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平成22年度 行政書士試験 問題10は、「行政上の法関係に対する民事法の適用」に関する正誤問題でした。

典型的なサービス問題ですね。
正解肢は、平成15年度 行政書士試験において出題されています。
本問ができなかった方は、猛反省すべきですね。

なお、当方の執筆した「行政書士試験用六法」には、いずれの判例も入っていました。
そういう意味でも、基本判例を羅列した問題に過ぎなかったですね。

では、平成22年度 行政書士試験 問題10の解答解説を載せておきます。

問題10 行政上の法関係に対する民事法の適用についての次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。

1 自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分は、大量の事務処理の便宜上、登記簿の記載に沿って買収計画を立てることが是認され、またこの場合、民法の対抗要件の規定が適用されるので、仮に当該買収処分の対象となる土地の登記簿上の農地所有者が真実の所有者でないとしても、真実の所有者は当該処分を受忍しなければならない。

2 公営住宅の使用関係については、公営住宅法およびこれに基づく条例が特別法として民法および借家法 (事件当時) に優先して適用されるが、公営住宅法および条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法および借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用がある。

3 普通地方公共団体が当該地方公共団体の関連団体と契約を結ぶ場合、当該地方公共団体を代表するのは長であり、また相手方である団体の代表が当該地方公共団体の長であるとしても、そのような契約の締結は、いわば行政内部における機関相互間の行為と同視すべきものであるから、民法が定める双方代理の禁止の規定の適用または類推適用はない。

4 租税滞納処分における国と相手方との関係は、一般統治権に基づく権力関係であるから、民法の対抗要件の規定は適用されず、したがって、仮に滞納処分の対象となる土地の登記簿上の所有者が真の所有者ではないことを、所轄税務署においてたまたま把握していたとしても、滞納処分を行うに何ら妨げとなるものではない。

5 農地買収処分によって、国が対象となった土地の所有権を取得したのち、第三者が相続により当該土地を取得したとして移転登記を済ませたとしても、買収処分による所有権取得について民法の対抗要件の規定は適用されないから、当該第三者は、当該土地所有権の取得を国に対して対抗することはできない。









問題10 正解 2
1 誤り
 判例 (最大判昭和28年2月18日) は、「自作農創設特別措置法 (以下自作法と略称する) は、今次大戦の終結に伴い、我国農地制度の急速な民主化を図り、耕作者の地位の安定、農業生産力の発展を期して制定せられたものであつて、政府は、この目的達成のため、同法に基いて、公権力を以て同法所定の要件に従い、所謂不在地主や大地主等の所有農地を買収し、これを耕作者に売渡す権限を与えられているのである。即ち政府の同法に基く農地買収処分は、国家が権力的手段を以て農地の強制買上を行うものであつて、対等の関係にある私人相互の経済取引を本旨とする民法上の売買とは、その本質を異にするものである。従つて、かかる私経済上の取引の安全を保障するために設けられた民法177条の規定は、自作法による農地買収処分には、その適用を見ないものと解すべきである。されば、政府が同法に従つて、農地の買収を行うには、単に登記簿の記載に依拠して、登記簿上の農地の所有者を相手方として買収処分を行うべきものではなく、真実の農地の所有者から、これを買収すべきものであると解する。」と判示している。

2 正しい
 判例 (最判昭和59年12月13日) は、「公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法及び借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである。」と判示している。

3 誤り
 判例 (最判平成16年7月13日) は、「普通地方公共団体の長が当該普通地方公共団体を代表して行う契約締結行為であっても、長が相手方を代表又は代理することにより、私人間における双方代理行為等による契約と同様に、当該普通地方公共団体の利益が害されるおそれがある場合がある。そうすると、普通地方公共団体の長が当該普通地方公共団体を代表して行う契約の締結には、民法108条が類推適用されると解するのが相当である。」と判示している。

4 誤り
 判例 (最判昭和31年4月24日―公売処分無効確認等請求事件) は、「国税滞納処分においては、国は、その有する租税債権につき、自ら執行機関として、強制執行の方法により、その満足を得ようとするものであつて、滞納者の財産を差し押えた国の地位は、あたかも、民事訴訟法上の強制執行 (現在の民事執行法上の強制執行に相当する。) における差押債権者の地位に類するものであり、租税債権がたまたま公法上のものであることは、この関係において、国が一般私法上の債権者より不利益の取扱を受ける理由となるものではない。それ故、滞納処分による差押の関係においても、民法177条の適用があるものと解するのが相当である。」と判示している。

5 誤り
 判例 (最判昭和41年12月23日) は、「自作農創設特別措置法 (以下、単に自創法という。) に基づく農地等の買収処分には民法177条は適用されないと解すべきことは、当裁判所の判例とするところであるが、このことと自創法に基づく買収処分により国が農地等の所有権を取得した場合において、その取得について民法177条が適用されるかどうかは、別個の問題であるといわねばならない。ところで、いかなる原因によるものであつても、不動産物権の変動があつた場合において、これと抵触する物権の変動が生ずる可能性があるときは、特別の規定または公益上重大な障害を生ずるおそれがないかぎり、不動産物権公示の原則に照らし、当該物権の変動について民法177条が適用されるものと解するのが相当である。そして、未墾地買収処分により国がその所有権を取得した場合において、当該土地についてこれと抵触する物権の変動が生ずる可能性のあることは明らかであり、……右物権の変動についても、同条が適用されるものと解するのが相当である。」と判示している。

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2010.11.30 Tue l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題9は、「通達」に関する正誤問題でした。

通達に関しては、行政機関内部の命令であり、法規命令の性質を有しないという程度の知識はあったかと思いますが、平等原則違反との関係、行政事件訴訟法との関係、国家賠償法との関係、懲戒処分との関係等に関することまでは、知らなかった方が大多数でしょう。
おそらく、正解された方は、半分以下と推測されますので、捨て問ですね。
(肢2か、肢3かまで絞れた方は、かなり力がありますね)

出題者の方のご苦労がしのばれる問題でした。

では、平成22年度 行政書士試験 問題9の解答解説を載せておきます。

問題9 通達に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 通達は、法律の根拠なく発令・改廃することができるが、それに際しては、官報による公示や関係機関の事務所における備付けその他適当な方法により国民に対して公にしなければならない。

2 通達は、国民の法的地位に影響を与えるものではないが、特段の理由もなく通達に反する処分については、平等原則に違反するものとして、相手方たる国民との関係においても違法とされる余地がある。

3 通達は、国民の法的地位に影響を与えるものではないから、その発令・改廃行為は行政事件訴訟法3条1項の「公権力の行使」および国家賠償法1条1項の「公権力の行使」にはあたらない。

4 通達によって示された法令解釈の違法性が訴訟において問題となったとき、裁判所は、行政庁の第一次的判断権の尊重の原則により、それが重大明白に誤りでない限り、当該通達で示された法令解釈に拘束される。

5 通達は、上級行政機関が下級行政機関に対して発するものであり、上司たる公務員が部下である公務員に発する職務命令と別のものであるから、通達に反する行為を行ったことと当該行為を行った公務員の職務上の義務違反との間には、直接の関係はない。











問題9 正解 2
 通達とは、ある行政機関が、その所掌事務に関して、所管の下級行政機関に対して発するものをいう。法令の解釈や運用方針を統一するため、上級行政機関が下級行政機関に対して発する通達が一般的であり、この通達は、行政規則としての性質を有している。

1 誤り
 通達は、法規命令 (=行政機関が発する国民の権利義務に関する一般的な定め) とは異なり、国民の権利義務に直接関係しない。このため、私人に対して、その内容を公表しなければならないという要請は存在しない。
 したがって、「(通達をする) に際しては、官報による公示や関係機関の事務所における備付けその他適当な方法により国民に対して公にしなければならない」との記述は誤りである。
 なお、通達は、法規命令とは異なり、国民の権利義務に関する法規の性質を有しないから、法律の授権を必要とせず、また、法律の根拠なくして行政機関が自由に発令・改廃することができる。したがって、本肢の前半部分は正しい。

2 正しい
 行政機関が合理的理由なく私人を不平等に取り扱ってはならないことは当然である (憲法14条等)。このため、行政機関が、特段の理由もなく通達に反する処分をした場合には、平等原則に違反するものとして、相手方たる国民との関係においても違法となると解されている (多数説)。

