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平成20年度 行政書士試験 問題32は、「売買」に関する事例問題でした。

基本的には、問題31と同様に、当てはめで悩むことはほとんどなく、規範部分の判例を知っているかを問う問題でした。
本問で問われた判例は、かなり高度な部類に属するもので、司法試験で出題されてもおかしくない問題でした。ですから、本問は、正解すればラッキー程度に思っておいた方が良いと思います。
なお、問題31と同様、本問についても、判例の理由付けの部分は割愛していますが、本年度行政書士試験を受けられる方は、その理由付けについても、裁判所のホームページや判例集(おそらく、有斐閣の判例百選位にはのっているかも。小生の作っている六法には当然載せる予定です。)を立ち読むので結構ですから、フォローしておくことをおすすめします。

では、平成20年度 行政書士試験 問題32の解答解説を載せておきます。

問題32 AがBに対して自己所有の家屋を売る契約をした場合に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当でないものはどれか。

1 Aが当該家屋をBに引き渡すまでの間は善管注意義務をもって当該家屋を保存・管理しなければならないので、Aの履行遅滞中に不可抗力で当該家屋が滅失してもAが善管注意義務を尽くしていれば責任を負わない。

2 Bが登記を備える前に、AがCに対して当該家屋を二重に売ってしまった場合、CがBより先に仮登記を備えたときでも、AのBに対する債務は未だ履行不能とはならない。

3 Bが登記を備える前に、AがBへの譲渡を知っているDに対して当該家屋を二重に売ってしまい、登記を移転してしまった場合、Bは、それだけではDに対して債権侵害を理由とする不法行為責任を追及できない。

4 Bが登記を備える前に、AがBへの譲渡を知らないEに対して当該家屋を二重に売ってしまい、登記を移転してしまった場合、BがAに対して履行不能による損害賠償を請求するときは、価格が騰貴しつつあるという特別の事情があれば、転売・処分の可能性がなくても、騰貴前に処分したことが予想されない限り、騰貴した現在の価格を特別損害とすることができる。

5 Bが登記を備える前に、Aが、Bを害することを知っているFと通謀して当該家屋をFに対して代物弁済し、登記を移転してしまった場合、Aがその結果無資力となれば、Bは、A・F間の代物弁済を、詐害行為を理由に取り消すことができる。



問題32 正解 1
1 妥当でない。
 判例 (大判明治39年10月29日)は、債務者が履行遅滞の状態にある間に不能となれば、たとえそれが不可抗力による場合でも、なお、原則として、債務者の責めに帰すべき履行不能になるとしている。
 したがって、Aの履行遅滞中に不可抗力で当該家屋が滅失した場合において、Aが善管注意義務を尽くしていたときでも、Aは履行不能の責任を負う。

2 妥当である。
 判例 (最判昭和46年12月16日)は、不動産所有者 (Y) がある者 (X) に対して不動産を売り渡した場合において、所有権移転登記未了の間に、その不動産につき、第三者 (Z) のために売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記がなされたというだけでは、いまだYのXに対する売買契約上の義務の履行が不能になったと解することはできないとしている。
 したがって、Bが登記を備える前に、AがCに対して当該家屋を二重に売ってしまった場合、CがBより先に仮登記を備えたときでも、AのBに対する債務は未だ履行不能とはならない。
※ なお、判例の事案は、債務不履行解除の事案である。

3 妥当である。
 判例 (最判昭和30年5月31日)は、ある者 (Y) が不動産所有者 (X) からその所有する不動産を買い受けて登記を経ないうちに、第三者 (Z) がXから当該不動産を二重に買い受けて登記を移転してしまった場合において、Zがその買受当時XY間の売買の事実を知っていたというだけでは、ZはYに対し不法行為責任を負わないとしている。
 したがって、Bが登記を備える前に、AがBへの譲渡を知っているDに対して当該家屋を二重に売ってしまい、登記を移転してしまった場合、Bは、それだけではDに対して債権侵害を理由とする不法行為責任を追及できない。

