平成17年度 行政書士試験 問題5は、「衆参両院の議事運営」に関する正誤問題でした。
肢1の憲法知識があるかどうかが決め手でしたね(肢2~肢4は基礎知識の範疇です)。ただ、肢5の問題文が若干不適切であることと、問われた内容が難しかったため、確実に正解肢を導くことは難しかったかもしれません。
なお、問題文の肢5の「衆参両院の会期」という表現はおかしいと思います。なぜなら、「会期」とは、国会が活動能力を有している期間のことですからね。もし、衆参両院の活動が同時に行われる旨を表現したいのであれば、「衆参両院の活動は同一であり」とすべきですね。
また、市販の過去問も、その解説には、かなり苦労していますね。
いろいろな書き方が可能ですが、解説になっていないもの、解説は書かれているが、問いにきちんと答えていないもの等があります。
過去問を選択する上で、試金石となる問題になったようですね。
では、平成17年度 行政書士試験 問題5の解答解説を載せておきます。
問題5 次の衆参両院の議事運営に関する記述のうち、正しいものはどれか。
1 日本国憲法は、議事運営につき、戦前の議院法に相当する国会法の制定を予定しているが、法律の定めていない細則については、各議院の議院規則にゆだねられている。
2 政府委員の制度は、日本国憲法の下では、国会法上の存在にとどまり憲法の予定するところではなかったが、戦前からの伝統を受け継ぎ今日まで維持されている。
3 日本国憲法は「両議院は、国民より提出された請願書を受けることができる。」と定めるにとどまるが、いわゆる請願権を憲法上の権利と解するのが通説である。
4 日本国憲法は「会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。」とするが、各議院の議決で付託され閉会中に審査した案件は、後会に継続するのが慣例である。
5 衆参両院の会期は同一であり、衆議院の側の事情によって行われた閉会、会期の延長は、参議院の活動能力をも左右することになる。
問題5 正解 5
1 誤り
大日本帝国憲法51条は、「両議院ハ此ノ憲法及議院法ニ掲クルモノノ外内部ノ整理ニ必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ得」と規定し、議事運営につき、議院法の存在を予定し、法律 (議院法) の定めていない細則については、各議院の議院規則にゆだねていた。これに対し、日本国憲法は、同法58条2項本文において、両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定めることができると規定するのみで、議院法に相当する国会法の制定を予定していない。
■ しかし、実際には、昭和22年に国会法が制定され、しかもそこには、議院規則の所管とされている議院の内部の規律に関する事項も定められたため、国会法と議院規則とが矛盾・抵触した場合の効力関係をいかに考えるべきかという問題が生じた。この点につき、多数説は、①法律と議院規則は所管を競合し、②両者が矛盾・抵触する場合は、法律が優位すると解している (法律優位説)。
2 誤り
政府委員の制度は、日本国憲法には規定が置かれていなかったが、国会法69条に定めが置かれていた。したがって、「政府委員の制度は、日本国憲法の下では、国会法上の存在にとどまり憲法の予定するところではなかった」との記述は正しい。
しかし、国会における審議を活性化するとともに、国の行政機関における政治主導の政策決定システムを確立するため、国家基本政策委員会の設置及び政府委員制度の廃止並びに副大臣等の設置等について定めた国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律により、政府委員の制度は、1999 (平成11) 年に廃止された。したがって、「戦前からの伝統を受け継ぎ今日まで維持されている」との記述は誤っている。
■ 国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律の主な内容は、次のとおりである。
(1) 国家基本政策委員会の設置
・2000 (平成12) 年の通常国会から衆参両院に常任委員会として設置。
・内閣総理大臣 (与党党首) と野党党首が個別の法案についてではなく国の基本政策について討論する委員会。
・委員会は、衆参両院の合同審査会として行う。
(2) 政府委員制度の廃止と政務次官の増員
・第146回国会 から、政府委員制度を廃止するとともに、政務次官を増員 (24人→32人)。
・内閣官房副長官及び政務次官は、内閣総理大臣その他の国務大臣を補佐するため、議院の会議又は委員会に出席することができる。
・人事院総裁、内閣法制局長官、公取委員長等を、内閣は、両議院の議長の承認を得て、政府特別補佐人として議院の会議又は委員会に出席させることができる。
※ なお、同時に衆議院規則が一部改正され、委員会は、行政に関する細目的又は技術的事項について審査又は調査を行う場合において、必要があると認めるときは、政府参考人の出頭を求め、その説明を聴く旨が定められた。
(3) 副大臣及び大臣政務官の設置
3 誤り
日本国憲法16条は、「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」と規定している。このように、請願権は、憲法上の権利である。
なお、日本国憲法には、「両議院は、国民より提出された請願書を受けることができる。」との規定は存在しない。
4 誤り
日本国憲法には、「会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。」との規定は存在しない。
なお、国会法68条は、「会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。但し、第47条第2項の規定により閉会中審査した議案及び懲罰事犯の件は、後会に継続する。」と規定し、会期不継続の原則について定めている。
5 正しい
日本国憲法は、衆議院及び参議院の両議院で国会を構成し (二院制 (両院制)。同法42条)、両議院は、原則として、一つの国会として同時に活動することとしている (両議院同時活動の原則)。たとえば、同法54条2項本文は、「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。」と規定している。このため、衆議院の側の事情によって行われた閉会 (たとえば、衆議院の解散) 、国会の会期の延長は、参議院の活動の力をも左右する。
なお、国会法12条1項は、「国会の会期は、両議院一致の議決で、これを延長することができる。」と規定し、同法13条は、「前2条の場合において、両議院の議決が一致しないとき、又は参議院が議決しないときは、衆議院の議決したところによる。」と規定し、国会の会期の延長について衆議院の優越を認めているから、衆議院の側の事情によって、国会の会期が延長されることがある。
