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平成22年度 行政書士試験 問題22は、「大都市制度」に関する正誤問題でした。

大都市制度に関する基本的事項を問うものであり、得点すべきです。

では、平成22年度 行政書士試験 問題22の解答解説を載せておきます。


問題22 地方自治法が定める大都市制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 中核市は、指定都市と同様、市長の権限に属する事務を分掌させるため、条例でその区域を分けて区を設けることができる。

2 指定都市に置かれる区は、都に置かれる特別区と同様に、法人格が認められている。

3 指定都市の数が増加したことにともない、指定都市の中でも特に規模の大きな都市については、特に特例市として指定し、より大きな権限を認めている。

4 指定都市は、必要と認めるときは、条例で、区の議会を置くことができる。

5 指定都市は、地方自治法において列挙された事務のうち、都道府県が法律またはこれに基づく政令の定めるところにより処理することとされているものの全部または一部で政令で定めるものを処理することができる。














問題22 正解 5
1 誤り
 地方自治法252条の20第1項は、「指定都市は、市長の権限に属する事務を分掌させるため、条例で、その区域を分けて区を設け、区の事務所又は必要があると認めるときはその出張所を置くものとする。」と規定している。しかし、中核市について同様の規定は置かれていない。
 よって、「中核市は、指定都市と同様、市長の権限に属する事務を分掌させるため、条例でその区域を分けて区を設けることができる。」との記述は誤りである。
2 誤り
 地方自治法2条1項は、「地方公共団体は、法人とする。」と規定している。ここに地方公共団体とは、普通地方公共団体及び特別地方公共団体をいう (同法1条の3第1項)。そして、普通地方公共団体とは、都道府県及び市町村をいい (同条2項)、特別地方公共団体とは、特別区、地方公共団体の組合、財産区及び地方開発事業団をいう (同条3項)。このうち、都の区は、特別区とされている (同法281条1項) が、指定都市に置かれる区は、特別区とされていない。したがって、指定都市に置かれる区に、法人格は認められていない。

3 誤り
 指定都市とは、政令で指定する人口50万以上の市をいい (地方自治法252条の19第1項)、特例市とは、政令で指定する人口20万以上の市をいう (同法252条の22第1項)。したがって、「指定都市の数が増加したことにともない、指定都市の中でも特に規模の大きな都市については、特に特例市として指定」するとの記述は誤りである。
 また、地方自治法252条の22第1項は、「政令で指定する人口30万以上の市 (以下「中核市」という。) は、第252条の19第1項の規定により指定都市が処理することができる事務のうち、都道府県がその区域にわたり一体的に処理することが中核市が処理することに比して効率的な事務その他の中核市において処理することが適当でない事務以外の事務で政令で定めるものを、政令で定めるところにより、処理することができる。」と規定し、同法252条の26の3第1項は、「政令で指定する人口20万以上の市 (以下「特例市」という。) は、第252条の22第1項の規定により中核市が処理することができる事務のうち、都道府県がその区域にわたり一体的に処理することが特例市が処理することに比して効率的な事務その他の特例市において処理することが適当でない事務以外の事務で政令で定めるものを、政令で定めるところにより、処理することができる。」と規定している。このように、特例市の権限は、指定都市の権限より限定されている。したがって、「指定都市の中でも特に規模の大きな都市については、特に特例市として指定し、より大きな権限を認めている。」との記述は誤りである。

4 誤り
 指定都市において設けられる区は、単なる行政上の区画にすぎないため、これに議会を置くことはできない。

※ 地方自治法252条の20第6項前段は、「指定都市は、必要と認めるときは、条例で、区ごとに区地域協議会を置くことができる。」と規定している。この規定と混同しないようにして欲しい。

5 正しい
 地方自治法252条の19第1項は、指定都市は、児童福祉に関する事務等の一定の事務のうち都道府県が法律又はこれに基づく政令の定めるところにより処理することとされているものの全部又は一部で政令で定めるものを、政令で定めるところにより、処理することができると規定している。

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2010.12.28 Tue l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題21は、「公の施設」に関する正誤問題でした。

地方自治法は、条文数が多く、苦手としている受験生が多いようですが、過去に出題された条文のうち、繰り返し問われている条文は、受験生の常識としなければなりません。
本問の正解肢も、そのうちの一つであり、正解すべき問題でした。

では、平成22年度 行政書士試験 問題21の解答解説を載せておきます。


問題21 公の施設に関する次の記述のうち、法令または最高裁判所の判例に照らし、誤っているものはどれか。

1 地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的であれば、その区域外においても公の施設を設けることができる。

2 公の施設の設置および管理に関する事項について、法律またはこれに基づく政令に特別の定めがない場合には、地方公共団体の長が規則でこれを定めなければならない。

3 公の施設の利用関係において、一定の地方税の負担をしているような「住民に準ずる地位にある者」には、住民と同様に、不当な差別的取扱いの禁止を定めた地方自治法244条3項の規律が及ぶ。

4 指定管理者に公の施設を管理させようとする場合、地方公共団体は条例でその旨を定めなければならず、長の規則によってこれを定めることはできない。

5 県知事がした公の施設の利用不許可処分に不服がある者は、総務大臣に審査請求をすることもできるし、県知事に異議申立てをすることもできる。














問題21 正解 2
1 正しい
 地方自治法244条1項は、「普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設 (これを公の施設という。) を設けるものとする。」と規定し、同法244条の3第1項は、「普通地方公共団体は、その区域外においても、また、関係普通地方公共団体との協議により、公の施設を設けることができる。」と規定している。
 よって、地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的であれば、その区域外においても公の施設を設けることができる。

2 誤り
 地方自治法244条の2第1項は、「普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければならない。」と規定している。このように、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがある場合を除き、「条例」でこれを定めなければならない。
 よって、「公の施設の設置および管理に関する事項について、法律またはこれに基づく政令に特別の定めがない場合には、地方公共団体の長が規則でこれを定めなければならない。」との記述は誤りである。

3 正しい
 判例 (最判平成18年7月14日) は、「普通地方公共団体が設置する公の施設を利用する者の中には、当該普通地方公共団体の住民ではないが、その区域内に事務所、事業所、家屋敷、寮等を有し、その普通地方公共団体に対し地方税を納付する義務を負う者など住民に準ずる地位にある者が存在することは当然に想定されるところである。そして、同項が憲法14条1項が保障する法の下の平等の原則を公の施設の利用関係につき具体的に規定したものであることを考えれば、上記のような住民に準ずる地位にある者による公の施設の利用関係に地方自治法244条3項の規律が及ばないと解するのは相当でなく、これらの者が公の施設を利用することについて、当該公の施設の性質やこれらの者と当該普通地方公共団体との結び付きの程度等に照らし合理的な理由なく差別的取扱いをすることは、同項に違反するものというべきである。」と判示している。

4 正しい
 地方自治法244条の2第3項は、「普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体であつて当該普通地方公共団体が指定するもの (以下本条及び第244条の4において「指定管理者」という。) に、当該公の施設の管理を行わせることができる。」と規定している。このように、普通地方公共団体が指定管理者に公の施設を管理させるためには、「条例」の定めるところにより行わなければならず、長の規則の定めるところにより行うことはできない。

