平成21年度 行政書士試験 問題53は、「日本の生活保護制度」に関する正誤問題でした。
行政書士試験においては、時事的問題が出題されることがありますが、まさに本問は、これに当たります。
行政書士も、生活保護の申請等において、お客様にご助力できますから、「申請に関し、最低限の知識は身につけておいてよ!」というメッセージなのかもしれませんね。
問題自体は、新聞等をきちんと読んでいる方であれば、問題となった事柄ですので、得点できたことでしょうね。
では、平成21年度 行政書士試験 問題53の解答解説を載せておきます。
問題53 日本の生活保護制度に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
1 生活扶助は被保護者の居宅において行うこととされているが、ホームレスなどのように安定した居住地がない場合であっても、保護の申請を行うことは認められている。
2 生活保護法では、生活困窮者に対する最低限度の生活保障が規定されているが、その扶助はすべて現金での給付によるものとされ、財やサービスの現物給付による保障は行われていない。
3 たとえ生活に困窮する高齢者であっても、公的年金の給付を受けている場合には、生活保護の受給権は認められない。
4 生活保護は、世帯ではなく個人を単位とした申請主義をとることとされており、保護を受けるためには、保護を必要とする者が、自ら申請を行わなくてはならない。
5 地方自治体では、被保護者の自立促進を目的とした自立支援プログラムを策定しており、生活習慣改善などの取組が推進されているが、職業訓練や職業紹介などの就労支援は公共職業安定所の役割とされ、これには含まれていない。
問題53 正解 1
1 妥当である
生活保護法30条1項は、「生活扶助は、被保護者の居宅において行うものとする。ただし、これによることができないとき、これによつては保護の目的を達しがたいとき、又は被保護者が希望したときは、被保護者を救護施設、更生施設若しくはその他の適当な施設に入所させ、若しくはこれらの施設に入所を委託し、又は私人の家庭に養護を委託して行うことができる。」と規定している。したがって、「生活扶助は被保護者の居宅において行うこととされている」との記述は妥当である。
また、生活保護は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者又はそのおそれのある者に対して行われる (生活保護法12条~18条)。そして、当該保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる (同法4条1項) 等の制限はあるものの、被保護者に安定した居住地があることは、要件となっていない。したがって、「ホームレスなどのように安定した居住地がない場合であっても、保護の申請を行うことは認められている」との記述は妥当である。
2 妥当でない
生活保護法31条1項は、「生活扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。」と規定している。したがって、「生活保護法では、その扶助はすべて現金での給付によるものとされ、財やサービスの現物給付による保障は行われていない」との記述は妥当でない。
なお、同法3条は、「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。」と規定している。したがって、「生活保護法では、生活困窮者に対する最低限度の生活保障が規定されている」との記述は妥当である。
3 妥当でない
生活保護法4条1項は、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」と規定している。この規定は、他の法律による給付等 (たとえば、各種年金法、雇用保険法、健康保険法、児童扶養手当法、介護保険法等による給付又は手当、老人福祉法、障害者自立支援法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法等による福祉サービス等) を受けることができるとき、貸付金等を利用することができるとき等は、まずその制度を活用することを求めるだけであって、この給付等によっても、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者又はそのおそれのある者については、生活保護を受けることができる。
したがって、「たとえ生活に困窮する高齢者であっても、公的年金の給付を受けている場合には、生活保護の受給権は認められない」との記述は、妥当でない。
4 妥当でない
生活保護法10条は、「保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができる。」と規定している。
したがって、「生活保護は、世帯ではなく個人を単位とした申請主義をとることとされて」いるとの記述は妥当でない。
なお、同法7条は、「保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。」と規定している。したがって、「保護を受けるためには、保護を必要とする者が、自ら申請を行わなくてはならない」という記述は、原則論としては妥当である。
5 妥当でない
厚生労働省は、被保護者 (=現に保護を受けている者) に対する経済的給付に加え、生活保護の実施機関が組織的に生活保護受給世帯の自立を支援する制度に転換することを目的として、2005年度 (平成17年度) から、国が自立支援プログラムの基本方針を定め、地方公共団体がこれに基づき自立支援プログラムを策定・実施していくこととした。ここに自立支援プログラムとは、生活保護の実施機関が管内の生活保護受給世帯全体の状況を把握した上で、生活保護受給者の状況や自立阻害要因について類型化を図り、それぞれの類型毎に取り組むべき自立支援の具体的内容及び実施手順等を定め、これに基づき個々の生活保護受給者に必要な支援を組織的に実施するものをいう。
平成17年に厚生労働省社会・援護局長が出した「平成17年度における自立支援プログラムの基本方針」第3の2では、「平成17年度当初から実施される生活保護受給者等就労支援事業は、公共職業安定所と実施機関との連携により被保護者の就労支援を行うものであり、全ての実施機関において個別支援プログラム (生活保護受給者等就労支援事業活用プログラム) として活用可能な事業であり、実施機関においては、まず本事業の実施に向け早急かつ優先的に取り組むこと。」とされており、この基本指針に基づいて、各地方公共団体では、職業訓練、職業紹介等のの就労支援を取り入れた自立支援プログラムを策定している。
したがって、「地方自治体では、職業訓練や職業紹介などの就労支援は公共職業安定所の役割とされ、自立支援プログラムには含まれていない」との記述は妥当でない。
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