4 妥当である。
 判例 (最判昭和37年11月16日)は、債務の目的物を債務者が不法に処分し、債務が履行不能となった場合に、債権者の請求しうる損害賠償の額は、原則として、その処分当時の目的物の時価であるが、目的物の価格が騰貴しつつあるという特別の事情があり、かつ、債務者が債務を履行不能とした際その特別の事情を知っていたか又は知り得た場合は、債権者はその騰貴した現在の時価による損害賠償を請求しうるとした上で、債権者が当該価格まで騰貴しない前に目的物を他に処分したであろうと予想された場合はこの限りでなく、また、目的物の価格が一旦騰貴しさらに下落した場合に、その騰貴した価格により損害賠償を求めるためにはその騰貴した時に転売その他の方法により騰貴価格による利益を確実に取得したのであろうと予想されたことが必要であると解するとしても、目的物の価格が現在なお騰貴している場合においてもなお、あたかも現在において債権者がこれを他に処分するであろうと予想されたことは必ずしも必要でないとしている。
 したがって、Bが登記を備える前に、AがBへの譲渡を知らないEに対して当該家屋を二重に売ってしまい、登記を移転してしまった場合、BがAに対して履行不能による損害賠償を請求するときは、価格が騰貴しつつあるという特別の事情があれば、転売・処分の可能性がなくても、騰貴前に処分したことが予想されない限り、騰貴した現在の価格を特別損害とすることができる。

5 妥当である。
 判例 (最大判昭和36年7月19日)は、本選択肢と同様の事案において、詐害行為取消権は、総債権者の共同担保の保全を目的とする制度であるが、特定物引渡請求権といえどもその目的物を債務者が処分することにより無資力となった場合には、特定物債権者は、処分行為を詐害行為として取り消すことができるとしている。
 したがって、特定物債権者Bが登記を備える前に、Aが、Bを害することを知っているFと通謀して当該家屋をFに対して代物弁済し、登記を移転してしまった場合、Aがその結果無資力となれば、Bは、A・F間の代物弁済を、詐害行為を理由に取り消すことができる。
※ なお、判例 (大判大正8年7月11日)は、不動産を相当価格で代物弁済にあてた事例につき、代物弁済は債務の本旨に従った履行ではないから、債務者はこれをなすか否かはその自由であり、それにより共同担保を減少することは詐害行為になるとしている。

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2009.01.31 Sat l 行政書士試験 平成20年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
今日は、午前中に天神へ挨拶状の封筒などを購入しに行った他は、作問の校正をしていました。こちらは、もう文字校正レベルなので、結構スイスイやれています(100頁程度なので、10時間程度で終わりそうです)。
もう一本、出版社から仕事の依頼を受けたのですが、こちらは、かなり高度な内容のため、必死で勉強しています。しかも、締切期日が来週末と非常にきつい仕事です。
でも、行政書士をはじめて10日程度が経ちますが、何ら依頼がない以上、別の仕事で稼がざろう得ず、能力一杯の仕事でも、ありがたくやらせていただいている次第です。
明日は、朝一で、本屋へ直行する予定です。
さて、午前1時になったので、この辺で帰宅します。では、おやすみなさい。

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2009.01.31 Sat l 事務所日記 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成20年度 行政書士試験 問題31は、「抵当権」に関する事例問題でした。
当てはめ(=規範を事例に当てはめることであり、解説の「したがって」以下の部分をいう。)で苦労することはほとんどなく、規範となる条文・判例をきちんと覚えているかを問う問題でした。

規範となる条文・判例は、基本知識のレベルであり、得点すべき問題でした。

では、平成20年度 行政書士試験 問題31の解答解説を載せておきます。



問題31 AはBに金銭を貸し付け、この貸金債権を担保するためにB所有の土地の上に建っているB所有の建物に抵当権の設定を受けて、その登記を備えた。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。

1 Aの抵当権が実行された場合、抵当権設定時に建物内に置いていたB所有の家電製品のテレビには抵当権の効力は及ばない。

2 抵当権設定時にB所有の土地の登記名義はCであった場合でも、抵当権実行により買受人Dのために法定地上権が成立する。

3 抵当権設定登記後にBが同抵当建物をEに賃賃した場合、BのAに対する債務不履行後に生じた賃料について抵当権の効力が及ぶので、抵当権の実行としてAはこの賃料から優先的に弁済を受けることができる。