5 正しい
 地方自治法244条の4第1項は、「普通地方公共団体の長がした公の施設を利用する権利に関する処分に不服がある者は、都道府県知事がした処分については総務大臣、市町村長がした処分については都道府県知事に審査請求をすることができる。この場合においては、異議申立てをすることもできる。」と規定している。

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2010.12.24 Fri l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題20は、「国家賠償法2条の判例」に関する正誤問題でした。

どの判例も著名なものですから、非常に出来が良かったようですね。
本問を落とされた方は、猛反省が必要です。

では、平成22年度 行政書士試験 問題20の解答解説を載せておきます。


問題20 道路の設置管理に関する国家賠償についての次の記述のうち、判例に照らし、妥当なものはどれか。

1 国家賠償の対象となるのは、道路の利用者の被害に限られ、沿道住民の騒音被害などについては、道路管理者は、賠償責任を負わない。

2 土砂崩れなどによる被害を防止するために多額の費用を要し、それについての予算措置が困難である場合は、道路管理者は、こうした被害についての賠償責任を免れる。

3 道路上に放置された故障車に追突して損害を被った者がいたとしても、道路自体に瑕疵があったわけではないから、道路管理者が賠償責任を負うことはない。

4 ガードレールの上に腰掛けるなどの通常の用法に即しない行動の結果生じた損害についても、道路管理者は、賠償責任を負う。

5 道路の欠陥を原因とする事故による被害についても、道路管理者は、それを原状に戻すことが時間的に不可能であった場合には、賠償責任を負わない。














問題20 正解 5
1 妥当でない
 判例 (最判平成7年7月7日―国道43号線事件) は、「国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態、すなわち他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいうのであるが、これには営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連においてその利用者以外の第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含むものであり、営造物の設置・管理者において、このような危険性のある営造物を利用に供し、その結果周辺住民に社会生活上受忍すべき限度を超える被害が生じた場合には、原則として同項の規定に基づく責任を免れることができないものと解すべきである (最大判昭和56年12月16日)。そして、道路の周辺住民から道路の設置・管理者に対して同項の規定に基づき損害賠償の請求がされた場合において、右道路からの騒音、排気ガス等が右住民に対して現実に社会生活上受忍すべき限度を超える被害をもたらしたことが認定判断されたときは、当然に右住民との関係において右道路が他人に危害を及ぼす危険性のある状態にあったことが認定判断されたことになるから、右危険性を生じさせる騒音レベル、排気ガス濃度等の最低基準を確定した上でなければ右道路の設置又は管理に瑕疵があったという結論に到達し得ないものではない。」と判示している。
 よって、国家賠償請求の対象となるのは、道路の利用者の被害に限られるものではなく、沿道住民の騒音被害等についても、道路管理者は、損害賠償責任を負うことがある。

2 妥当でない
 判例 (最判昭和45年8月20日―高知落石事件) は、「本件道路における防護柵を設置するとした場合、その費用の額が相当の多額にのぼり、上告人県としてその予算措置に困却するであろうことは推察できるが、それにより直ちに道路の管理の瑕疵によつて生じた損害に対する賠償責任を免れうるものと考えることはできない」と判示している。
 よって、土砂崩れなどによる被害を防止するために多額の費用を要し、それについての予算措置が困難であるとしても、道路管理者は、こうした被害についての損害賠償責任を免れうるわけではない。

3 妥当でない
 判例 (最判昭和50年7月25日―故障自動車放置事件) は、「道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し、修繕し、もつて一般交通に支障を及ぼさないように努める義務を負うところ (道路法42条)、前記事実関係に照らすと、同国道の本件事故現場付近は、幅員7.5メートルの道路中央線付近に故障した大型貨物自動車が87時間にわたつて放置され、道路の安全性を著しく欠如する状態であつたにもかかわらず、当時その管理事務を担当する橋本土木出張所は、道路を常時巡視して応急の事態に対処しうる看視体制をとつていなかつたために、本件事故が発生するまで右故障車が道路上に長時間放置されていることすら知らず、まして故障車のあることを知らせるためバリケードを設けるとか、道路の片側部分を一時通行止めにするなど、道路の安全性を保持するために必要とされる措置を全く講じていなかつたことは明らかであるから、このような状況のもとにおいては、本件事故発生当時、同出張所の道路管理に瑕疵があつたというのほかなく、してみると、本件道路の管理費用を負担すべき上告人は、国家賠償法2条及び3条の規定に基づき、本件事故によつて被上告人らの被つた損害を賠償する責に任ずべきであり、上告人は、道路交通法上、警察官が道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、道路の交通に起因する障害の防止に資するために、違法駐車に対して駐車の方法の変更・場所の移動などの規制を行うべきものとされていること (道路交通法1条、51条) を理由に、前記損害賠償責任を免れることはできないものと解するのが、相当である。」と判示している。
 よって、道路上に放置された故障車に追突して損害を被った者がいた場合、道路自体に瑕疵があったわけではないとしても、道路管理者が損害賠償責任を負う。

4 妥当でない
 判例 (最判昭和53年7月4日) は、「国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理に瑕疵があつたとみられるかどうかは、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきものであるところ、前記事実関係に照らすと、本件防護柵は、本件道路を通行する人や車が誤つて転落するのを防止するために被上告人によつて設置されたものであり、その材質、高さその他その構造に徴し、通行時における転落防止の目的からみればその安全性に欠けるところがないものというべく、上告人の転落事故は、同人が当時危険性の判断能力に乏しい6歳の幼児であつたとしても、本件道路及び防護柵の設置管理者である被上告人において通常予測することのできない行動に起因するものであつたということができる。したがつて、右営造物につき本来それが具有すべき安全性に欠けるところがあつたとはいえず、上告人のしたような通常の用法に即しない行動の結果生じた事故につき、被上告人はその設置管理者としての責任を負うべき理由はない」と判示している。
 よって、ガードレールの上に腰掛けるなどの通常の用法に即しない行動の結果生じた損害について、道路管理者は、賠償責任を負わない。

5 妥当である
 判例 (最判昭和50年6月26日―奈良赤色灯事件) は、「本件事故発生当時、被上告人において設置した工事標識板、バリケード及び赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたのであるから、道路の安全性に欠如があつたといわざるをえないが、それは夜間、しかも事故発生の直前に先行した他車によつて惹起されたものであり、時間的に被上告人において遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことは不可能であつたというべく、このような状況のもとにおいては、被上告人の道路管理に瑕疵がなかつたと認めるのが相当である。」と判示している。
 よって、道路の欠陥を原因とする事故による被害についても、道路管理者は、それを原状に戻すことが時間的に不可能であった場合には、賠償責任を負わない。

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2010.12.23 Thu l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題19は、「国家賠償請求訴訟」に関する正誤問題でした。