3 誤り
 判例 (東京高判昭和56年11月13日) は、国家賠償法1条1項の「公権力の行使」とは、国又は公共団体の作用のうち、純粋な私経済作用と同法2条によって救済される営造物の設置又は管理作用を除く全ての作用を意味すると判示している。この考え方に従えば、通達の発令・改廃行為は、国家賠償法1条1項の「公権力の行使」に当たることになる。
 したがって、「通達……の発令・改廃行為は……国家賠償法1条1項の『公権力の行使』にはあたらない」との記述は妥当でない。
 なお、判例 (最判昭和43年12月24日) は、「現行法上行政訴訟において取消の訴の対象となりうるものは、国民の権利義務、法律上の地位に直接具体的に法律上の影響を及ぼすような行政処分等でなければならないのであるから、本件通達中所論の趣旨部分の取消を求める本件訴は許されないものとして却下すべきものである。」と判示しているから、本肢前半部分は正しい。

4 誤り
 通達は、下級行政機関を拘束するが、対国民との関係において、裁判所を拘束する効力を有しない。判例 (最判昭和43年12月24日) も、「元来、通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであり、このような通達は右機関および職員に対する行政組織内部における命令にすぎないから、これらのものがその通達に拘束されることはあつても、一般の国民は直接これに拘束されるものではなく、このことは、通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合においても別段異なるところはない。このように、通達は、元来、法規の性質をもつものではないから、行政機関が通達の趣旨に反する処分をした場合においても、そのことを理由として、その処分の効力が左右されるものではない。また、裁判所がこれらの通達に拘束されることのないことはもちろんで、裁判所は、法令の解釈適用にあたつては、通達に示された法令の解釈とは異なる独自の解釈をすることができ、通達に定める取扱いが法の趣旨に反するときは独自にその違法を判定することもできる筋合である。」と判示している。
 したがって、対国民との関係において、通達の違法性が問題となった場合、「裁判所は、行政庁の第一次的判断権の尊重の原則により、それが重大明白に誤りでない限り、当該通達で示された法令解釈に拘束される。」との記述は誤りである。

5 誤り
 通達は、上級行政機関の下級行政機関に対する指揮監督権の一環として発せられるものであり、争いはあるも、上級行政機関の下級行政機関に対する命令としての性質を有している。このため、下級行政機関が通達に反する行為を行った場合、当該下級行政機関の職員は、職務命令違反となることがある。
 したがって、「通達は、……、上司たる公務員が部下である公務員に発する職務命令と別のものであるから、通達に反する行為を行ったことと当該行為を行った公務員の職務上の義務違反との間には、直接の関係はない」との記述は誤りである。

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2010.11.29 Mon l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題8は、「行政上の義務履行確保制度」に関する正誤問題でした。

行政上の義務履行確保制度は、行政書士試験の最頻出分野であり、当方も、平成22年度 行政書士試験 出題予想において、本命としてあげていました。
ただ、このように条例で定めることができるか否かという点を問題にし、かつ、事例問題形式で問われると、難しく感じられたかもしれませんね。

問題としては、「疑義の余地なく設けることができるもの」という設問には、若干疑問の余地がありますが、もっともソフトな手段を選べばよいわけですから、簡単な問題の部類に入ったと思われます。
したがって、正解すべきでした。

上記のとおり、問題文には、若干の疑問の余地がありますが、試験委員のご苦労がしのばれる問題であり、良問であると考えます。
このレベルの問題は、本試験でなければ、なかなか見ることができませんね!!!

なお、本問の解説を書くためには、行政代執行法1条の解釈をしなければなりません。
解説者の力量が問われるところです。
ですので、この問題も、過去問題集を選択する上で、重要な基準を提供してくれることと考えます。

では、平成22年度 行政書士試験 問題8の解答解説を載せておきます。

問題8 A市は、風俗営業のための建築物について、条例で独白の規制基準を設けることとし、当該基準に違反する建築物の建築工事については市長が中止命令を発しうることとした。この命令の実効性を担保するための手段を条例で定める場合、法令に照らし、疑義の余地なく設けることのできるものは、次の記述のうちどれか。

1 当該建築物の除却について、法律よりも簡易な手続で代執行を実施する旨の定め。

2 中止命令の対象となった建築物が条例違反の建築物であることを公表する旨の定め。

3 中止命令を受けたにもかかわらず建築工事を続行する事業者に対して、工事を中止するまでの間、1日について5万円の過料を科す旨の定め。

4 市の職員が当該建築物の敷地を封鎖して、建築資材の搬入を中止させる旨の定め。

5 当該建築物により営業を行う事業者に対して1千万円以下の罰金を科す旨の定め。












問題8 正解 2
 行政上の義務が課された場合において、その義務の実効性を確保するための制度を、行政上の義務履行確保制度と呼んでいる。
 この行政上の義務履行確保制度の分類については、各説があるものの、代表的な見解は、①行政上の強制執行制度 (=行政代執行、執行罰、直接強制及び行政上の強制徴収)、②行政罰制度 (行政刑罰及び行政上の秩序罰)、③その他の行政上の義務履行確保制度 (たとえば、給付拒否、公表) の三つに分類している。
このうち、②については、地方自治法14条3項が、「普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」と規定していることから、条例でこの定めを設けることができることについて争いはない。
 しかし、①及び③については、条例でこの定めを設けることができるか否かについて、明示の規定が置かれていないことから問題となる。
 この点、行政代執行法1条は、「行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。」と規定し、「行政上の義務の履行確保」に関して「法律」に基づくことを定めているが、多数説は、ここにいう「法律」には、条例は含まれないと解している。なぜなら、同法2条は、「法律 (法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。) により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為 (他人が代つてなすことのできる行為に限る。) について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。」と規定しており、仮に、同法1条の「法律」に「条例」を含むのであれば、同法2条において「法律」に条例を含むと断る必要はないからである。
 また、多数説は、ここにいう「行政上の義務の履行確保」には、①は含まれるが、③は含まれないと解している。なぜなら、「行政上の義務の履行確保」の観念を広く解すると、地方公共団体の自主的判断による法の執行の余地を狭くし、地方自治制度を保障する憲法の趣旨に反すると解されるからである。

1 疑義の余地なく設けることのできるものとはいえない
 本肢の「当該建築物の除却について、法律よりも簡易な手続で代執行を実施する旨の定め」は、私人の側の代替的作為義務が履行されない場合において、行政庁が自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをなさしめ、これに要した費用を義務者から徴収するものであるから、行政代執行に当たる。
条例により、行政代執行に関する定めを設けることができるか否かについては、前記のとおり、その定めを設けることができないと解されている。
 したがって、本肢の定めは、法令に照らし、疑義の余地なく設けることのできるものとはいえない。

2 疑義の余地なく設けることのできるものといえる
 本肢の「中止命令の対象となった建築物が条例違反の建築物であることを公表する旨の定め」は、行政上の強制執行制度及び行政罰制度のいずれにも該当しないことから、前記③のその他の行政上の義務履行確保制度に当たる。
 条例により、前記③のその他の行政上の義務履行確保制度に関する定めを設けることができるか否かについては、前記のとおり、行政代執行法1条により禁止されないと解されている。
また、行政作用の広範性のゆえに、多様な義務履行確保の手段をとることができるようにしておくことが必要である。
 したがって、本肢の定めは、法令に照らし、疑義の余地なく設けることのできるものといえる。

3 疑義の余地なく設けることのできるものとはいえない
 本肢の「中止命令を受けたにもかかわらず建築工事を続行する事業者に対して、工事を中止するまでの間、1日について5万円の過料を科す旨の定め」は、行政上の義務の不履行に対して、一定額の過料を科すことを通告して間接的に義務の履行を促し、なお義務を履行しないときは、これを強制的に徴収するものであり、執行罰に当たる。
 条例により、執行罰に関する定めを設けることができるか否かについては、前記のとおり、その定めを設けることができないと解されている。
したがって、本肢の定めは、法令に照らし、疑義の余地なく設けることのできるものとはいえない。

※ 地方自治法14条3項の「過料」は、秩序罰としての過料である。なぜなら、条例で執行罰としての過料を科する旨の規定を設けることはできないからである (行政代執行法1条)。 [18‐22‐4]