4 抵当権設定登記後にBが同抵当建物をFに賃賃した場合、対抗要件を備えた短期の賃貸借であっても、賃借人Fは抵当権実行による買受人Gに対抗できない。

5 抵当権設定登記後にBが同抵当建物をHに賃貸してHがその旨の登記を備えた場合、抵当権実行による買受人Iからの明渡請求に対して、賃借人Hは、明渡しまでの使用の対価を支払うことなく、6ヶ月の明渡猶予期間を与えられる。



問題31 正解 5
1 正しい。
 判例 (大連判大正8年3月15日)は、建物に抵当権を設定したときは、反対の意思表示がない限り、抵当権の効力は、抵当権設定当時建物の常用のためこれに附属せしめられた債務者所有の動産にも及び、これらの物は、建物とともに抵当権の目的の範囲に属すると解すべきであるとしている。ここに「建物の常用のために附属せしめられた」とは、たとえば、畳、建具等がこれに当たるが、家電製品のごときは、一般的にこれに含まれないと解される。
 したがって、Aの抵当権が実行された場合、抵当権設定時に建物内に置いていたB所有の家電製品のテレビには、抵当権の効力は及ばない。

2 正しい。
 判例 (最判昭和53年9月29日)は、ある者 (Y) が第三者 (Z) からその所有する土地及びその地上建物を譲り受け、その後譲受人 (Y) が建物につき抵当権を設定した場合において、その当時、土地については譲渡人 (Z) から所有権移転登記を経由していなかったときでも、抵当権の実行により建物を競落した者は、法定地上権を取得するとしている。
 したがって、抵当権設定時にB所有の土地の登記名義はCであった場合でも、抵当権実行により買受人Dのために法定地上権が成立する。

3 正しい。
 民法371条は、「抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。」としている。
 したがって、抵当権設定登記後にBが同抵当建物をEに賃賃した場合、BのAに対する債務不履行後に生じた賃料について抵当権の効力が及ぶので、抵当権の実行としてAはこの賃料から優先的に弁済を受けることができる。

4 正しい。
 抵当権の設定登記後において当該不動産の利用権 (賃借権を含む) を取得した者は、原則として、抵当権者及び当該不動産の買受人に対抗することができない。ただし、登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができ (民法387条1項) 、この場合、当該不動産の買受人にも対抗することができる。
 本選択肢では、賃借人Fが前記例外となる要件を備えたという事情は存在しない。
 したがって、抵当権設定登記後にBが同抵当建物をFに賃賃した場合、対抗要件を備えた短期の賃貸借であっても、賃借人Fは抵当権実行による買受人Gに対抗できない。
※ 平成15年法律第134号による改正前の民法においては、短期賃貸借 (=民法602条に定めた期間を超えない賃貸借) は、抵当権の登記後に登記したものであっても、この権利を抵当権者に対抗することができた (平成15年法律第134号による改正前の民法395条)。

5 誤り。
 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって、①競売手続の開始前から使用又は収益をする者、②強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者 (①及び②をあわせて、「抵当建物使用者」という。) は、その建物の競売における買受人の買受けの時から6箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない (民法395条1項) が、買受人の買受けの時より後に建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその1箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、民法395条1項の規定は適用されない (民法395条2項)。
 したがって、抵当権設定登記後にBが同抵当建物をHに賃貸してHがその旨の登記を備えた場合、抵当権実行による買受人Iからの明渡請求に対して、賃借人Hは、明渡しまでの使用の対価を支払うことなく、6ヶ月の明渡猶予期間を与えられるわけではない。

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2009.01.30 Fri l 行政書士試験 平成20年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
昨日も、事務所日記を落としてしまいました。
作問の校正を行っていて、いつの間にか午前2時になり、これから書くと……。
自転車で帰ったのですが、今日の夜中は暖かかったですねぇ。