肢1に関する判例をご存知の方は、皆無だったでしょう (当方が見た解答解説のどれにも載っていませんね)から、残りの四つの肢が分からないと正解に達することができませんね。
残り四つの肢のうち、肢2は有名な判例であり、肢4はきちんと学習している方であれば知っておくべき条文です。
肢3は、取消訴訟と国家賠償請求訴訟の目的・性質等が違っていることを知っていれば、解けますので、応用力を試す問題と言えますね。
そうすると、間違った方の多くは、肢5になるのでしょうか。

国家賠償法に関する問題は、判例を問う問題ばかりで、過去には、手抜き問題と言えるようなものがあったのですが、本問は、試験委員の力作ですね。

では、平成22年度 行政書士試験 問題19の解答解説を載せておきます。


問題19 国家賠償請求訴訟に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1 国家賠償を請求する訴訟は、民事訴訟であるから、その訴訟手続について行政事件訴訟法が適用されることはない。

2 処分の違法を理由として国家賠償を請求する訴訟を提起するためには、事前に、当該処分についての取消判決により、その違法性を確定しておく必要がある。

3 処分に対する取消訴訟の出訴期間が経過して、処分に不可争力が生じた場合には、その違法を理由として国家賠償を請求する訴訟を提起することはできない。

4 処分に対する取消訴訟に当該処分の違法を理由とする国家賠償を請求する訴訟を併合して提起することは許されない。

5 国家賠償を請求する訴訟の被告とされるのは国または地方公共団体に限られ、それ以外の団体が被告となることはない。













問題19 正解 1
1 妥当である
 判例 (最判昭和46年11月30日) は、「国または公共団体が国家賠償法に基づき損害賠償責任を負う関係は、実質上、民法上の不法行為により損害を賠償すべき関係と性質を同じくするものであるから,国家賠償法に基づく普通地方公共団体に対する損害賠償請求権は、私法上の金銭債権であって、公法上の金銭債権ではな」いと判示している。そして、公法上の当事者訴訟 (行政事件訴訟法4条) と民事訴訟との区別は、訴訟における審判の対象 (訴訟物) が公法関係であるか、私法関係であるかによるとされている (多数説)。したがって、国家賠償法に基づく損害賠償請求訴訟は、民事訴訟の性質を有し、公法上の当事者訴訟ではない。
 よって、国家賠償を請求する訴訟は、民事訴訟であるから、その訴訟手続について行政事件訴訟法が適用されることはない。

2 妥当でない
 判例 (最判昭和36年4月21日) は、「行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ右行政処分につき取消又は無効確認の判決を得なければならないものではない」と判示している。

3 妥当でない
 不可争力とは、一定の期間を経過すると私人の側から行政行為の効力を裁判上争うことができなくなる効力をいう。そして、国家賠償請求訴訟は、行政行為の効力を争うものではなく、私人が被った損害を金銭により塡補することを求めるものである。したがって、国家賠償請求訴訟は、不可争力の影響を受けない
 よって、処分に対する取消訴訟の出訴期間が経過して、処分に不可争力が生じた場合であっても、国家賠償を請求する訴訟を提起することができる。

4 妥当でない
 行政事件訴訟法16条1項は、「取消訴訟には、関連請求に係る訴えを併合することができる。」と規定している。そして、同法13条は、関連請求 (=取消訴訟と密接な関連があるため、当該取消訴訟が係属している裁判所とは異なる裁判所において、又は同一の裁判所であっても別個に訴訟手続を進めることが不適当であると認められる請求) についての具体例を列挙しており、その中に取消訴訟の対象となっている処分の違法を理由とする国家賠償請求を明示している (同条1号)。
 よって、処分に対する取消訴訟に当該処分の違法を理由とする国家賠償を請求する訴訟を併合して提起することができる。

5 妥当でない
 国家賠償法1条1項及び2条1項の「国又は公共団体」とは、国又は地方公共団体に限られるものではなく、特殊法人 (たとえば、公社、公団等)、建築基準法の規定する指定確認検査機関 (建築物の建築等に関する確認等をする場合)、弁護士会 (懲戒権を行使する場合、東京地判昭和55年6月18日) 等もこれに含まれる。

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2010.12.22 Wed l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題18は、「取消判決の拘束力」に関する組合せ問題でした。

取消判決の拘束力に関し、若干掘り下げて問題が作成してありますので、基本知識と法的思考力を働かせて、正解を導くことが大切です。

肢アは、形成力に関する知識があれば解けますね。

肢イは、反復禁止効に関する問題であり、拘束力が規定された理由をきちんと理解していれば解けますね。

肢ウは、難問ですが、判決の拘束力を規定した趣旨(おおざっぱにいえば、私人の権利保護)を考えれば、行政庁の所属を制限する理由が存在しないのではないかという法的思考によって、解くことができますね。

肢エは、判例に関する考え方(判例とは、裁判の理由の中で示された法律的判断のうち、法律上の論点に対してなされたものをいう。)を類推するという法的思考によって、解くことができますね。

とはいっても、判決の効力については、深く学習しないのが通常でしょうから、難しかったかもしれません。

肢アでつまづくと、おそらく正解には到達できないでしょう。
ですので、今後は、肢アの知識を確実なものとしておくようにしてください。




では、平成22年度 行政書士試験 問題18の解答解説を載せておきます。





問題18 不利益処分の取消訴訟において原告勝訴判決 (取消判決) が確定した場合に、当該判決について生ずる効力に関する次のア~エの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア 処分をした行政庁は、判決確定の後、判決の拘束力により、訴訟で争われた不利益処分を職権で取り消さなければならない。

イ 判決後に新たな処分理由が発生した場合、処分をした行政庁は、これを根拠として、判決の拘束力と関わりなく、原告に対しより厳しい内容の不利益処分を行うことができる。

ウ 不利益処分をした処分庁が地方公共団体に所属する場合、不利益処分にかかわった関係行政庁のうち国に所属する行政庁には、判決の拘束力は及ばない。

エ 判決の拘束力が生じるのは主文に限られず、主文に含まれる判断を導くために不可欠な理由中の判断についても及ぶ。

1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ・ウ
4 イ・エ
5 ウ・エ












問題18 正解 4
ア 誤り
 取消判決が確定すると、形成力によって、不利益処分は、原告との関係において、当初から存在しなかったことになるから、さらに、処分をした行政庁が当該不利益処分を職権で取り消すことを要しない。

イ 正しい
 裁判所が違法な行政処分を取り消した場合、その処分は、形成力によって、その効力を失う。しかし、当該行政庁は、一方的に処分を行いうることから、取消判決の趣旨を無視して、再度同一の違法な行政処分を行う危険がある。そこで、取消判決には、その効力として、拘束力 (=判決の判断内容を尊重し、判決の趣旨に従って行動するように行政庁に義務付ける効力) が必要である。
 このように、取消判決の拘束力は、行政庁に対し、取消判決の判断内容を尊重し、判決の趣旨に従って行動するように義務付ける効力であるから、その内容には、取り消された行政処分と同一事情のもとで、同一理由に基づいて、同一内容の処分を行うことを禁止する効力 (反復禁止効) も含まれると解されている (多数説)。これを逆にいうと、同一事情でも、同一理由でなければ、同一内容の処分を行うことを意味する。したがって、判決後に生じた新たな処分理由に基づいて、処分をした行政庁が、これを根拠として原告に対しより厳しい内容の不利益処分をすることは許されると解される。