4 疑義の余地なく設けることのできるものとはいえない
 本肢の「市の職員が当該建築物の敷地を封鎖して、建築資材の搬入を中止させる旨の定め」は、義務者の身体又は財産に直接力を行使して、義務の履行があったのと同一の状態を実現するものであり、直接強制に当たる。
条例により、直接強制に関する定めを設けることができるか否かについては、前記のとおり、その定めを設けることができないと解されている。
 したがって、本肢の定めは、法令に照らし、疑義の余地なく設けることのできるものとはいえない。

5 疑義の余地なく設けることのできるものとはいえない
 本肢の「当該建築物により営業を行う事業者に対して1千万円以下の罰金を科す旨の定め。本肢の定め」は、過去の行為に対する制裁を科すものであり、行政刑罰に当たる。
前述のとおり、条例により、行政刑罰に関する定めを設けることは許される。もっとも、地方自治法14条3項は、「普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」と規定し、その上限を設けていることから、本肢の「1千万円以下の罰金」を科す旨の定めを設けることは許されない。
 したがって、本肢の定めは、法令に照らし、疑義の余地なく設けることのできるものとはいえない。

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2010.11.26 Fri l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題7は、「衆議院における議事手続」に関する正誤問題でした。

内閣総理大臣の指名要件のうち、「出席議員の過半数」の議決という要件は、受験生の常識ですから、正解は、肢2又は肢4に絞れたことでしょう。
しかし、「出席議員の過半数」の意味をご存知の方は、少なかったでしょうね。
そうであるとしても、「議事手続は、最終的には各議院の自律権にゆだねられる問題だとしても、憲法が定める定足数のハードルの低さを考慮に入れると、ごく少数の議員のみによって議決が成立することのないように配慮しつつ、多数決による議決の成立可能性を確保するよう慎重な考慮が求められる。」というヒントが与えられていますから、これが肢4の考え方の批判であることに気づけば、肢2が正解であることが分かります。

一見知識問題で「難問」と思われたかもしれませんが、一定の条件(ヒント)を与えた上で考えさせる問題であり、良問であると考えます。
※ 資格学校の解説・試験講評の類で、本問を「難問」であると位置づけているものを見ました。そのように評価された方は、おそらく、本問が衆議院先例集及び衆議院規則の問題であると位置づけているようです。
しかし、本問は、憲法の知識及びヒントをもとに解くことができますから、その評価は妥当でないと考えます。
ですので、本問について、衆議院先例集及び衆議院規則の観点から解説を書いている過去問題集は、受験生に優しくないですね。

なお、本問は、過去問題集を選択する上で重要であると考えます。
なぜなら、上記ヒントがなくとも、解説を書くことは可能であるからです。
このため、上記ヒントに何ら触れないまま、肢2の考え方が先例・通説であると言うように書かれる解説者がいらっしゃるかもしれません。
しかし、この書き方は、単にコンメンタール類を写したに過ぎず、問題に答えようとする姿勢の点で問題があると考えます。
そこで、上記ヒントをとおして、最終的に正解を導く形で書かれているものを選ぶようにしてください。

では、平成22年度 行政書士試験 問題7の解答解説を載せておきます。



問題7 議事手続は、最終的には各議院の自律権にゆだねられる問題だとしても、憲法が定める定足数のハードルの低さを考慮に入れると、ごく少数の議員のみによって議決が成立することのないように配慮しつつ、多数決による議決の成立可能性を確保するよう慎重な考慮が求められる。次に掲げるのは、かつて衆議院における議事手続について争われた事例である。そこで採られるべき妥当な解決として、先例および通説の立場を示すのは、次の1~5の記述のうちどれか。

1948年10月14日、衆議院における内閣総理大臣指名の手続において、以下のような投票が行われた。

議員定数  466
吉田茂   184票
片山哲    87票
その他    43票
白票     86票

1 総議員の過半数に達したものがいないため、投票をやり直した上で、最も得票の多いものが指名される。

2 白票を投じたものも出席議員数に算入した上で、出席議員の過半数に達したものがいないため、上位2名による決選投票になる。

3 出席議員の3分の2以上の票を集めた候補がいないため、投票をやり直した上で、最も得票の多いものが指名される。

4 白票には賛否いずれの意思表示も含まれていないから、白票を除いて計算すると、出席議員の過半数に達した吉田茂が直ちに指名される。

5 衆議院ではいずれの候補も過半数に達しないため、参議院の指名を国会の指名とする。












問題7 正解 2
内閣総理大臣の指名及び議事手続に関する憲法の規定は、次のとおりである。

① 憲法67条1項は、「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。」と規定している。

② 憲法67条2項は、「衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて10日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。」と規定している。

③ 憲法56条1項は、「両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。」と規定している。
 なお、「総議員」の意味については、法定議員数 (=公職選挙法4条の規定する議員のる定数) を意味すると解するのが帝国議会以来の先例である。

④ 憲法56条2項は、「両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。」と規定している。
 なお、「出席議員の過半数」の意味については、次のような学説上の争いがある。
A 「出席議員の過半数」とは、出席したすべての議員の過半数、すなわち、可とする投票 (賛成投票) が、否とする投票 (反対投票) 、白票及び無効票の合計より多いことを意味すると解する考え方 (通説)
(批判)
白票及び無効票について、否とする投票 (反対投票) をした者と同様に扱うのは不合理である。

B 出席したすべての議員を定足数に算入する点は、A説と同様であるが、「出席議員の過半数」とは、可とする投票 (賛成投票) が、否とする投票 (反対投票) よりも多いことを意味すると解する考え方 (有力説)
(批判)
白票及び無効票が多いと、ごく少数の議員のみによって議決が成立してしまう。

以上の規定及びそれに関する解釈を前提に、解説を行う。
1 先例及び通説の立場を示すものではない。
 憲法56条2項前段は、「両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決」すると規定しているため、「総議員の過半数に達したものがいないため、投票をやり直した上で、最も得票の多いものが指名される。」との考え方は、憲法違反となる。したがって、本肢の考え方は、先例及び通説の立場を示すものではない。

2 先例及び通説の立場を示すものである。
 本肢の考え方は、憲法56条2項の「出席議員の過半数」の意味について、上記④のA説に立つものであり、通説の立場を示すものである。
 なお、衆議院規則18条1項は、「内閣総理大臣の指名については、記名投票で指名される者を定める。」と規定し、同条2項は、「投票の過半数を得た者を指名される者とし、その者について指名の議決があつたものとする。」と規定し、同条3項は、「投票の過半数を得た者がないときは、第8条第2項の規定 (=「投票の過半数を得た者がないときは、投票の最多数を得た者2人について決選投票を行い、多数を得た者を当選人とする。但し、決選投票を行うべき2人及び当選人を定めるに当り得票数が同じときは、くじでこれを定める。」) を準用して指名される者を定め、その者について指名の議決があつたものとする。」と規定している。

3 先例及び通説の立場を示すものではない。
 憲法56条2項前段は、「両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決」すると規定しているため、「出席議員の3分の2以上の票を集めた候補がいないため、投票をやり直した上で、最も得票の多いものが指名される。」との考え方は、憲法違反となる。したがって、本肢の考え方は、先例及び通説の立場を示すものではない。

4 先例及び通説の立場を示すものではない。
 本肢の考え方は、憲法56条2項の「出席議員の過半数」の意味について、上記④のB説に立つものであり、通説の立場を示すものではないし、問題文の「議事手続は、最終的には各議院の自律権にゆだねられる問題だとしても、憲法が定める定足数のハードルの低さを考慮に入れると、ごく少数の議員のみによって議決が成立することのないように配慮しつつ、多数決による議決の成立可能性を確保するよう慎重な考慮が求められる。」という考え方にも反する。

5 先例及び通説の立場を示すものではない。
 憲法67条1項前段は、「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。」と規定しているため、「参議院の指名を国会の指名とする」との考え方は、憲法違反となる。したがって、本肢の考え方は、先例及び通説の立場を示すものではない。

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2010.11.25 Thu l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題6は、租税法律主義に関する組合せ問題でした。

最大判平成18年3月1日(国民健康保険料賦課処分取消等請求事件判決)は、平成19年度 行政書士試験 問題3においても問われたことがあり、きちんと学習すべき判例でした(きちんと学習していないと、肢ウで、足をすくわれたかもしれませんね)。

ということで、正解すべき問題でした。

では、平成22年度 行政書士試験 問題6の解答解説を載せておきます。


問題6 次のア~エの記述のうち、租税法律主義を定める憲法84条についての最高裁判所の判例の考え方を示すものとして、正しいものの組合せはどれか。

ア 国または地方公共団体が、特別の給付に対する反対給付として徴収する金銭は、その形式を問わず、憲法84条に規定する租税に当たる。

イ 市町村が行う国民健康保険の保険料は、被保険者において保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収されるから、憲法84条は直接適用される。