昨日は、前日と同様、公民館周りと、ご近所の知り合いのところにご挨拶に行ってきました。
公民館では、「この地区の法律的弱者を救済しよう」というスタンスより、私の場合、「遺言書の書き方教室なんかはいかがですか」という積極的方向が良いように感じました。そこから、個人的信頼関係を築いた方が、最終的結果につながりそうです。

ご近所の知り合いの方とお話してきました。
不動産関係のお仕事ですが、今はぎりぎりの予算で頼み込んでくる方が多いそうです。たとえば、現在住んでいるところの敷金が戻れば、予算が合うという感じです。
リーマンショック以来、市井の状況は厳しさを増すばかりのようです。

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2009.01.30 Fri l 事務所日記 l コメント (0) トラックバック (0) l top
最高裁判所は、永らく休暇に入っていたので、最近判例チェックを怠っていたのです(というより、それどころではなく忙しかったというのが事実でしょう)が、重要な判例(最決平成21年1月15日)が出されました。
判例を読むための、前知識と知っておかなければならないのは、次の点です。

①行政文書の開示請求があった場合、行政機関の長は、開示請求に係る行政文書が不開示情報に当たらない限り、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければなりません(行政機関情報公開法5条)

②この開示・不開示の決定に不服がある者は、行政不服審査法に基づく不服申立て又は裁判所に対して情報公開訴訟を提起することになります。
なお、行政不服審査法に基づく不服申立てにおいては、不服申立てに対する裁決又は決定をすべき行政機関の長は、原則として、情報公開・個人情報保護審査会に諮問をしなければならず(行政機関情報公開法18条)、情報公開・個人情報保護審査会においては、インカメラ審理(情報公開・個人情報保護審査会だけが文書等を直接見分する方法により行われる非公開の審理)が可能です(情報公開・個人情報保護審査会設置法9条)。

今回の判例は、②の裁判所に対する情報公開訴訟に関するものです。
裁判所が、インカメラ審理を行うことができるかどうかが争点となりましたが、最高裁判所は、これを許しませんでした。
その理由は、現行法は、情報公開訴訟において裁判所が不開示事由該当性を判断するために証拠調べとしてインカメラ審理を行うことを許していないと解されるということにあります。
この理由付けを導くために、民事訴訟の原則や民事訴訟法の規定などをあげていますが、話が長くなるので、これについては割愛します。

ただ、そうなると、困った事態が生じます。これについては、原決定が「当該文書を所持する国又は公共団体等の任意の協力が得られない以上,およそ裁判所がこれを直接見分する術はないというのでは,裁判所は,事実上,一方当事者である国又は公共団体,あるいはその諮問機関である情報公開・個人情報審査会等の意見のみに依拠してその是非を判断せざるを得ないということにもなりかねず,これでは,行政文書の開示・不開示に関する最終的な判断権を裁判所に委ねた制度趣旨にもとること甚だしいものがある。」と述べています(なお、原決定は、裁判所が、インカメラ審理を行うことを認めました)。

そこで、立法的解決が求められるわけですが、裁判の公開(憲法82条)との関係で、問題を生じます。
この点について、二人の裁判官は、「新たな立法によって情報公開訴訟にインカメラ審理を導入することは,裁判の公開を保障する憲法82条に違反するものではない」との補足意見を述べています。

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2009.01.29 Thu l 行政書士試験 重要判例 l コメント (0) トラックバック (0) l top
 平成20年度 行政書士試験 問題30は、「土地の不法占有者に対する土地所有者及び賃借人の法的対応」を問う問題でした。
 
 このような事例問題は、論理的思考を問うという問題のように一見すると見えるかもしれませんが、規範部分は完全な知識問題であり、知識問題が目先を代えて出題されたにすぎません。したがって、規範部分の条文や判例の知識があるかどうかがこの問題を解く分かれ目になります。