ウ 誤り
 行政事件訴訟法33条1項は、「処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。」と規定しているが、ここにいう「関係行政庁」は、処分庁の所属する行政主体 (たとえば、国、地方公共団体) に所属するものに限らない。たとえば、都道府県知事が行う法定受託事務に係る処分について当該処分に係る事務を規定する法律又はこれに基づく政令を所管する大臣に審査請求がなされた場合 (地方自治法255条の2第1号) 、当該審査庁である大臣は、関係行政庁として、当該処分の取消判決の拘束力を受ける。

エ 正しい
 取消判決の拘束力は、主文に含まれる判断を導くために不可欠な理由中の判断について生ずるのであり、傍論 (=それ以外の判断部分) や要件事実を認定する過程における間接事実の認定には及ばないと解されている (多数説)。判例 (最判平成4年4月28日) も、行政事件訴訟法33条1項の規定する拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたると判示している。

以上により、正しいものは、イ・エであり、正解は4になる。


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2010.12.21 Tue l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題17は、「取消訴訟の裁判管轄」に関する個数問題でした。

現在のような財団法人行政書士試験研究センターが出題することとなった平成12年度以降、管轄について問われたことはありませんし、大学や資格学校できちんと学ぶことも稀でしょうから、捨て問なんでしょうね。

試験委員としては、当初正誤問題としていたのではないかと考えます。そうであれば、管轄に関する大原則を問うことになりますから、応用問題として、良問となったのでしょうが……。

個数問題としてしまったために、単に知識を問う問題に堕し、近年稀なつまらない問題となってしまいましたね。
もし試験委員が、当初から個数問題として作成したのであれば、とても作問能力の低い方だとお見受けしますね。
研究センターの事務員さんが個数問題にしてしまったことを願うばかりです!!!

いくつかの解答解説を見ましたが、どれもほとんど変わりませんでしたね。
肢1の解説をきちんと書いてあるものは、評価にあたいしますね。
なお、肢5の例で、東京高裁管轄の県の人を原告にしたものを見つけましたが、平成16年改正のメリットを受けることができませんので、事例としては、あまり適切ではありませんね。

では、平成22年度 行政書士試験 問題17の解答解説を載せておきます。


問題17 取消訴訟の裁判管轄に関する次のア~オの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア 取消訴訟は、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所にも提起することができる。

イ 取消訴訟は、処分をした行政庁の所在地を管轄する地方裁判所にも提起することができる。

ウ 土地の収用など特定の不動産または場所に係る処分の取消訴訟は、その不動産または場所の所在地を管轄する地方裁判所にも提起することができる。

エ 取消訴訟は、処分に関し事案の処理に当たった下級行政機関の所在地を管轄する地方裁判所にも提起することができる。

オ 国を被告とする取消訴訟は、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所にも提起することができる。

1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
5 五つ













問題17 正解 4
ア 誤り
 行政事件訴訟法12条1項前段は、取消訴訟は、「被告」の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属すると規定している。これは、訴訟をするときは、原告が被告の生活の根拠地に出向くのが公平であるとの観念に基づいている。この観念は、いずれの種類の訴訟であろうと妥当するものであり、それゆえ、取消訴訟に関しては、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所にも提起することができるとする規定がおかれることは、理論的にありえない。

※ 行政事件に関する裁判権は、日本国内の各裁判所が分担して行使する。ある事件について、いずれの裁判所が裁判権を行使するかに関する定めを管轄と呼び、ある裁判所が事件について裁判権を行使できる権能を裁判権と呼んでいる。
 管轄は、種々の観点から分類されるが、法律の規定により定められる管轄を法定管轄と呼んでおり、法定管轄は、さらに職分管轄 (=裁判権の種々の作用をいずれの裁判所の役割とするかという観点からの分類であり、たとえば、判決手続は受訴裁判所の職分であり、民事執行手続は執行裁判所の職分とされる。)、事物管轄 (第一審裁判所を簡易裁判所と地方裁判所のいずれにするかという観点からの分類であり、たとえば、訴額が140万円以下の請求は簡易裁判所が管轄権を有し、140万円を超える請求及び不動産に関する訴訟は地方裁判所が管轄権を有している。) 及び土地管轄 (=所在地を異にする同種の裁判所の間でどのように事件を分担するのかという観点から分類であり、たとえば、事物管轄が地方裁判の事件であっても、福岡県内における事件は福岡地方裁判所が、佐賀県内の事件は佐賀地方裁判所が管轄権を有している。) に分けられる。
 このうち、土地管轄は、事件の裁判籍 (=事件の当事者又は訴訟物と密接に関連する特定の地点をいい、たとえば、被告の住所等がこれに当たる。) の所在地を管轄区域内に有する裁判所に生ずる。この裁判籍のうち、訴訟をするときは、原告が被告の生活の根拠地に出向くのが公平であるとの観念に基づき、その地には、事件の種類を問わず常に管轄権が発生することとされている。それゆえ、被告の生活の根拠地を被告の普通裁判籍と呼んでいる (民事訴訟法4条1項)。
 民事訴訟法4条2項は、「人の普通裁判籍は、住所により、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。」と規定し、同条4項は、「法人その他の社団又は財団の普通裁判籍は、その主たる事務所又は営業所により、事務所又は営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。」と規定し、同条6項は、「国の普通裁判籍は、訴訟について国を代表する官庁の所在地により定まる。」と規定し、この規定をうけて、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律1条は、「国を当事者又は参加人とする訴訟については、法務大臣が、国を代表する。」と規定している。

イ 正しい
 行政事件訴訟法12条1項後段は、取消訴訟は、処分若しくは裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所の管轄に属すると規定している。

ウ 正しい
 行政事件訴訟法12条2項は、「土地の収用、鉱業権の設定その他不動産又は特定の場所に係る処分又は裁決についての取消訴訟は、その不動産又は場所の所在地の裁判所にも、提起することができる。」と規定している。

エ 正しい
 行政事件訴訟法12条3項は、「取消訴訟は、当該処分又は裁決に関し事案の処理に当たつた下級行政機関の所在地の裁判所にも、提起することができる。」と規定している。

オ 正しい
 行政事件訴訟法12条4項は、「国又は独立行政法人通則法第2条第1項に規定する独立行政法人若しくは別表に掲げる法人を被告とする取消訴訟は、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所 (次項において「特定管轄裁判所」という。) にも、提起することができる。」と規定している。

※ 平成16年改正前の行政事件訴訟法においては、国を被告とする取消訴訟は、同法12条1項、同法7条、民事訴訟法4条6項及び国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律1条により、原則として、東京地方裁判所に提起しなければならなかった。しかし、これでは、地方遠隔地に在住する国民は、訴訟の提起及び遂行に不便を強いられ、極端な場合、それ自体を断念することが考えられた。そこで、本条4項が新設された。なお、特定管轄裁判所とは、全国のそれぞれの管轄区域をもつ高等裁判所の所在地を管轄する八つの裁判所、すなわち、札幌地方裁判所、仙台地方裁判所、東京地方裁判所、名古屋地方裁判所、大阪地方裁判所、広島地方裁判所、高松地方裁判所及び福岡地方裁判所であり、これにより、原告が佐賀県に在住する場合、福岡地方裁判所に訴えを提起することができることになった。