ウ 国民健康保険税は、目的税であって、反対給付として徴収されるものではあるが形式が税である以上は、憲法84条の規定が適用される。

エ 市町村が行う国民健康保険の保険料は、租税以外の公課ではあるが、賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するので、憲法84条の趣旨が及ぶ。

1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ・ウ
4 イ・エ
5 ウ・エ











問題6 正解 5
ア 誤り
 判例 (最大判平成18年3月1日―国民健康保険料賦課処分取消等請求事件) は、「国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてでなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、憲法84条に規定する租税に当たるというべきである。」と判示している。

※ 「国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてでなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付」を固有の意味での租税と呼んでいる。上記判例は、この固有の意味での租税が憲法84条に規定する「租税」に当たるとしている。そうなると、問題文のような「特別の給付に対する反対給付として徴収する金銭」、たとえば、負担金 (=国又は公共団体が特定の公共事業を行う場合に、その費用に充てるため、その事業と特別の関係にある者に対して賦課する金銭をいう。たとえば、都市計画負担金 (都市計画法75条)等である。)、社会保険の保険料、手数料 (=国又は地方公共団体が国民 (住民) のために行う公共の役務又は公の施設の利用に対する対価として徴収する金銭をいう。たとえば、試験手数料、使用料等である。) 等は、固有の意味での租税ではないため、憲法84条によって規律されないこととなりそうである。この疑問に対する答えを論じたものが本判決である。

イ 誤り
 判例 (最大判平成18年3月1日―国民健康保険料賦課処分取消等請求事件) は、「国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてでなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、憲法84条に規定する租税に当たるというべきである。」とした上で、「市町村が行う国民健康保険の保険料は、これと異なり、被保険者において保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収されるものである。前記のとおり、被上告人市における国民健康保険事業に要する経費の約3分の2は公的資金によって賄われているが、これによって、保険料と保険給付を受け得る地位とのけん連性が断ち切られるものではない。また、国民健康保険が強制加入とされ、保険料が強制徴収されるのは、保険給付を受ける被保険者をなるべく保険事故を生ずべき者の全部とし、保険事故により生ずる個人の経済的損害を加入者相互において分担すべきであるとする社会保険としての国民健康保険の目的及び性質に由来するものというべきである。したがって、上記保険料に憲法84条の規定が直接に適用されることはないというべきである(国民健康保険税は、前記のとおり目的税であって、上記の反対給付として徴収されるものであるが、形式が税である以上は、憲法84条の規定が適用されることとなる。)。」と判示している。

ウ 正しい
 判例 (最大判平成18年3月1日―国民健康保険料賦課処分取消等請求事件) は、「国民健康保険税は、前記のとおり目的税であって、上記の反対給付として徴収されるものであるが、形式が税である以上は、憲法84条の規定が適用されることとなる。」と判示している。

エ 正しい
 判例 (最大判平成18年3月1日―国民健康保険料賦課処分取消等請求事件) は、「憲法84条は、課税要件及び租税の賦課徴収の手続が法律で明確に定められるべきことを規定するものであり、直接的には、租税について法律による規律の在り方を定めるものであるが、同条は、国民に対して義務を課し又は権利を制限するには法律の根拠を要するという法原則を租税について厳格化した形で明文化したものというべきである。したがって、国、地方公共団体等が賦課徴収する租税以外の公課であっても、その性質に応じて、法律又は法律の範囲内で制定された条例によって適正な規律がされるべきものと解すべきであり、憲法84条に規定する租税ではないという理由だけから、そのすべてが当然に同条に現れた上記のような法原則のらち外にあると判断することは相当ではない。そして、租税以外の公課であっても、賦課徴収の強制の度合い等の点において租税に類似する性質を有するものについては、憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきであるが、その場合であっても、租税以外の公課は、租税とその性質が共通する点や異なる点があり、また、賦課徴収の目的に応じて多種多様であるから、賦課要件が法律又は条例にどの程度明確に定められるべきかなどその規律の在り方については、当該公課の性質、賦課徴収の目的、その強制の度合い等を総合考慮して判断すべきものである。市町村が行う国民健康保険は、保険料を徴収する方式のものであっても、強制加入とされ、保険料が強制徴収され、賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するものであるから、これについても憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきであるが、他方において、保険料の使途は、国民健康保険事業に要する費用に限定されているのであって、国民健康保険法81条の委任に基づき条例において賦課要件がどの程度明確に定められるべきかは、賦課徴収の強制の度合いのほか、社会保険としての国民健康保険の目的、特質等をも総合考慮して判断する必要がある。」と判示している。

以上により、正しいものは、ウ・エであるから、正解は5になる。

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2010.11.24 Wed l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
今日も事務所で、宗教法人の設立について格闘しています。

ちょっと疲れて窓の外を見ると、明治通りには、人だかりがしていますね。
マラソンがこの季節にあったっけ???

インターネットで検索したところ、福岡 ソフトバンク ホークス 優勝パレードがあるではないか。
それは、「行かねば!」
1時半に呉服町出発で、40分程で終了するらしい。

当方の事務所のある平和台陸上競技場前の三叉路交差点がパレードの終点となっているから、2時頃から待っていれば、完璧であるなぁ。

事務所からも見えるが、やはりまじかに見たい。
外野スタンドで見るより、バックネット裏のほうがはるかにいいですからね(明治通りと当事務所は、福岡フィナンシャルグループ本社及び昭和通を隔てて100メートル位か!?)

現在1時。緊張感が高まるばかりである。

来年は、日本一になってよね!!!

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2010.11.20 Sat l 事務所日記 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題5は、「表現の自由の保障根拠」に関する正誤問題でした。

「表現の自由の保障根拠」???という感じです。
「根拠」という意味の曖昧さ故に、どの角度からでも解説が書けそうです。

いろいろな解説を見させていただきましたが、「表現の自由の価値」の観点から書かれている解説がもっとも分かりやすいので、その観点から解説を書き換えました。

では、平成22年度 行政書士試験 問題5の解答解説を載せておきます。



問題5 表現の自由の保障根拠に関する次の記述のうち、他と異なる考え方に立脚しているものはどれか。

1 広告のような営利的な表現活動もまた、国民一般が消費者として様々な情報を受け取ることの重要性に鑑み、表現の自由の保護が及ぶものの、その場合でも保障の程度は民主主義に不可欠な政治的言論の自由よりも低い、とする説がある。

2 知る権利は、「国家からの自由」という伝統的な自由権であるが、それにとどまらず、参政権(「国家への自由」)的な役割を演ずる。個人は様々な事実や意見を知ることによって、はじめて政治に有効に参加することができるからである。

3 表現の自由を規制する立法の合憲性は、経済的自由を規制する立法の合憲性と同等の基準によって審査されなければならない、とする説が存在するが、その根拠は個人の自律にとっては経済活動も表現活動も同等な重要性を有するためである。

4 名誉毀損的表現であっても、それが公共の利害に関する事実について公益を図る目的でなされた場合には、それが真実であるか、真実であると信じたことに相当の理由があるときは処罰されないが、これは政治的な言論を特に強く保護する趣旨と解される。

5 報道機関の報道の自由は、民主主義社会において、国民が国政に関与するために重要な判断の資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するものであり、表現の自由の保障内容に含まれる。














問題5 正解 3

 表現の自由の価値 (論者によっては、表現の自由の保障根拠) として挙げられるものは、自己実現の価値 (=個人が言論活動を通じて自己の人格を発展させるという個人的な価値) と自己統治の価値 (=言論活動によって国民が政治的意思決定に関与するという民主政に資する社会的な価値) である。

1 他と異なる考え方に立脚していない
本肢は、「国民一般が消費者として様々な情報を受け取ることの重要性に鑑み、表現の自由の保護が及ぶ」として、表現の自由の保障根拠のうち、自己統治の価値の観点から論じている。

2 他と異なる考え方に立脚していない
本肢は、「知る権利は、……、参政権 (『国家への自由』) 的な役割を演ずる。個人は様々な事実や意見を知ることによって、はじめて政治に有効に参加することができるからである。」とし、表現の自由の保障根拠のうち、自己統治の価値の観点から論じている。

