平成22年度 行政書士試験 問題10は、「行政上の法関係に対する民事法の適用」に関する正誤問題でした。
典型的なサービス問題ですね。
正解肢は、平成15年度 行政書士試験において出題されています。
本問ができなかった方は、猛反省すべきですね。
なお、当方の執筆した「行政書士試験用六法」には、いずれの判例も入っていました。
そういう意味でも、基本判例を羅列した問題に過ぎなかったですね。
では、平成22年度 行政書士試験 問題10の解答解説を載せておきます。
問題10 行政上の法関係に対する民事法の適用についての次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。
1 自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分は、大量の事務処理の便宜上、登記簿の記載に沿って買収計画を立てることが是認され、またこの場合、民法の対抗要件の規定が適用されるので、仮に当該買収処分の対象となる土地の登記簿上の農地所有者が真実の所有者でないとしても、真実の所有者は当該処分を受忍しなければならない。
2 公営住宅の使用関係については、公営住宅法およびこれに基づく条例が特別法として民法および借家法 (事件当時) に優先して適用されるが、公営住宅法および条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法および借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用がある。
3 普通地方公共団体が当該地方公共団体の関連団体と契約を結ぶ場合、当該地方公共団体を代表するのは長であり、また相手方である団体の代表が当該地方公共団体の長であるとしても、そのような契約の締結は、いわば行政内部における機関相互間の行為と同視すべきものであるから、民法が定める双方代理の禁止の規定の適用または類推適用はない。
4 租税滞納処分における国と相手方との関係は、一般統治権に基づく権力関係であるから、民法の対抗要件の規定は適用されず、したがって、仮に滞納処分の対象となる土地の登記簿上の所有者が真の所有者ではないことを、所轄税務署においてたまたま把握していたとしても、滞納処分を行うに何ら妨げとなるものではない。
5 農地買収処分によって、国が対象となった土地の所有権を取得したのち、第三者が相続により当該土地を取得したとして移転登記を済ませたとしても、買収処分による所有権取得について民法の対抗要件の規定は適用されないから、当該第三者は、当該土地所有権の取得を国に対して対抗することはできない。
問題10 正解 2
1 誤り
判例 (最大判昭和28年2月18日) は、「自作農創設特別措置法 (以下自作法と略称する) は、今次大戦の終結に伴い、我国農地制度の急速な民主化を図り、耕作者の地位の安定、農業生産力の発展を期して制定せられたものであつて、政府は、この目的達成のため、同法に基いて、公権力を以て同法所定の要件に従い、所謂不在地主や大地主等の所有農地を買収し、これを耕作者に売渡す権限を与えられているのである。即ち政府の同法に基く農地買収処分は、国家が権力的手段を以て農地の強制買上を行うものであつて、対等の関係にある私人相互の経済取引を本旨とする民法上の売買とは、その本質を異にするものである。従つて、かかる私経済上の取引の安全を保障するために設けられた民法177条の規定は、自作法による農地買収処分には、その適用を見ないものと解すべきである。されば、政府が同法に従つて、農地の買収を行うには、単に登記簿の記載に依拠して、登記簿上の農地の所有者を相手方として買収処分を行うべきものではなく、真実の農地の所有者から、これを買収すべきものであると解する。」と判示している。
2 正しい
判例 (最判昭和59年12月13日) は、「公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法及び借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである。」と判示している。
3 誤り
判例 (最判平成16年7月13日) は、「普通地方公共団体の長が当該普通地方公共団体を代表して行う契約締結行為であっても、長が相手方を代表又は代理することにより、私人間における双方代理行為等による契約と同様に、当該普通地方公共団体の利益が害されるおそれがある場合がある。そうすると、普通地方公共団体の長が当該普通地方公共団体を代表して行う契約の締結には、民法108条が類推適用されると解するのが相当である。」と判示している。
4 誤り
判例 (最判昭和31年4月24日―公売処分無効確認等請求事件) は、「国税滞納処分においては、国は、その有する租税債権につき、自ら執行機関として、強制執行の方法により、その満足を得ようとするものであつて、滞納者の財産を差し押えた国の地位は、あたかも、民事訴訟法上の強制執行 (現在の民事執行法上の強制執行に相当する。) における差押債権者の地位に類するものであり、租税債権がたまたま公法上のものであることは、この関係において、国が一般私法上の債権者より不利益の取扱を受ける理由となるものではない。それ故、滞納処分による差押の関係においても、民法177条の適用があるものと解するのが相当である。」と判示している。
5 誤り
判例 (最判昭和41年12月23日) は、「自作農創設特別措置法 (以下、単に自創法という。) に基づく農地等の買収処分には民法177条は適用されないと解すべきことは、当裁判所の判例とするところであるが、このことと自創法に基づく買収処分により国が農地等の所有権を取得した場合において、その取得について民法177条が適用されるかどうかは、別個の問題であるといわねばならない。ところで、いかなる原因によるものであつても、不動産物権の変動があつた場合において、これと抵触する物権の変動が生ずる可能性があるときは、特別の規定または公益上重大な障害を生ずるおそれがないかぎり、不動産物権公示の原則に照らし、当該物権の変動について民法177条が適用されるものと解するのが相当である。そして、未墾地買収処分により国がその所有権を取得した場合において、当該土地についてこれと抵触する物権の変動が生ずる可能性のあることは明らかであり、……右物権の変動についても、同条が適用されるものと解するのが相当である。」と判示している。