以上により、正しいものは、イ、ウ、エ及びオの四つであり、正解は4である。

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2010.12.17 Fri l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題16は、「抗告訴訟」に関する組合せ問題でした。

行政書士試験においては、平成19年度試験から、訴訟類型に関する問題が出題されるようになりました。
行政事件訴訟法において、訴訟類型はイロハのイですから、当然と言えば当然の出題でした(司法試験では、毎年、当たり前のようにこれを論ずる問題が出題されています。)
ただ、なかなかこの知識を身につけることが難しいようで、受験生の皆さんは苦労されていますね。

ただし、本問は、過去問をきちんと解いておけば、正解にたどりつけそうです。たとえば、肢イについては、平成19年度 行政書士試験 問題19の肢ア、肢ウについては、平成18年度 行政書士試験 問題42を解いておけば、抗告訴訟にあたらないことが分かったはずです。
残りの選択肢2か5になりますが、肢エは、もんじゅ事件判決という非常に著名な判例の中で問題となっていますから、これも基本知識の部類に入るかと思いますね。

そういうわけで、何とか得点して欲しい問題でした。

なお、本問は、解説者の実力が問われる問題でした。
いくつかの解説を見ましたが、きちんと書けているものは、ほとんどなかったですね。
肢アにおいて、「行政庁」の定義をしていないもの、肢イにおいて土地収用法133条3項をあげていないもの、肢ウにおいて行政事件訴訟法45条をあげていないもの、肢エにおいてもんじゅ事件判決をあげていないもの等は、問題ありですね。

では、平成22年度 行政書士試験 問題16の解答解説を載せておきます。


問題16 次のア~オの訴えのうち、抗告訴訟にあたるものの組合せはどれか。

ア 建築基準法に基づき私法人たる指定確認検査機関が行った建築確認拒否処分の取消しを求める申請者の訴え。

イ 土地収用法に基づく都道府県収用委員会による収用裁決において示された補償額の増額を求める土地所有者の訴え。

ウ 土地収用法に基づく都道府県収用委員会による収用裁決の無効を前提とした所有権の確認を求める土地所有者の訴え。

エ 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づき許可を得ている原子炉施設の運転の差止めを運転者に対して求める周辺住民の訴え。

オ 住民基本台帳法に基づき、行政機関が住民票における氏名の記載を削除することの差止めを求める当該住民の訴え。

1 ア・イ
2 ア・オ
3 イ・ウ
4 ウ・エ
5 エ・オ















問題16 正解 2
ア 抗告訴訟にあたる
 行政事件訴訟法3条1項は、「この法律において『抗告訴訟』とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。」と規定している。ここに「行政庁」とは、法令によって公権力を行う権限を付与されたものを意味し、国・地方公共団体の行政機関に限らない。
 建築基準法6条1項は、建築主は、一定の建築物を建築しようとする場合等においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならないと規定し、同法6条の2第1項は、「前条第1項各号に掲げる建築物の計画 (前条第3項各号のいずれかに該当するものを除く。) が建築基準関係規定に適合するものであることについて、第77条の18から第77条の21までの規定の定めるところにより国土交通大臣又は都道府県知事が指定した者の確認を受け、国土交通省令で定めるところにより確認済証の交付を受けたときは、当該確認は前条第1項の規定による確認と、当該確認済証は同項の確認済証とみなす。」と規定している。このように、指定確認検査機関は、建築基準法によって建築確認という公権力を行う権限を付与されたものであるから、行政事件訴訟法3条1項の「行政庁」に当たる。
 したがって、建築基準法に基づき私法人たる指定確認検査機関が行った建築確認拒否処分の取消しを求める申請
者の訴えは、抗告訴訟である。

※ なお、指定確認検査機関が行った建築確認の取消しを求める訴えが、当該建築物に関する完了検査が終了したことにより、訴えの利益が消滅したことから、請求人が行政事件訴訟法21条1項の規定に基づいて、当該訴えを、当該建築確認の違法を原因として抗告人 (=指定確認検査機関の確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体) に対する損害賠償を求める訴えに変更することの許可を申し立てた事案において、判例 (最決平成17年6月24日) は、抗告人は、指定確認検査機関の当該確認につき行政事件訴訟法21条1項所定の「当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体」に当たると判示している。この判例は、指定確認検査機関が行った建築確認が公権力の行使であることを当然の前提として、指定確認検査機関による確認に関する事務は、建築主事による確認に関する事務の場合と同様に、地方公共団体の事務であり、その事務の帰属する行政主体は、当該確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体であるとし、抗告人に対する請求への訴えの変更を認めたものである。

イ 抗告訴訟にあたらない
 行政事件訴訟法4条は、「この法律において『当事者訴訟』とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。」と規定している。このうち、本条前段の「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの」は、処分又は裁決という公権力の行使を争うものであり、本来は抗告訴訟として提起されるべきものであるが、立法政策により、法令の規定により形式的に当事者訴訟とされていることから「形式的当事者訴訟」と呼ばれている。また、本条後段の「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」は、行政庁の処分その他公権力の行使を争うものでなく (その意味で抗告訴訟の性質を有しない)、現在の公法上の法律関係に関する訴訟であることから「実質的当事者訴訟」と呼ばれている。そして、この訴訟は、公法上の法律関係を対象とするものであることから、私法上の法律関係に関する民事訴訟と区別して、「公法上の当事者訴訟」と呼ばれている。
 土地収用法48条1項2号は、権利取得裁決においては、土地又は土地に関する所有権以外の権利に対する損失の補償について裁決しなければならないと規定し、同法133条3項は、「前項の規定による訴え (=収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する訴え) は、これを提起した者が起業者であるときは土地所有者又は関係人を、土地所有者又は関係人であるときは起業者を、それぞれ被告としなければならない。」と規定している。このように、土地収用法は、収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する訴えは、当事者訴訟によるべきこととしている。
 したがって、土地収用法に基づく都道府県収用委員会による収用裁決において示された補償額の増額を求める土地所有者の訴えは、当事者訴訟である。

ウ 抗告訴訟にあたらない
 行政事件訴訟法45条は、私法上の法律関係に関する訴訟のうち、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無が前提問題として争われているものを「処分の効力等を争点とする訴訟」(いわゆる「争点訴訟」) と呼び、当該訴訟の法的性質を民事訴訟と理解したうえで行政事件訴訟法の規定を準用している。
 したがって、土地収用法に基づく都道府県収用委員会による収用裁決の無効を前提とした所有権の確認を求める土地所有者の訴えは、争点訴訟である。