3 他と異なる考え方に立脚している
本肢は、「表現の自由を規制する立法の合憲性は、経済的自由を規制する立法の合憲性と同等の基準によって審査されなければならない、とする説が存在するが、その根拠は個人の自律にとっては経済活動も表現活動も同等な重要性を有するためである。」とし、表現の自由の保障根拠のうち、自己実現の価値の観点から論じている。

4 他と異なる考え方に立脚していない
本肢は、「名誉毀損的表現であっても、それが公共の利害に関する事実について公益を図る目的でなされた場合には、それが真実であるか、真実であると信じたことに相当の理由があるときは処罰されないが、これは政治的な言論を特に強く保護する趣旨と解される。」とし、表現の自由の保障根拠のうち、自己統治の価値の観点から論じている。

5 他と異なる考え方に立脚していない
本肢は、「報道機関の報道の自由は、民主主義社会において、国民が国政に関与するために重要な判断の資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するものであり、表現の自由の保障内容に含まれる。」とし、表現の自由の保障根拠のうち、自己統治の価値の観点から論じている。

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2010.11.20 Sat l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
事務所では、連日宗教法人の設立に関する仕事をしている。
業務範囲を拡大しようと考え、先日先輩行政書士さんに相談したところ、ご依頼を受けている宗教法人の設立のお手伝いをさせていただけることになった。
教えを請いながらの仕事であり、非常に楽しくやらせていただいている。
宗教法人の設立のお仕事の大変さについては、後日のブログで。

さて、久しぶりに、2時を超えて仕事をした。
さすがに、疲れた!!
今日も事務所前の道路では、暴走族と警察が追いかけっこをやっている。
1200cc位の小さなパトカーが追いかけていたが、あの車には、有名な暴走族対策課長がお乗りなのだろうか!?
ご苦労様である。

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2010.11.20 Sat l 事務所日記 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題4は、「平等原則」に関する空欄補充問題でした。

空欄イと関連する「絶対的」な平等の意味が難しいことを除き、サービス問題と言えるものでした。
必ず得点すべきですね。

なお、「当方の六法が出版できれば、問題3だけでなく、問題4の判例もきちんと載っているのに……」ととても残念になったことを付言しておきます。

では、平成22年度 行政書士試験 問題4の解答解説を載せておきます。



問題4 次の文章は、平等原則について、先例として引用されることの多い最高裁判所判決の一部である。文中の空欄 〔 ア 〕 ~ 〔 エ 〕 にあてはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。

 思うに、憲法14条1項及び地方公務員法13条にいう社会的身分とは、人が社会において占める継続的な地位をいうものと解されるから、高令 (齢) であるということは右の社会的身分に当らないとの原審の判断は相当と思われるが、右各法条は、国民に対し、法の下の平等を保障したものであり、右各法条に列挙された事由は 〔 ア 〕 なものであって、必ずしもそれに限るものではないと解するのが相当であるから、原判決が、高令 (齢) であることは社会的身分に当らないとの一事により、たやすく上告人の……主張を排斥したのは、必ずしも十分に意を尽したものとはいえない。しかし、右各法条は、国民に対し 〔 イ 〕 な平等を保障したものではなく、差別すべき 〔 ウ 〕 な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきであるから、〔 エ 〕 に即応して 〔 ウ 」と認められる差別的取扱をすることは、なんら右各法条の否定するところではない。
(最大判昭和39年5月27日民集18巻4号676頁以下)

   ア      イ      ウ       エ
1 具体的    形式的    客観的    事柄の性質
2 例示的    絶対的    合理的    公共の福祉
3 例示的    相対的    合理的    事柄の性質
4 具体的    一般的    実質的    公共の福祉
5 例示的    絶対的    合理的    事柄の性質
















問題4 正解 5
ア 例示的
 憲法14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定している。このため、高齢であることを理由に差別したことが、憲法14条1項違反であると主張するためには、いくつかの方法がある。代表的なものは、本判例があげているように、①憲法14条1項の「社会的身分」には高齢であることも含まれるという解釈方法、②憲法14条1項の「社会的身分」には高齢であることは含まれないが、憲法14条1項後段の列挙事由は例示的なものであって、必ずしもそれに限るものではないとする解釈等である。本判決は、②の解釈を採用した。
 したがって、空欄アには、「例示的」が入る。

イ 絶対的
 憲法14条1項の「法の下に平等」については、国家は、国民に対し、人の事実上の差異をまったく無視して機械的に均一の取扱いをなすべきとする絶対的な平等を意味していると解釈する余地がある。しかし、これを貫くと、たとえば身体的なハンデを負っている者に対する公的補助でさえ憲法違反となりかねず、まったく非現実的な解釈である。そこで、多数説は、同条については、差別すべき合理的な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解し、「法の下の平等」とは、等しいものは等しく、等しくないものは等しくなく取り扱うべきだという相対的な平等を意味すると解している。
 このため、事柄の性質に即応して、合理的と認められる差別的取扱いをすることは、何ら同条に違反するものではないとされている。

ウ 合理的
 肢イの解説参照のこと。

エ 事柄の性質
 肢イの解説参照のこと。

 以上により、空欄アには、「例示的」、空欄イには、「絶対的」、空欄ウには、「合理的」、空欄エには、「事柄の性質」が入るから、正解は5になる。

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2010.11.19 Fri l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
先日、事務所の電話が鳴って、次のご相談を受けた。
「修繕積立金が余っているので、マンション管理規約を改正して、全員に返還することができますか?」

ウーン難問。
これに関する明確な法律の規定はないからである。
区分所有法や民法の解釈になるのであろうが、どの条文を根拠に答えたらよいのであろうか。
修繕積立金は、マンション修理等を目的として住民が積み立てている財産であるし、その取り崩し方によっては、将来住民となる方の不利益にもなるであろう(まぁ、この点は、重要事項説明書等で知ることができるであろうが……)。そう考えれば、目的外の使用は禁止されることになろう。
しかし、修繕積立金の減額の決議は可能であるから、そうすれば、実質的に、返金と同様の効果を受けることができる。そう考えれば、できそうではある。
数日悩んでしまった。
法律的には、組合財産と考えられ、一定の割合で決議すれば、そのような処分決議も有効そうである。
区分所有法上の「共用部分の負担」(同法19条)と解することができれば、規約により定めれば、可能となりそうであるが、果たして、同法19条の射程がこの事案まで及ぶのか。
また、一般法である民法によれば、共有物の変更は、他の共有者全員の同意が必要であり(同法251条)、この規定に従うのか?

ネットで検索したが、その手の情報は、まったく載っていない。
また、福岡でその手の本がもっとも充実しているであろう本屋をはしごして、20冊ほど調べたが、まったく書かれていない。
国土交通省住宅局住宅総合整備課マンション管理対策室監修の「マンション標準管理規約の解説」を入手したが、それにも載っていない。
さぁ、どうすべきか?

感覚的に、この問題は、役所の専門部署、それも中央省庁ぐらいしか分からないのではないかと思い、国土交通省に直接電話してみようと思ったが、さすがに、お作法違反か?!

中央省庁に友人がいたので、質問の「お作法」について尋ねてみると、「そんなのは、ない!」とのこと。
ただし、中央省庁は、地方公共団体の考え方を尊重するので、まず、そちらを経由した方が良いとのこと。

まず、所在地のマンション管理士の二つの団体に尋ねたのだが、「それはできないでしょう」との返事。
当方も、そう思います!!
「こんな事案を聞いたことがありますか?」と尋ねたところ、「まったくない!」との返事。
こりゃぁ難問だ。

次に、お作法に従って、地方公共団体の担当部署へ。
「そのような専門的なことについては、マンション管理士の団体を紹介しています。」との返事。
「さっき聞いたので、中央省庁に聞いてくれませんか?」と当方がお願いしたところ、
「時間がかかりますし、ニュアンスの違いで、正確にお答えできないかもしれませんから、直接お尋ねになったらいかがですか!」
当方は、その答えを待っていた!
ようやく、中央省庁へ電話ができる。

国土交通省の担当部署に電話したところ、民法251条の問題として処理できるのではないかとのこと(つまり、全員の同意が必要)。
「マンション標準管理規約は、当省の管轄ですが、民法及び区分所有法は、管轄が法務省になりますから、その担当官のお話をうかがった方が良いのでは?」とのこと。
さすが、縦割り!
お電話番号をうかがって、今度は、法務省へ。
「区分所有法上の「共用部分の負担」(同法19条)と解することができれば……」とのお答え。
「国土交通省では、民法251条の問題だと……」とお話しすると、
「そういう解釈も成り立つかもしれませんね。でも、最終的には、裁判をしてみないと……」。
ということで、当方の予想通り、確定した答えは、「判例に待つ」でした。

ご質問をいただいた方に、このような顚末をお話して、修繕積立金の減額という方向で動かれるようお勧めしました。

今回は、当方には、いい勉強となりましたが、電話代と本代くらいは、請求すればよかったなぁ!!

