会の裁判要旨をそのまま載せておきます。 
 県規則において,県建築主事あての建築確認申請及び県知事あての開発行為許可申請は町長を,県知事あての農地転用許可後の事業計画変更承認申請は町農業委員会を経由して,前記各申請書を提出すべき旨が定められている場合につき,前記規則に基づいて町長等が行う申請書の受理及び審査は,処分権者である建築主事等の1機構として行うものであり,町長等に対し申請書が提出されれば,建築主事に対して申請をしたのと同一の効果を生じるものというべきであるから,町長等が,申請書を建築主事等に送付しない場合には,端的に,建築主事等を被告として,申請に対する応答をしない不作為の違法確認の訴えを提起すべきであり,町長等を被告として不作為の違法確認を求めることは,処分権限を有しない者を被告とし,また,申請書の送付行為という行政処分性を有しない行為を対象にしている点で,不適法であるとした事例

※この裁判例の考え方を、本問題の事例にそのまま当てはめることができるとすれば、当方の第1解答の通りになります。
なお、この判例が出た当時、義務付け訴訟は、規定が置かれていなかったので、不作為の違法確認の訴えを提起すべきとされています。

★まとめ
東京高判と名古屋高判で、その論理構成は違えど、結論は一致しますね(すなわち、当方の第1解答と同じ)。
おそらく、行政書士試験研究センターの解答例も、「A県を被告として、農地転用許可の義務付けの訴えに不作為の違法確認訴訟を併合して提起すべき。(45字)」とほぼ同じものになるかと思います。

今回の問題には、とても勉強させていただきました。試験委員に感謝いたします。

<参考判例>
平成19年9月26日さいたま地方裁判所  第4民事部
主文
1 本件訴えをいずれも却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
(主位的請求)
原告が平成18年7月3日付でした農地法5条に基づく農地転用許可申請について,埼玉県知事が訴外春日部市農業委員会を通じ同月31日付で受理を拒否した処分を取り消す。
(予備的請求)
原告が平成18年7月3日付でした農地法5条に基づく農地転用許可申請について,埼玉県知事が相当の期間内に何らの処分をしないことが違法であることを確認する。

第2 事案の概要
1 事案の概要
  本件は 原告が春日部市農業委員会に対し,別紙物件目録記載の土地(本件土地)につき,農地法5条に基づく農地転用許可 申請(本件申請)をしたところ,春日部市農業委員会は,許可申請書に必要書類(農用地除外証明書等)が添付されていない等 として,本件申請を受理しなかったことから(本件受理拒否行為),これを不服とする原告が,春日部市農業委員会は農地転用  許可の判断権者である県知事の一機構であり,同行為は知事の行為と評価できると主張して,被告に対し,主位的請求として本 件申請の受理を拒否した処分の取消を,予備的請求として,農地転用許可申請がありながら許否の判断を怠った不作為の違法 確認を求めたものである。
2 争いのない事実等(証拠により容易に認定できる事実は,かっこ内に証拠を示す。)
  略
3 法令等の定め
  略
4 4 争点
(主位的請求について)
(1) 本件受理拒否行為が知事の処分といえるか
(2) 本件受理拒否行為が行政処分に当たるか
(3) 審査請求の前置があるか
(4) 本件受理拒否行為が行政処分に当たるとした場合に本件受理拒否行為は違
法か
(予備的請求について)
(5) 知事に不作為の違法があるか