エ 抗告訴訟にあたらない
 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づき許可を得ている原子炉施設の運転の差止めを運転者に対して求める周辺住民の訴えは、人格権等に基づき原子炉施設の運転の差止めを求めるものであり、行政庁の処分その他公権力の行使を争うものでなく (その意味で抗告訴訟の性質を有しない)、私法上の法律関係に関する民事訴訟の性質を有している。
 なお、判例 (最判平成4年9月22日―もんじゅ訴訟) は、本肢のような訴訟が民事訴訟にあたることを前提として、「行政事件訴訟法三六条によれば、処分の無効確認の訴えは、当該処分に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分の無効確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り、提起することができると定められている。処分の無効確認訴訟を提起し得るための要件の一つである、右の当該処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない場合とは、当該処分に基づいて生ずる法律関係に関し、処分の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟によっては、その処分のため被っている不利益を排除することができない場合はもとより、当該処分に起因する紛争を解決するための争訟形態として、当該処分の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟との比較において、当該処分の無効確認を求める訴えのほうがより直截的で適切な争訟形態であるとみるべき場合をも意味するものと解するのが相当である。本件についてこれをみるのに、被上告人らは本件原子炉施設の設置者である動力炉・核燃料開発事業団に対し、人格権等に基づき本件原子炉の建設ないし運転の差止めを求める民事訴訟を提起しているが、右民事訴訟は、行政事件訴訟法36条にいう当該処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えに該当するものとみることはできず、また、本件無効確認訴訟と比較して、本件設置許可処分に起因する本件紛争を解決するための争訟形態としてより直截的で適切なものであるともいえないから、被上告人らにおいて右民事訴訟の提起が可能であって現にこれを提起していることは、本件無効確認訴訟が同条所定の前記要件を欠くことの根拠とはなり得ない。」と判示している。

オ 抗告訴訟にあたる
 判例 (最判平成11年1月21日) は、「市町村長が住民基本台帳法7条に基づき住民票に同条各号に掲げる事項を記載する行為は、元来、公の権威をもって住民の居住関係に関するこれらの事項を証明し、それに公の証拠力を与えるいわゆる公証行為であり、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定する法的効果を有するものではない。もっとも、同法15条1項は、選挙人名簿の登録は住民基本台帳に記載されている者で選挙権を有するものについて行うと規定し、公職選挙法21条1項も、右登録は住民票が作成された日から引き続き3箇月以上当該市町村の住民基本台帳に記録されている者について行うと規定しており、これらの規定によれば、住民票に特定の住民の氏名等を記載する行為は、その者が当該市町村の選挙人名簿に記載されているか否かを決定付けるものであって、その者は選挙人名簿に登録されない限り原則として投票をすることができない (同法42条1項) のであるから、これに法的効果が与えられているということができる。しかし、住民票に特定の住民と世帯主との続柄がどのように記載されるかは、その者が選挙人名簿に登録されるか否かには何らの影響も及ぼさないことが明らかであり、住民票に右続柄を記載する行為が何らかの法的効果を有すると解すべき根拠はない。したがって、住民票に世帯主との続柄を記載する行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないものというべきである。」と判示している。このように、判例は、住民票に特定の住民の氏名等を記載する行為 (又は記載しない行為、さらには削除する行為) について、処分性を認めていると解される。
 したがって、住民基本台帳法に基づき、行政機関が住民票における氏名の記載を削除することの差止めを求める当該住民の訴えは、抗告訴訟にあたる。

以上により、抗告訴訟にあたるものは、ア・オであるから、正解は2になる。

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2010.12.16 Thu l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題15は、「行政不服審査法における手続の終了」に関する正誤問題でした。

条文問題ですので、得点すべきでした

では、平成22年度 行政書士試験 問題15の解答解説を載せておきます。


問題15 行政不服審査法における手続の終了に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 行政不服審査制度には権利保護機能の他に行政統制機能があるため、審査庁の同意がなければ、審査請求人は審査請求を取り下げることができない。

2 事実行為に関する審査請求を認容する場合、審査庁は違法又は不当な当該事実行為を自ら撤廃することができる。

3 上級行政庁としての審査庁は、処分庁の処分を変更する旨の裁決をすることができず、処分庁の処分を取り消した上で、処分庁に当該処分の変更を命じなければならない。

4 不作為に関する異議申立てが適法になされた場合、不作為庁は、一定の期間内に、申請に対する何らかの行為をするかまたは書面で不作為の理由を示さなければならない。

5 行政不服審査法には、それに基づく裁決について、行政事件訴訟法が定める取消判決の拘束力に相当する規定は設けられていない。













問題15 正解 4
1 誤り
 行政不服審査法39条1項は、「審査請求人は、裁決があるまでは、いつでも審査請求を取り下げることができる。」と規定している。このように、審査請求人は、審査庁の同意なしに、審査請求を取り下げることができる。
 なお、同法1条1項は、「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによつて、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」と規定しているから、本肢の前半部分は正しい。

2 誤り
 行政不服審査法40条4項は、「事実行為には、審査庁は、処分庁に対し当該事実行為の全部又は一部を撤廃すべきことを命ずるとともに、裁決で、その旨を宣言する。」と規定している。このように、審査庁が、事実行為に関する審査請求を認容する場合、審査庁は、「違法又は不当な当該事実行為を自ら撤廃することができる」のではなく、「処分庁に対し当該事実行為の全部又は一部を撤廃すべきことを命ずる」ことができるにすぎない。

3 誤り
 行政不服審査法40条5項本文は、「前2項の場合において、審査庁が処分庁の上級行政庁であるときは、審査庁は、裁決で当該処分を変更し、又は処分庁に対し当該事実行為を変更すべきことを命ずるとともに裁決でその旨を宣言することもできる。」と規定している。このように、審査庁が処分庁の上級行政庁であるときは、審査庁は、裁決で当該処分を変更することができる。

4 正しい
 行政不服審査法50条1項は、「不作為についての異議申立てが不適法であるときは、不作為庁は、決定で、当該異議申立てを却下する。」と規定し、同条2項は、「前項の場合を除くほか、不作為庁は、不作為についての異議申立てがあつた日の翌日から起算して20日以内に、申請に対するなんらかの行為をするか、又は書面で不作為の理由を示さなければならない。」と規定している。このように、不作為についての異議申立てが適法になされた場合、不作為庁は、一定の期間内に、申請に対する何らかの行為をするか、又は書面で不作為の理由を示さなければならない。

5 誤り
 行政不服審査法43条1項は、「裁決は、関係行政庁を拘束する。」と規定している。このように、行政不服審査法は、それに基づく裁決について、行政事件訴訟法が定める取消判決の拘束力に相当する規定を設けている。

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2010.12.11 Sat l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
今週は、週明けから忙しすぎで、解答解説の時間を取れないので、非常に申し訳なく感じている。

水曜日に、遺産分割協議の立会いをやったのであるが、協議事項などを整理しておくため、月曜日及び火曜日を費やした。
協議後直ちに文面の作成に着手し、やれやれと思っていたところ、木曜日に依頼者の方がいらっしゃって、その執行もお願いしますとのこと。
当方としては、ありがたい限りだが、あと1週間ほど、金融機関で払戻し・解約等の手続を処理しなければならない。