追伸
平成22年度 行政書士試験 問題1の問題解説について、文中の文字が、「�普通地方公共団体の長は、」と表示されるとの報告をいただきました。
当方のパソコンでは、きちんと「①」と表示されますので、「機種依存文字」のようですね。「①」は、「まるいち」です。

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2010.11.18 Thu l 事務所日記 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題3は、「基本的人権の限界」に関する個数問題でした。

正しい肢の肢ウおよび肢エは、基本判例なのですが、あとの3つは考えなければなりませんでしたね。
個数問題ですので、難しい問題だったかもしれません。

ただ、肢イについては、一定の犯罪者については選挙権が停止されていることは、受験生の常識ですし、また、肢アについては、憲法36条に、わざわざ、「絶対」という文言が入っていることの意味、さらに肢オについては、憲法18条に、わざわざ、「いかなる」という文言が入っていることの意味を考えて欲しかったです。

では、平成22年度 行政書士試験 問題3の解答解説を載せておきます。

問題3 基本的人権の限界に関して、次の文章のような見解が主張されることがある。この見解と個別の人権との関係に関わる次のア~オの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

日本国憲法は、基本的人権に関する総則的規定である13条で、国民の権利については「公共の福祉に反しない限り」国政の上で鍛大の尊重を必要とすると定めている。これは、それぞれの人権規定において個別的に人権の制約根拠や許される制約の程度を規定するのではなく、「公共の福祉」による制約が存する旨を一般的に定める方式をとったものと理解される。 したがって、個別の人権規定が特に制約について規定していない場合でも、「公共の福祉」を理由とした制約が許容される。

ア 憲法36条は、「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」と定めるが、最高裁判例は「公共の福祉」を理由とした例外を許容する立場を明らかにしている。

イ 憲法15条1項は、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と定めるが、最高裁判例はこれを一切の制限を許さない絶対的権利とする立場を明らかにしている。

ウ 憲法21条1項は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定めるが、最高裁判例は「公共の福祉」を理由とした制限を許容する立場を明らかにしている。

エ 憲法21条2項前段は、「検閲は、これをしてはならない」と定めるが、最高裁判例はこれを一切の例外を許さない絶対的禁止とする立場を明らかにしている。

オ 憲法18条は、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」と定めるが、最高裁判例は「公共の福祉」を理由とした例外を許容する立場を明らかにしている。

1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
5 五つ


















問題3 正解 2
ア 誤り
 憲法36条に関し、「公共の福祉」を理由とした例外を許容する立場を明らかにした最高裁判所の判例は存在しない。
 したがって、「最高裁判所は『公共の福祉』を理由とした例外を許容する立場を明らかにしている」との記述は誤りである。
 なお、憲法36条は、公務員による拷問及び残虐な刑罰を禁じているが、多数説は、この禁止は、絶対的禁止であり、「公共の福祉」による例外は許されないと解している。

イ 誤り
 判例 (最大判昭和30年2月9日) は、「国民主権を宣言する憲法の下において、公職の選挙権が国民の最も重要な基本的権利の一であることは所論のとおりであるが、それだけに選挙の公正はあくまでも厳粛に保持されなければならないのであつて、一旦この公正を阻害し、選挙に関与せしめることが不適当とみとめられるものは、しばらく、被選挙権、選挙権の行使から遠ざけて選挙の公正を確保すると共に、本人の反省を促すことは相当であるからこれを以て不当に国民の参政権を奪うものというべきではない。」と判示している。このように、最高裁判所は、選挙権についても、公共の福祉による制約を認めている。
 したがって、「最高裁判所は憲法15条1項を一切の制限を許さない絶対的権利とする立場を明らかにしている」との記述は誤りである。

ウ 正しい
 判例 (最大判昭和32年3月13日―チャタレー事件) は、「上告趣意は、憲法21条の保障する表現の自由が他の基本的人権に関する憲法22条、29条の場合のように制限の可能性が明示されていないから、絶対無制限であり、公共の福祉によつても制限できないものと主張する。しかしながら憲法の保障する各種の基本的人権についてそれぞれに関する各条文に制限の可能性を明示していると否とにかかわりなく、憲法12条、13条の規定からしてその濫用が禁止せられ、公共の福祉の制限の下に立つものであり、絶対無制限のものでないことは、当裁判所がしばしば判示したところである」と判示している。

エ 正しい
 判例 (最大判昭和59年12月12日―税関検査事件) は、「憲法21条2項前段は、『検閲は、これをしてはならない。』と規定する。憲法が、表現の自由につき、広くこれを保障する旨の一般的規定を同条1項に置きながら、別に検閲の禁止についてかような特別の規定を設けたのは、検閲がその性質上表現の自由に対する最も厳しい制約となるものであることにかんがみ、これについては、公共の福祉を理由とする例外の許容 (憲法12条、13条参照) をも認めない趣旨を明らかにしたものと解すべきである。けだし、諸外国においても、表現を事前に規制する検閲の制度により思想表現の自由が著しく制限されたという歴史的経験があり、また、わが国においても、旧憲法下における出版法 (明治26年法律第15号)、新聞紙法 (明治42年法律第41号) により、文書、図画ないし新聞、雑誌等を出版直前ないし発行時に提出させた上、その発売、頒布を禁止する権限が内務大臣に与えられ、その運用を通じて実質的な検閲が行われたほか、映画法 (昭和14年法律第66号) により映画フイルムにつき内務大臣による典型的な検閲が行われる等、思想の自由な発表、交流が妨げられるに至つた経験を有するのであつて、憲法21条2項前段の規定は、これらの経験に基づいて、検閲の絶対的禁止を宣言した趣旨と解されるのである。」と判示している。

オ 誤り
 憲法18条に関し、「公共の福祉」を理由とした例外を許容する立場を明らかにした最高裁判所の判例は存在しない。
 したがって、「最高裁判所は『公共の福祉』を理由とした例外を許容する立場を明らかにしている」との記述は誤りである。

以上により、正しいものは、ウ及びエの二つであるから、正解は2になる。

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2010.11.17 Wed l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験 問題2は、「大陸法系と英米法系の法制度等の差異」に関する問題でした。

きちんと学習をなさっている受験生であれば、ある程度は、分かるかとは思います。
しかし、①罪刑法定主義が大陸法の考え方であり、英米法にはないこと、②附帯私訴の制度についてご存知の方は、少なかったかと思います。
大学の法学部で学ばない限り、一般の資格学校では教えてくれない内容のレベルです(逆に、これらのことを教えてくれたのであれば、よい資格学校に通われていたということになりますね。ただし、そうなると、覚える量が増えすぎますから、良くないとも考えられますね。模試で出題していたと言うことであれば、すごすぎます!!)

以上のように、一見捨て問のように見えますが、肢ウが妥当であることぐらいは、分かりますね。
そうであれば、選択肢との関係で、肢1および肢5は、切ることができますね。
あと、裁判員制度との関連において、肢オが妥当であることまで分かればねぇ?!

では、平成22年度 行政書士試験 問題2の解答解説を載せておきます。
(解答解説に若干手を抜いている点は、ご容赦ください。ちょっと忙しいのです!!)