5 当事者の主張
  略

第3 争点に対する判断
1 争点1(本件受理拒否行為が知事の処分といえるか)について
(1) 農業委員会は農業委員会等に関する法律に基づき設置された市町村の行政機関であり(農業委員会等に関する法律3条), 他方都道府県知事は地方自治法に基づき設置された都道府県の行政機関であって(地方自治法139条),その所属する公共  団体を異にする別個の機関である。そして,農地法89条が,農林水産大臣につき,農業委員会ないし都道府県知事の事務に関 して,農業委員会ないし都道府県知事に対し,指示を行うことができ,都道府県知事がその指示に従わない場合には,農林水産 大臣が自らその事務を行うことができると規定していること,これに対し,都道府県知事が農業委員会に対し,同様に指示等を行 うことができる旨の規定はないこと及び同法施行令において,申請者は,農業委員会が40日以内に申請書を送付しない場合に は都道府県知事に対し直接申請書の提出ができる旨規定していることからすれば,法令上,県知事には農業委員会の作為ない し不作為につき是正する権限はなく,両者は指揮命令関係にはないものと解される。このような両者の関係に加え,農業委員会 が選挙により選出された地域の農業に精通した者及び学識経験者等による合議体であり(農業委員会等に関する法律7条,8  条,12条),法令に基づき農地法の利用関係の調整及び自作農の創設維持に関する事項を処理するほか,農地等として利用  すべき土地の農業上の利用の確保や農地等の利用集積その他農地等の効率的な利用の促進に関する事務の処理や,当該区 域内の農業及び農民に関する事項につき,意見を公表し,他の行政庁に建議し,又はその諮問に応じて答申することができると されていること(同法6条)及び農業委員会が相当期間内に申請書を送付しないため,農業委員会を経由しないで申請書が提出 された場合においても,当該申請に関し,農業委員会の意見を聴くことができる(農地法施行規則2条の5第2項)ことからすれ  ば,農地法施行令が,農地法5条の許可申請書を農業委員会を経由して提出することとしたのは,農地転用の許可権者たる県 知事が,当該申請につき適切な判断をするにあたり,地域農業に精通する農業委員会の意見を聴取するのが相当としたためで あると解される。
  以上の農業委員会と都道府県知事の有する各権限,両者の関係及び審査手続きに照らすと,農業委員会をもって都道府県の 一機構とみることはできない。そして,上記申請に対する手続に照らすと,本件申請は,埼玉県知事を名宛人に対してなされたも のではあるが,春日部市農業委員会から同知事に対する申請書の送付がない限り,同知事に対する申請として認められないこ とになる。したがって,本件においては知事に対する申請はなく,また本件申請に対する知事の処分は存しない。
 この点,原告は,農業委員会には独立の処分権限がないことから,農業委員会は知事の一機構であり,本件申請の受理拒否行 為は県知事の行為と評価できると主張する。しかし,独立の行政庁が諮問機関としての立場で意見を述べるにとどまり,国民に 対する関係で独自の処分を行う権限がない場合は他の法令上も見られることであり,対外的に独自の処分権限がないことをもっ て,必ずしも農業委員会が知事の一機構であるということにはならない。
 (2) ところで,本件において,春日部市農業委員会は,原告に対し,本件申請を受理できない旨の書面(甲6)を交付しているとこ ろ,同書面には,相当期間を定めて補正を促す旨の記載等はなく,申請を却下する最終的な意思を表示したものと評価できる。 上記のとおり,本件では,知事による処分の有無が問題となっているから,本来,農業委員会の上記処分について判断をする必 要はないが,原告は,このような場合における救済措置の有無を問題としているから,念のため,農業委員会にかかる処分を行 う権限があるか検討する。
  農地法5条1項に定める農地の転用許可の事務は本来国の事務にかかるところ,都道府県知事の第1号法定受託事務とされ たもの(農地法91条の3第1項2号)であって,これにより都道府県知事は,必要的添付書類の有無を含めた申請の適法不適  法,許可の適否につき判断する権限を与えられたものと解されること,施行令1条の2第2項が「農業委員会は,前項ただし書の 規定により申請書の提出があったときは,農林水産省令で定める期間内に,当該申請書に意見を付して,都道府県知事に送付 しなければならない」と農業委員会の送付義務を規定していること,法令は,添付書類の欠如等形式的な不備のある場合に,農 業委員会が申請書の受理を拒否できる旨の明文の規定をおいていないことからすれば,農業委員会は,提出された申請書を審 査し,意見を付して都道府県知事に送付することができるのみであり,申請書の受理を拒否する権限はないと解すべきである。
 そうすると,農業委員会には申請書の受領を拒否する権限はないのであるから,本件申請の受理拒否は無効な行為といわざる をえない。そうであるとすれば,農業委員会に対する本件申請は残存しており,農業委員会は,これに意見を付して送付すべき  義務をなお負っていることになる。他方,本件申請があってから40日以上が経過したことも明らかである。したがって,原告とし  ては,農地法施行令1条の2第3項に基づき,知事に直接申請書を提出することができ,これにより本件における原告の救済は 達せられるし,このように解することが原告に特段不合理な結果をもたらすともいえない。
(3) 以上によれば,結局本件申請に対する知事による処分は存しないから,本件主位的請求にかかる本件訴えは不適法であると いわざるをえない。
2 争点5(知事に不作為の違法があるか)について
  本件において,春日部市農業委員会から埼玉県知事に対し,本件申請にかかる申請書が送付されたことはないのであるから 埼玉県知事に本件申請に対する作為義務が発生することはない。そうであれば,原告の本件申請に対する作為義務を前提とす る予備的請求にかかる訴えは不適法であるといわざるをえない。
3 結論
 以上によれば,原告の訴えはいずれも不適法であるから,却下することとし,主文のとおり判決する。

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2018.11.13 Tue l 行政書士試験 平成30年度 l コメント (2) トラックバック (0) l top

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このコメントは管理者の承認待ちです
2018.11.16 Fri l . l 編集
Re: 問題44について
> 判例が2つ別れるのは、試験問題としては、適切でないですね。私も義務付けは、書けましたが、不作為の違法確認は書けなかったです。

お読みいただき、ありがとうございます。
さいたま地方裁判所判決は、結局、東京高等裁判所判決によって、一部変更されたので、名古屋高等裁判所金沢支部判決と同じ結論になると思います。ただし、名古屋高等裁判所金沢支部判決の理由付けは、東京高等裁判所判決において、採ることができないとする論理構成と同じになっています(農地転用許可と建築確認申請の違いなどがあるので、一概に比較することはできませんが、ほぼ、同じ法制度の設計になっています。)。
おそらく、学説も、東京高等裁判所判決に従うのでしょうが、よく学習された方であれば、「農業委員会は、都道府県知事から独立しているから、農業委員会の行為によって不利益を受けている以上、農業委員会を相手にすべき」と考えるのが筋ですから、法的救済の観点から、法制度を解釈しなおして、都道府県知事に対し、義務付けの訴え(当然、不作為の違法確認の訴えも併合)を提起しろというのは、酷であると思います。



2018.11.16 Fri l 笠原 裕明. URL l 編集

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