今日は、第2部で解答解説を書く予定だがどうなりますやら。

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2010.12.10 Fri l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題14は、「行政不服審査法の不服申立て」に関する正誤問題でした。

正解肢は、条文ですし、得点すべきです。

では、平成22年度 行政書士試験 問題14の解答解説を載せておきます。


問題14 行政不服審査法に基づく不服申立てに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 不服申立ては、他の法律や条例において書面でしなければならない旨の定めがある場合を除き、口頭ですることができる。

2 不服申立ては、代理人によってもすることができるが、その場合は、不服申立人が民法上の制限行為能力者である場合に限られる。

3 代理人は、不服申立人のために、当該不服申立てに関する一切の行為をすることができるが、不服申立ての取下げについては特別の委任を要する。

4 処分について不服申立適格を有するのは、処分の相手方に限られ、それ以外の第三者は、法律に特別の定めがない限り、不服申立適格を有しない。

5 行政不服審査法に基づく不服申立ては、行政庁の処分の他、同法が列挙する一定の行政指導についても行うことができる。











問題14 正解 3
1 誤り
 行政不服審査法9条1項は、「この法律に基づく不服申立ては、他の法律 (条例に基づく処分については、条例を含む。) に口頭ですることができる旨の定めがある場合を除き、書面を提出してしなければならない。」と規定している。このように、行政不服審査法は、不服申立てについて、原則として、書面を提出してしなければならないとしている。

2 誤り
 行政不服審査法12条1項は、「不服申立ては、代理人によつてすることができる。」と規定している。このように、行政不服審査法は、代理人を選任することができる不服申立人を制限していない。

3 正しい
 行政不服審査法12条2項は、「代理人は、各自、不服申立人のために、当該不服申立てに関する一切の行為をすることができる。ただし、不服申立ての取下げは、特別の委任を受けた場合に限り、することができる。」と規定している。

4 誤り
 行政不服審査法4条1項柱書は、「行政庁の処分 (この法律に基づく処分を除く。) に不服がある者は、次条及び第6条の定めるところにより、審査請求又は異議申立てをすることができる。ただし、次の各号に掲げる処分及び他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分については、この限りでない。」と規定している。この「行政庁の処分に不服がある者」の意味について、判例は、「不当景品類及び不当表示防止法 (以下「景表法」という。) により公正取引委員会がした公正競争規約の認定に対する行政上の不服申立ては、これにつき行政不服審査法 (以下「行審法」という。) の適用を排除され、専ら景表法10条6項 (現在の同法12条6項に相当する。) の定める不服申立手続によるべきこととされているが、行政上の不服申立ての一種にほかならないから、景表法の同条項にいう「第1項……の規定による公正取引委員会の処分について不服があるもの」とは、一般の行政処分についての不服申立ての場合と同様に、当該処分について不服申立てをする法律上の利益がある者、すなわち、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうと解すべきである。なぜなら、現行法制の下における行政上の不服申立制度は、原則として、国民の権利・利益の救済を図ることを主眼としたものであり、行政の適正な運営を確保することは行政上の不服申立てに基づく国民の権利・利益の救済を通じて達成される間接的な効果にすぎないものと解すべく、したがって、行政庁の処分に対し不服申立てをすることができる者は、法律に特別の定めがない限り、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあり、その取消し等によってこれを回復すべき法律上の利益を持つ者に限られるべきであるからである。」と判示している。このように、処分について不服申立適格を有する者は、当該処分について不服申立てをする法律上の利益がある者であり、当該処分の相手方に限られない。

5 誤り
 行政不服審査法1条1項は、「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによつて、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」と規定している。そして、本法2条においては、不服申立ての対象である処分及び不作為に関する定義規定が、さらに、本法3条においては、不服申立ての種類に関する規定が置かれている。以上の条文をとおしてみると、行政不服審査法は、不服申立ての対象を行政庁の処分又は不作為に限っているといえる。
 したがって、行政指導については、行政不服審査法に基づく不服申立てをすることはできない。


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2010.12.04 Sat l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題13は、「行政指導」に関する正誤問題でした。

行政手続法の条文問題であり、必ず得点すべきでした。

では、平成22年度 行政書士試験 問題13の解答解説を載せておきます。

問題13 行政指導に関する次の記述のうち、法令に照らし、正しいものはどれか。

1 地方公共団体の機関として行政指導に携わる者は、法令に根拠を有する処分に関する行政指導の場合と条例に根拠を有する処分に関する行政指導の場合のいずれについても、行政手続法の行政指導に関する規定の適用を受けない。

2 行政指導に携わる者は、とくに必要がある場合には、当該行政機関の任務または所掌事務の範囲に属さない事項についても行政指導を行うことができる。

3 行政指導に携わる者は、行政主体への負担金の納付を求める行政指導に相手方が同意したにもかかわらず、納期限までに当該納付がなされないときは、その実効性を確保するために、国税または地方税の滞納処分と同様の徴収手続を執ることができる。

4 申請に関する行政指導に携わる者は、申請の内容が明白に法令の要件を満たしていない場合であって、申請内容の変更を求める行政指導について申請者が従う意思のない旨を表明したときは、申請の取り下げがあったものとみなすことができる。

5 行政指導に携わる者は、複数の者に対して同一の目的で行政指導をしようとする場合には、指導の指針を定めるにあたり公聴会を開催しなければならない。















問題13 正解 1
1 正しい
 行政手続法3条3項は、「第1項各号及び前項各号に掲げるもののほか、地方公共団体の機関がする処分 (その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。) 及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出 (前条第7号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。) 並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第6章までの規定は、適用しない。」と規定している。このように、地方公共団体の機関がする行政指導については、その根拠となる規定が法律に置かれているか、それとも、条例又は規則に置かれているかを問わず、行政手続法の規定は適用されない。
 したがって、「地方公共団体の機関として行政指導に携わる者は、法令に根拠を有する処分に関する行政指導の場合と条例に根拠を有する処分に関する行政指導の場合のいずれについても、行政手続法の行政指導に関する規定の適用を受けない。」との記述は正しい。

2 誤り
 行政手続法32条1項は、「行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。」と規定している。ここに「いやしくも」という表現は、より強い否定を示すものであるから、例外を許容しない趣旨であり、行政指導が特に必要である場合でも、当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱して行政指導を行うことはできない。

3 誤り
 行政手続法32条2項は、「行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。」と規定している。
 したがって、行政指導に携わる者が行政主体への負担金の納付を求める行政指導をしたにもかかわらず、その相手方が納期限までに当該納付をしないという形で行政指導に従わなかったとしても、国税又は地方税の滞納処分と同様の徴収手続を執るという不利益な取扱いをしてはならない。

4 誤り
 行政手続法33条は、「申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。」と規定している。このように、申請に関する行政指導に携わる者は、申請内容の変更を求める行政指導について申請者が従う意思のない旨を表明したときは、当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならないのであって、申請の取り下げがあったものとみなすことができるわけではない。

5 誤り
 行政手続法36条は、「同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない。」と規定し、同法39条1項は、「命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案 (命令等で定めようとする内容を示すものをいう。以下同じ。) 及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見 (情報を含む。以下同じ。) の提出先及び意見の提出のための期間 (以下「意見提出期間」という。) を定めて広く一般の意見を求めなければならない。」と規定している。なお、この「命令等」には、行政指導指針が含まれる (同法2条8号ニ)。このように、行政指導指針を定めるにあたっては、意見公募手続を執ることが求められているが、公聴会を開催することは要件となっていない。


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2010.12.03 Fri l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題12は、「標準処理期間」に関する正誤問題でした。

行政手続法は、標準処理期間について、その6条の1箇条のみしか規定を置いていません。
しかし、これは、実務上非常に重要であるため、行政書士試験においては、頻出条文です (平成12年第13問、平成13年第13問肢1、平成15年第13問肢イ、平成16年第13問肢1)。

したがって、受験生の方は、十分に学習をなさっていたはずなのですが、聞いたところによると、正答率は50%を切っているとのこと。
ビックリですね!!