問題2 世界各国の法体系は、大陸法系と英米法系に分類されることがあるが、大陸法系と英米法系の法制度等の差異に関する次のア~オの記述のうち、妥当でないものの組合せはどれか。

ア 大陸法系の諸国では、一般に法曹養成機関等を修了した者を直ちに裁判官に任用する職業裁判官の制度が採用されている。これに対して、英米法系の諸国では、一般に弁護士の経験を有する者の中から裁判官を選任する法曹一元の制度が採用されている。わが国においては、司法研修所における司法修習を終えた者が直ちに裁判官に任用されるのが通例であるが、弁護士の経験を有する者が裁判官に任用されることもある。

イ 大陸法系の諸国では、ローマ法および教会法の影響を受けて、近代以降に民法典や刑法典等の成文法が整備され、それらの成文法が主要な法源となっている。これに対して、英米法系の諸国では、英国の古米の慣習から発展した判例が主要な法源となっているが、刑法の領域については、罪刑法定主義の観点から、判例を法源とすることは一切認められていない。わが国においても、犯罪は法律により明確に定められていることを要する。

ウ 大陸法系の諸国では、公法と私法の区別が重視され、行政事件を取り扱う特別の裁判所が設置されているのが通例である。これに対して、英米法系の諸国では、公法と私法の区別は重視されず、行政事件も通常の裁判所が裁判を行う。わが国においては、大日本帝国憲法に基づいて行政裁判所が設置されていたが、日本国憲法の施行にともない廃止された。

エ 大陸法系の諸国の裁判では、刑事事件と民事事件が明確に区別される。これに対して、英米法系の諸国では、刑事事件と民事事件が明確に区別されず、刑事裁判において犯罪の被害者等が損害賠償の請求を行う付帯私訴と呼ばれる制度が採用されているのが通例である。わが国においても、近年の刑事司法制度の改革により、特定の犯罪に関して付帯私訴の制度が導入された。

オ 刑事裁判において、大陸法系の諸国では、国民から選任された参審員が裁判官と合議体を構成して裁判を行う参審制度が採用されている場合がある。これに対して、刑事裁判において、英米法系の諸国では、国民から選任された陪審員が事実を認定して評決を行う陪審制度が採用されているのが通例である。わが国の裁判員制度は、裁判員が裁判官と合議体を構成して事実の認定とともに量刑に係る判断に関与することから、英米法系の陪審制度と異なるが、他方で、裁判員は法令の解釈に係る判断に関与しないことから、大陸法系の参審制度とも異なっている。

1 ア・ウ
2 ア・エ
3 イ・エ
4 イ・オ
5 ウ・オ












問題2 正解 3
ア 妥当である
 大陸法系の諸国では、一般に職業裁判官制度 (キャリアシステム) が採られている。これに対して、英米法系の諸国では、法曹一元制度が採られている。この英米法の制度は、13世紀イギリスのエドワード1世が裁判官を選任するに当たって、文官の中から選ばずに、弁護士の指導者の中から任命したことに由来するとされている。

イ 妥当でない
 罪刑法定主義は、大陸法における基本的考え方であり、英米法の考え方ではない。英米法系の諸国においては、制定法によって禁止されていない行為であっても、コモン・ロー上の犯罪であるとして適当な刑罰を科すことが許されている。これは、コモン・ローは、十全な体系として昔から存在するものであり、判例は、それを宣明するものにすぎないという考え方に基づいている。
 なお、「大陸法系の諸国では、ローマ法および教会法の影響を受けて、近代以降に民法典や刑法典等の成文法が整備され、それらの成文法が主要な法源となっている。これに対して、英米法系の諸国では、英国の古米の慣習から発展した判例が主要な法源となっている」ということ、「わが国においても、犯罪は法律により明確に定められていることを要する」という記述は妥当である。

ウ 妥当である

エ 妥当でない
 付帯私訴とは、刑事事件において公訴が提起された場合に、その事件の被害者が受訴裁判所に対して、被告人に対する民事上の損害賠償を請求する訴えも併せて提起する制度をいう。この制度は、ドイツ、イタリア等の大陸法系の諸国において採用されている (なお、フランス法においては、検察官による公訴提起を前提としない私訴の制度が採られている。)。また、わが国においては、旧刑事訴訟法 (大正11年法律第75号) には規定が置かれていた (同法567条~613条) が、現行の刑事訴訟法 (昭和23年法律第131号) には規定が置かれていない。

オ 妥当である

以上により、妥当でないものは、イ及びエであるから、正解は3になる。

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2010.11.16 Tue l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
 行政書士試験の合格基準イ(=行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、満点の40パーセント以上である者。)をクリアされた方の中で、法令等の択一式問題があまりできなかった方は、記述式問題の出来如何になりますね。

 記述式問題の採点基準は、公にされていませんが、当方が数年いろいろ試してみた結果や受験生の話を総合すると、かなり厳しい基準が採られているようです。
 たとえば、1問の中で、求められている事柄が二つあり、そのうちの一つが出来たからといって、半分の点数がもらえるわけではありません。
 部分点はあるようですが、それも雀の涙ほどで、部分点に期待しない方がよいかと思います。

 さて、本年度も、例年通りの厳しい採点基準が採られるかについては、確たることは言えませんが、法令等の択一式問題が若干むずかしめだった分、配慮がなされるのではないかと思います。

具体的にみていくと、

問題44であれば、「処分が違法であることを宣言」「請求を棄却」「事情判決」というキィワードは書いて欲しいところです。一つかけていれば4~6点程度は与えられるかなぁという感じでしょうか。
※ 当方が採点基準を作るのであれば、①キィワード3つに各6点、②問題文と同じ形式(たとえば、「~の主文となり、~と呼ばれる。」または「~の主文となる。~と呼ばれる。」)で記述していることに2点としますね。

問題45であれば、「求償権の確保のため」「あらかじめ代位の付記登記」「抵当権を行使」というキィワードは書いて欲しいところです。問題44と同じく、一つかけていれば4~6点程度は与えられるかなぁという感じでしょうか。
※ 当方が採点基準を作るのであれば、①キィワード3つに各6点、②問題文と同じ形式(たとえば、「~権の確保のために、~を経た上で、権を行使する。」)で記述していることに2点としますね。
※ 「あらかじめ」という部分を書いていない場合、厳しい採点基準であれば、減点されそうですが、問題のレベルおよび本年度の試験の難易から考えると、減点はないと考えます。

問題46であれば、「現実の弁済により損害の塡補を受けさせ」「不法行為の誘発を防止する」というキィワードは書いて欲しいところです。ただ、問題46は、問題44および問題45よりも柔軟に採点される可能性があると思います。法令用語そのものではないですからね。問題の難易度との関係において点数調整が必要なのであれば、この問題において、それがなされる可能性が大です。ですので、これに近い意味が書かれていれば、ある程度点数配分がなされるのではないかと見ています。
※ 当方が採点基準を作るのであれば、キィワード2つに各10点としますね。

 もっとも、ウソを書いた場合、容赦はないでしょうけど……(数年前に採られていた厳しい基準なら即0点)。だって、お客様に誤ったことを言って、それで損害が生じたなら、それは、当然損害賠償の対象になりますし、行政書士への信頼を失いますからね。そんな危険な行政書士を野放しにするほど、世の中は甘くはありません!!

 なお、例年のお節介を書いておきます。
 一昨年度試験を受験なさった方からの報告によると、▼社の無料採点では30点近くついてきたのに、合否通知書には1桁の数字しかついてこなかったそうです。
 当方は、最初から厳しいことを言うようにしています。

追記
■ 余計なことを書いていても、誤りがなければ、部分点はつきます。
ただ、字数との関係で、キィワードを落としてしまうでしょうから、その部分は得点できないことになりますね。

■ 点数は、2点刻みになっているようです。答案用紙の採点欄は、1から10までのマークシートになっていますからね。


【宣伝】
平成23年1月23日14時から2時間ほど、東京法経学院福岡校にて以下の講座のガイダンスを行います。
福岡市周辺の方で、平成23年度 行政書士試験 合格を目指されている方は、ぜひおいでください。
(なお、当方は、3月の行政法から登場の予定)
行政書士 本科(基本講座)'11


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2010.11.15 Mon l 行政書士試験 記述式 l コメント (0) トラックバック (0) l top
今年も、解答解説を行いましょう。

平成22年度 行政書士試験 問題1は、法令用語の問題でした。
「又は」と「若しくは」の使い分けは、基本中の基本ですが、2段階にわたる場合までは、受験生の方もご存知かとは思いますが、それ以上になると、法令を作っている方ぐらいしか知らないでしょうね(この前、話していたら、弁護士20年やってる奴が、最近知ったとか話していたのを思い出しました。)
さすがに、助け舟が出されましたね。
あとは、地方自治法180条の2を分解するだけです。
国語の問題ですから、並列の文章に気をつければ、自ずと正解が導き出せます。
落としてはならない問題でした。