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肢1の憲法知識があるかどうかが決め手でしたね(肢2~肢4は基礎知識の範疇です)。ただ、肢5の問題文が若干不適切であることと、問われた内容が難しかったため、確実に正解肢を導くことは難しかったかもしれません。
なお、問題文の肢5の「衆参両院の会期」という表現はおかしいと思います。なぜなら、「会期」とは、国会が活動能力を有している期間のことですからね。もし、衆参両院の活動が同時に行われる旨を表現したいのであれば、「衆参両院の活動は同一であり」とすべきですね。
また、市販の過去問も、その解説には、かなり苦労していますね。
いろいろな書き方が可能ですが、解説になっていないもの、解説は書かれているが、問いにきちんと答えていないもの等があります。
過去問を選択する上で、試金石となる問題になったようですね。
では、平成17年度 行政書士試験 問題5の解答解説を載せておきます。
問題5 次の衆参両院の議事運営に関する記述のうち、正しいものはどれか。
1 日本国憲法は、議事運営につき、戦前の議院法に相当する国会法の制定を予定しているが、法律の定めていない細則については、各議院の議院規則にゆだねられている。
2 政府委員の制度は、日本国憲法の下では、国会法上の存在にとどまり憲法の予定するところではなかったが、戦前からの伝統を受け継ぎ今日まで維持されている。
3 日本国憲法は「両議院は、国民より提出された請願書を受けることができる。」と定めるにとどまるが、いわゆる請願権を憲法上の権利と解するのが通説である。
4 日本国憲法は「会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。」とするが、各議院の議決で付託され閉会中に審査した案件は、後会に継続するのが慣例である。
5 衆参両院の会期は同一であり、衆議院の側の事情によって行われた閉会、会期の延長は、参議院の活動能力をも左右することになる。
問題5 正解 5
1 誤り
大日本帝国憲法51条は、「両議院ハ此ノ憲法及議院法ニ掲クルモノノ外内部ノ整理ニ必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ得」と規定し、議事運営につき、議院法の存在を予定し、法律 (議院法) の定めていない細則については、各議院の議院規則にゆだねていた。これに対し、日本国憲法は、同法58条2項本文において、両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定めることができると規定するのみで、議院法に相当する国会法の制定を予定していない。
■ しかし、実際には、昭和22年に国会法が制定され、しかもそこには、議院規則の所管とされている議院の内部の規律に関する事項も定められたため、国会法と議院規則とが矛盾・抵触した場合の効力関係をいかに考えるべきかという問題が生じた。この点につき、多数説は、①法律と議院規則は所管を競合し、②両者が矛盾・抵触する場合は、法律が優位すると解している (法律優位説)。
2 誤り
政府委員の制度は、日本国憲法には規定が置かれていなかったが、国会法69条に定めが置かれていた。したがって、「政府委員の制度は、日本国憲法の下では、国会法上の存在にとどまり憲法の予定するところではなかった」との記述は正しい。
しかし、国会における審議を活性化するとともに、国の行政機関における政治主導の政策決定システムを確立するため、国家基本政策委員会の設置及び政府委員制度の廃止並びに副大臣等の設置等について定めた国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律により、政府委員の制度は、1999 (平成11) 年に廃止された。したがって、「戦前からの伝統を受け継ぎ今日まで維持されている」との記述は誤っている。
■ 国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律の主な内容は、次のとおりである。
(1) 国家基本政策委員会の設置
・2000 (平成12) 年の通常国会から衆参両院に常任委員会として設置。
・内閣総理大臣 (与党党首) と野党党首が個別の法案についてではなく国の基本政策について討論する委員会。
・委員会は、衆参両院の合同審査会として行う。
(2) 政府委員制度の廃止と政務次官の増員
・第146回国会 から、政府委員制度を廃止するとともに、政務次官を増員 (24人→32人)。
・内閣官房副長官及び政務次官は、内閣総理大臣その他の国務大臣を補佐するため、議院の会議又は委員会に出席することができる。
・人事院総裁、内閣法制局長官、公取委員長等を、内閣は、両議院の議長の承認を得て、政府特別補佐人として議院の会議又は委員会に出席させることができる。
※ なお、同時に衆議院規則が一部改正され、委員会は、行政に関する細目的又は技術的事項について審査又は調査を行う場合において、必要があると認めるときは、政府参考人の出頭を求め、その説明を聴く旨が定められた。
(3) 副大臣及び大臣政務官の設置
3 誤り
日本国憲法16条は、「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」と規定している。このように、請願権は、憲法上の権利である。
なお、日本国憲法には、「両議院は、国民より提出された請願書を受けることができる。」との規定は存在しない。
4 誤り
日本国憲法には、「会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。」との規定は存在しない。
なお、国会法68条は、「会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。但し、第47条第2項の規定により閉会中審査した議案及び懲罰事犯の件は、後会に継続する。」と規定し、会期不継続の原則について定めている。
5 正しい
日本国憲法は、衆議院及び参議院の両議院で国会を構成し (二院制 (両院制)。同法42条)、両議院は、原則として、一つの国会として同時に活動することとしている (両議院同時活動の原則)。たとえば、同法54条2項本文は、「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。」と規定している。このため、衆議院の側の事情によって行われた閉会 (たとえば、衆議院の解散) 、国会の会期の延長は、参議院の活動の力をも左右する。
なお、国会法12条1項は、「国会の会期は、両議院一致の議決で、これを延長することができる。」と規定し、同法13条は、「前2条の場合において、両議院の議決が一致しないとき、又は参議院が議決しないときは、衆議院の議決したところによる。」と規定し、国会の会期の延長について衆議院の優越を認めているから、衆議院の側の事情によって、国会の会期が延長されることがある。
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