肢4のトラップに捕まったのでしょうか?
(問題11といい、平成22年度 行政書士試験問題は、トラップが多いですね。)

肢2は、届出の性質を理解した上での応用問題といえますが、その性質をきちんと理解していれば、非常に簡単に解けます。
そういう意味で、基本知識の正確な理解を問う問題として、良問であると考えます。

では、平成22年度 行政書士試験 問題12の解答解説を載せておきます。
※ なお、肢1は、努力義務か否かは、問題となりません。



問題12 行政手続法による標準処理期間についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1 地方公共団体がなす許認可等についても、法律に根拠を有するものの標準処理期間は、主務大臣が定めることとされている。

2 申請に対する処分と異なり、届出の処理については、標準処理期間が定められることはない。

3 申請の処理が標準処理期間を超える場合には、行政庁は、申請者に対して、その理由と処分の時期を通知しなければならないとされている。

4 標準処理期間とは、申請が行政庁によって受理されてから当該申請に対する処分がなされるまでに通常要すべき期間をいう。

5 標準処理期間を定めることは、法的な義務であるから、これを定めることなく申請を拒否する処分をすると、重大な手続上の違法として、それを理由に処分が取り消されることがある。













問題12 正解 2
1 妥当でない
 行政手続法6条は、「行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間 (法令により当該行政庁と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間) を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。」と規定している。このように、標準処理期間を定めるよう努めなければならないのは、行政庁であり、これには、地方公共団体の行政庁も含まれる (同法3条3項参照) から、地方公共団体がなす許認可等については、当該地方公共団体の長が定めるように努めなければならない。

2 妥当である
 行政手続法37条は、「届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする。」と規定している。このように、形式上の要件に適合した届出が提出先機関の事務所に到達したときに、法律上課された義務は履行されたことになり、行政庁その他の機関は、当該届出がなかったものとして取り扱うことはできなくなるから、標準処理期間という概念自体を差し挟む余地はない。

3 妥当でない
 行政手続法は、標準処理期間について、前記第6条の定めを置くのみである。したがって、「申請の処理が標準処理期間を超える場合には、行政庁は、申請者に対して、その理由と処分の時期を通知しなければならない」との規定は存在しない。

4 妥当でない
 標準処理期間とは、「申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間 (法令により当該行政庁と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間)」をいう (行政手続法6条)。このように、標準処理期間は、申請が「行政庁によって受理され」たときからではなく、申請が「その事務所に到達し」たときから期間計算がなされる。

5 妥当でない
 行政手続法6条は、「行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間 (法令により当該行政庁と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間) を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。」と規定している。このように、標準処理期間を定めることは、「法的な義務」ではなく、「努力義務」に過ぎないから、これを定めることなく申請を拒否する処分をしたとしても、重大な手続上の違法として、それを理由に処分が取り消されることはない。

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2010.12.02 Thu l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題11は、「行政手続法に基づく意見公募手続」に関する正誤問題でした。

問題11以降は、基本的に条文・判例問題ですので、得点を稼ぐべきです。

本問は、条文そのものですので、正解すべきです。
※ 肢2に惑わされてはいけませんね!!

では、平成22年度 行政書士試験 問題11の解答解説を載せておきます。

問題11 行政手続法に基づく意見公募手続に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1 意見公募手続の対象となる命令等に含まれるのは、政令や省令などのほか、審査基準や処分基準といった行政処分の基準に限られ、行政指導の基準は含まれない。

2 地方公共団体の行政庁が法律を根拠とする許認可等の審査基準を定める場合には、意見公募手続が義務付けられている。

3 意見公募手続において意見を提出できる者については、特段の制限はなく、命令等との利害関係などとは関わりなく、何人でも意見を提出できる。

4 意見提出の期間は同法で法定されており、これを下回る期間を定めることは認められていない。

5 意見公募手続において、提出意見があった場合には、提出意見やそれを考慮した結果などを公示しなければならないが、提出意見がなかった場合には、その旨を公示する必要はない。








問題11 正解 2
1 妥当でない
 行政手続法2条8号は、命令等とは、内閣又は行政機関が定める、①法律に基づく命令 (処分の要件を定める告示を含む。) 又は規則、②審査基準 (申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。)、③処分基準 (不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。)、④行政指導指針 (同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときにこれらの行政指導に共通してその内容となるべき事項をいう。) をいうと規定している。
 したがって、「行政指導の基準は含まれない」との記述は妥当でない。

2 妥当でない
 行政手続法3条3項は、「第1項各号及び前項各号に掲げるもののほか、地方公共団体の機関がする処分 (その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。) 及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出 (前条第7号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。) 並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第6章までの規定は、適用しない。」と規定している。このように、地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、行政手続法の規定は適用されない。

3 妥当である
 行政手続39条1項は、「命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案 (命令等で定めようとする内容を示すものをいう。以下同じ。) 及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見 (情報を含む。以下同じ。) の提出先及び意見の提出のための期間 (以下「意見提出期間」という。) を定めて広く一般の意見を求めなければならない。」と規定している。このように、意見公募手続においては、「広く一般の意見を求めなければならない」とされており、その対象を一定の者に限定していない。

4 妥当でない
 行政手続法40条1項は、「命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合において、30日以上の意見提出期間を定めることができないやむを得ない理由があるときは、前条第3項の規定にかかわらず、30日を下回る意見提出期間を定めることができる。この場合においては、当該命令等の案の公示の際その理由を明らかにしなければならない。」と規定している。このように、例外的として、法定された期間を下回る期間を定めることが認められる場合がある。

5 妥当でない
 行政手続法43条1項は、命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布 (公布をしないものにあっては、公にする行為。第5項において同じ。) と同時期に、①命令等の題名、②命令等の案の公示の日、③提出意見 (提出意見がなかった場合にあっては、その旨)、④提出意見を考慮した結果 (意見公募手続を実施した命令等の案と定めた命令等との差異を含む。) 及びその理由を公示しなければならないと規定している。このように、命令等制定機関は、意見提出がなかった場合であっても、その旨を公示しなければならない。

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2010.12.01 Wed l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top