では、平成22年度 行政書士試験 問題1の解答解説を載せておきます。

問題1 法令の用語として「又は」と「若しくは」の用法は、選択される語句に段階がある場合には、段階がいくつあっても、一番大きな選択的接続に「又は」を用い、その他の小さな選択的接続には、「若しくは」を用いる。次の、地方自治法180条の2の条文中の空欄 〔 ア 〕 ~ 〔 オ 〕 に当てはまる接続詞の組合せとして、妥当なものはどれか。

 「普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務の一部を、当該普通地方公共団体の委員会 〔 ア 〕 委員と協議して、普通地方公共団体の委員会、委員会の委員長、委員 〔 イ 〕 これらの執行機関の事務を補助する職員 〔 ウ 〕 これらの執行機関の管理に属する機関の職員に委任し、〔 エ 〕 これらの執行機関の事務を補助する職員 〔 オ 〕 これらの執行機関の管理に属する機関の職員をして補助執行させることができる。但し、政令で定める普通地方公共団体の委員会又は委員については、この限りでない。」

    ア      イ      ウ      エ      オ
1 又は     若しくは   若しくは   又は     若しくは
2 又は     若しくは   若しくは   若しくは   又は
3 若しくは   又は     若しくは   若しくは   又は
4 若しくは   若しくは   又は     若しくは   又は
5 若しくは   又は     若しくは   又は     若しくは







問題1 正解 1
 「又は」と「若しくは」という法令用語は、ともに語句を選択的に結びつける場合に用いる。使い分けは、選択される語句に段階がない場合には、「又は」を用い、選択される語句に段階がある場合には、段階がいくつあっても一番大きな選択的接続に「又は」を用い、その他の小さな選択的接続には、「若しくは」を用いる。
本問の地方自治法180条の2の条文を分解すると、次のようになる。
① 普通地方公共団体の長は、
② その権限に属する事務の一部を、
③ 当該普通地方公共団体の委員会 [ ア ] 委員と協議して、
④ 普通地方公共団体の委員会、委員会の委員長、委員 [ イ 〕これらの執行機関の事務を補助する職員 [ ウ 〕これらの執行機関の管理に属する機関の職員に委任し、[ エ 〕これらの執行機関の事務を補助する職員 [ オ 〕 これらの執行機関の管理に属する機関の職員をして補助執行させることができる。
⑤ 但し、政令で定める普通地方公共団体の委員会又は委員については、この限りでない。

まず、③の文章は、選択される語句に段階がない場合に当たるから、空欄アには、「又は」が入る。
次に、④の文章は、おおきく「普通地方公共団体の委員会、委員会の委員長、委員 [ イ 〕これらの執行機関の事務を補助する職員 [ ウ 〕これらの執行機関の管理に属する機関の職員に委任し」という部分と、「これらの執行機関の事務を補助する職員 [ オ 〕これらの執行機関の管理に属する機関の職員をして補助執行させる」という部分に分けることができるから、選択される語句に段階がある場合に当たる。そして、大きな選択的接続である空欄エには「又は」が入り、その他の小さな選択的接続である空欄ア、イ及びオには、「若しくは」が入る。
以上により、アには「又は」、イには「若しくは」、ウには「若しくは」、エには「又は」、オには「若しくは」が入るから、正解は1になる。

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2010.11.15 Mon l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (1) トラックバック (0) l top
平成22年度 行政書士試験を受験なさった方、お疲れ様でした。
当方も、解答速報をやっていたため、19時45分くらいまでバタバタでした。
それから、福岡市長選挙に行ったのですが、滑り込みセーフでした。
候補者の中に、従兄弟の友人でゴルフを一緒にやった方がいらっしゃったので、ぜひ投票しなければと思い、解答速報を強引に終了させて行ったのですが、残念な結果におわりました。

さて、解答速報の件ですが、既に指摘した問題53を除いて、各社同じ答えになりましたね。
最近は、先行他社に追随する形になっていますが、その先行他社がその後に解答速報を行った会社と異なる解答を見つけたためでしょうか、解答を複数にしたため(たとえば、「1または2」ということです。)、各社混乱したようです。
当方の考えは、当初から肢3ですが、財団法人行政書士試験研究センターから発表される答えはどうなりますやら?!

ザーと解いた感じ、一般知識が難しかったようですね。
基準点の6問をクリアーしている方は、4割程度かもしれませんね。
また、記述式も部分点をきびしく採点すれば、合格率は、5%を切るかもしれません。
ただ、行政書士会関係者の話からすると、主宰者としては、10%を若干切るくらいが理想であるとしているようですから、記述式の採点を若干甘くするかもしれません。
ただ、キーワードが書けていないと、厳しく採点されることは、いつもと変わりないと思いますが……。

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2010.11.15 Mon l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
法令等もやりますか。
1 1
2 3
3 2
4 5
5 3
6 5
7 2
8 2
9 2
10 2
11 3
12 2
13 1
14 3
15 4
16 2
17 4
18 4
19 1
20 5
21 2
22 5
23 2
24 4
25 4
26 3
27 4
28 4
29 3
30 2
31 5
32 1
33 2
34 3
35 3
36 3
37 2
38 4
39 4
40 1
41 ア 18 イ 9 ウ 7 エ 13
42 ア 2 イ 10 ウ 9 エ 1
43 ア 17 イ 8 ウ 6 エ 14
44 処分が違法であることを宣言した上で、請求を棄却する内容の主文となる。事情判決と呼ばれる。(44字)
45 Aに対する求償権の確保のために、あらかじめ代位の付記登記を経た上で、抵当権を行使する。(43字)
46 不法行為の被害者に対し、現実の弁済により損害の填補を受けさせ、不法行為の誘発を防止する(43字)
というところでしょうか。

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2010.11.14 Sun l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
今年も、行政書士試験の解答速報をしましょう。
まずは、一般知識等です
47 5
48 4
49 2
50 4
51 3
52 3
53 3
54 3
55 2
56 1
57 3
58 3
59 4
60 5
ですかね。

問題53は、正解が肢3か肢5かで割れているようですが、
肢3は、出入国管理及び難民認定法61条の2の2第1項1号に規定があり、「本邦にある間に難民となる事由が生じた者にあつては、その事実を知った日から6月を経過した後に在留資格に係る許可の申請を行ったものであるとき」を除き、その者に定住者の在留資格の取得を許可するものとするとなっています。たとえば、日本で政治活動を行って、本国に戻った場合、政治的迫害を受けるような場合が考えられます。
肢5は、難民旅行証明書のことですね。難民旅行証明書は,難民にも海外旅行の道を開こうとするもので,いわゆる外国人旅券としての性格を有していることから,難民条約の締約国により有効な旅行文書と認められ,難民の入国に査証が必要なときは,当該証明書に査証が与えられることとなります。ですので、肢5は、妥当でないこととなります。

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2010.11.14 Sun l 行政書士試験 平成22年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
さぁ、明日は試験ですね。

昨年度も書いたかとは思いますが、試験場では、日頃の学習の成果以上のものは発揮できません。
そうであれば、なるべく、日頃の学習の成果に近いものが発揮できるようにしたいものです。
しかし、悲しいかな、一般に、試験に弱い方がいらっしゃいます。
たとえば、アガリ症の方や試験になると体調を崩される方です。
当方も、その中の一人でした。

ただ、そういう私でも、いくつかの試験に合格しております。
そういうときは、だいたい、「もう十分学習したから、今の自分で大丈夫だ!」と信じるようにしたときでした
(ウソでもいいから、自分に言い聞かせるようにしてください。落ち着きますよ!)。


試験場では、今の自分を信じて試験に臨んでください。
そうすれば、後悔しない受験ができるかと思います。

合格を祈っています!

追伸
1か月程、ブログをサボってしまいましたね。
なんか、書く意欲が涌かない状態で、男の更年期障害でしょうか?!

この間、公民館での講演、青森旅行、相続関係のご相談・ご依頼、マンション関係のご相談、宗教法人の設立のお手伝い、資格学校の講師のご依頼、出版社からの出稿のご依頼を受けました。
現在は、このうちのいくつかを並行的に処理しています。

このうち、アナウンスしておくのは、資格学校の講師のご依頼ですね。
来年度から、東京法経学院福岡校において、日曜日の講師のご依頼をいただき、受けることにしました。

この間、いろいろ考えるところはありましたが、まずは、その方向で動くことにしました。
もう少し、実力を蓄える努力をしようかと思っています。
2010.11.13 Sat l 事務所日記 l コメント (0) トラックバック (0) l top