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典型的なサービス問題ですね。
正解肢は、平成15年度 行政書士試験において出題されています。
本問ができなかった方は、猛反省すべきですね。
なお、当方の執筆した「行政書士試験用六法」には、いずれの判例も入っていました。
そういう意味でも、基本判例を羅列した問題に過ぎなかったですね。
では、平成22年度 行政書士試験 問題10の解答解説を載せておきます。
問題10 行政上の法関係に対する民事法の適用についての次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。
1 自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分は、大量の事務処理の便宜上、登記簿の記載に沿って買収計画を立てることが是認され、またこの場合、民法の対抗要件の規定が適用されるので、仮に当該買収処分の対象となる土地の登記簿上の農地所有者が真実の所有者でないとしても、真実の所有者は当該処分を受忍しなければならない。
2 公営住宅の使用関係については、公営住宅法およびこれに基づく条例が特別法として民法および借家法 (事件当時) に優先して適用されるが、公営住宅法および条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法および借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用がある。
3 普通地方公共団体が当該地方公共団体の関連団体と契約を結ぶ場合、当該地方公共団体を代表するのは長であり、また相手方である団体の代表が当該地方公共団体の長であるとしても、そのような契約の締結は、いわば行政内部における機関相互間の行為と同視すべきものであるから、民法が定める双方代理の禁止の規定の適用または類推適用はない。
4 租税滞納処分における国と相手方との関係は、一般統治権に基づく権力関係であるから、民法の対抗要件の規定は適用されず、したがって、仮に滞納処分の対象となる土地の登記簿上の所有者が真の所有者ではないことを、所轄税務署においてたまたま把握していたとしても、滞納処分を行うに何ら妨げとなるものではない。
5 農地買収処分によって、国が対象となった土地の所有権を取得したのち、第三者が相続により当該土地を取得したとして移転登記を済ませたとしても、買収処分による所有権取得について民法の対抗要件の規定は適用されないから、当該第三者は、当該土地所有権の取得を国に対して対抗することはできない。
問題10 正解 2
1 誤り
判例 (最大判昭和28年2月18日) は、「自作農創設特別措置法 (以下自作法と略称する) は、今次大戦の終結に伴い、我国農地制度の急速な民主化を図り、耕作者の地位の安定、農業生産力の発展を期して制定せられたものであつて、政府は、この目的達成のため、同法に基いて、公権力を以て同法所定の要件に従い、所謂不在地主や大地主等の所有農地を買収し、これを耕作者に売渡す権限を与えられているのである。即ち政府の同法に基く農地買収処分は、国家が権力的手段を以て農地の強制買上を行うものであつて、対等の関係にある私人相互の経済取引を本旨とする民法上の売買とは、その本質を異にするものである。従つて、かかる私経済上の取引の安全を保障するために設けられた民法177条の規定は、自作法による農地買収処分には、その適用を見ないものと解すべきである。されば、政府が同法に従つて、農地の買収を行うには、単に登記簿の記載に依拠して、登記簿上の農地の所有者を相手方として買収処分を行うべきものではなく、真実の農地の所有者から、これを買収すべきものであると解する。」と判示している。
2 正しい
判例 (最判昭和59年12月13日) は、「公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法及び借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである。」と判示している。
3 誤り
判例 (最判平成16年7月13日) は、「普通地方公共団体の長が当該普通地方公共団体を代表して行う契約締結行為であっても、長が相手方を代表又は代理することにより、私人間における双方代理行為等による契約と同様に、当該普通地方公共団体の利益が害されるおそれがある場合がある。そうすると、普通地方公共団体の長が当該普通地方公共団体を代表して行う契約の締結には、民法108条が類推適用されると解するのが相当である。」と判示している。
4 誤り
判例 (最判昭和31年4月24日―公売処分無効確認等請求事件) は、「国税滞納処分においては、国は、その有する租税債権につき、自ら執行機関として、強制執行の方法により、その満足を得ようとするものであつて、滞納者の財産を差し押えた国の地位は、あたかも、民事訴訟法上の強制執行 (現在の民事執行法上の強制執行に相当する。) における差押債権者の地位に類するものであり、租税債権がたまたま公法上のものであることは、この関係において、国が一般私法上の債権者より不利益の取扱を受ける理由となるものではない。それ故、滞納処分による差押の関係においても、民法177条の適用があるものと解するのが相当である。」と判示している。
5 誤り
判例 (最判昭和41年12月23日) は、「自作農創設特別措置法 (以下、単に自創法という。) に基づく農地等の買収処分には民法177条は適用されないと解すべきことは、当裁判所の判例とするところであるが、このことと自創法に基づく買収処分により国が農地等の所有権を取得した場合において、その取得について民法177条が適用されるかどうかは、別個の問題であるといわねばならない。ところで、いかなる原因によるものであつても、不動産物権の変動があつた場合において、これと抵触する物権の変動が生ずる可能性があるときは、特別の規定または公益上重大な障害を生ずるおそれがないかぎり、不動産物権公示の原則に照らし、当該物権の変動について民法177条が適用されるものと解するのが相当である。そして、未墾地買収処分により国がその所有権を取得した場合において、当該土地についてこれと抵触する物権の変動が生ずる可能性のあることは明らかであり、……右物権の変動についても、同条が適用されるものと解するのが相当である。」と判示している。
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