 選択肢すべてについて、基本的条文や判例の問題であり、得点すべき問題でした。

 では、平成20年度 行政書士試験 問題30の解答解説を載せておきます。


問題30 Aは、自己所有の土地につき、Bとの間で賃貸借契約を締結した (賃借権の登記は未了) 。AがBにこの土地の引渡しをしようとしたところ、この契約の直後にCがAに無断でこの土地を占拠し、その後も資材置場として使用していることが明らかとなった。Cは明渡請求に応ずる様子もないため、AとBは、Cに対して次のア~オの法的対応を検討している。これらの対応のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア Aが、Cの行為を不法行為として損害賠償請求をすること。

イ Aが、自己の土地所有権に基づき土地明渡請求をすること。

ウ Bが、自己の不動産賃借権に基づき土地明渡請求をすること。

エ Bが、占有回収の訴えに基づき土地明渡請求をすること。

オ Bが、AがCに対して行使することができる、所有権に基づく土地明渡請求権を代位行使すること。

1 ア・イ・オ
2 ア・ウ・エ
3 イ・ウ・エ
4 イ・エ・オ
5 ウ・エ・オ



問題30 正解 1
ア 妥当である。
 Cは、A所有土地を不法占拠し、Aが当該土地を使用・収益することを妨げているから、Aは、Cの行為を不法行為として損害賠償請求をすることができる。

イ 妥当である。
 民法は、占有訴権とは別個に本権の訴えを予定している (民法202条1項参照) から、土地所有者は、自己の土地所有権に基づいて当該土地の明渡しを請求することができる。
 したがって、Aは、自己の土地所有権に基づき土地明渡請求をすることができる。

ウ 妥当でない。
 判例 (最判昭和28年12月18日等) は、不動産賃借権が対抗要件を備えた場合には、不動産賃借権に基づく妨害排除請求をすることができるとした上で、不動産賃借権が対抗要件を備えた場合として、民法605条に基づいて不動産賃借権を登記した場合等をあげている。
 本問のBは、単にAとの間で、A所有の土地につき、賃貸借契約を締結したにとどまる (賃借権の登記は未了) から、不動産賃借権が対抗要件を備えた場合にあたらない。
 したがって、Bは、自己の不動産賃借権に基づいて土地明渡請求をすることができない。
※ 債権は、原則として、排他性を有しない。不動産賃借権も債権の一つであるが、その財産としての重要性、登記により公示が可能等の理由から、不動産賃借権については、これを登記することにより、対抗力を付与することとしている (民法605条)。

エ 妥当でない。
 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる (民法200条1項) が、Bは、未だAから占有物の引渡し (182条1項) を受けていないから、占有を奪われたとはいえない。
 したがって、Bは、占有回収の訴えに基づき土地明渡請求をすることはできない。

オ 妥当である。
 判例 (最判昭和29年9月24日) は、建物の賃借人が、その賃借権を保全するため賃貸人たる建物所有者に代位して建物の不法占拠者に対し、その明渡しを請求する場合には、直接自己に対してその明渡しをなすべきことを請求することができる、としている。
 したがって、Bは、AがCに対して行使することができる、所有権に基づく土地明渡請求権を代位行使することができる。

以上により、妥当なものはア、イ及びオであるから、正解は1になる。

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2009.01.29 Thu l 行政書士試験 平成20年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
 今日は、午前中、平成20年度 行政書士試験 問題29を書いた後、青色申告の本を若干読んでから、昼食を自宅に取りに戻った。
 午後は、まず挨拶まわり用の手土産を仕入れ、自転車で近所の公民館を数件回った。
 公的な機関だけに、完全シャットアウトかとの危惧はあったが、「地域の法律的弱者の方を救済しよう」的な共通目標を掲げることが功を奏したかは分からないが、名刺とご挨拶の封筒は受け取ってもらった。当然のことといえば当然だが、手土産はシャットアウトであった。ある意味、法治国家である日本の現状に安堵した次第である。

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2009.01.28 Wed l 事務所日記 l コメント (0) トラックバック (0) l top
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2009.01.28 Wed l 行政書士実務本 l コメント (0) トラックバック (1) l top
平成20年度 行政書士試験 問題29は、「不動産物権変動と第三者」に関する問題でした。

詐欺取消し、契約の解除、合意解除が問題となっていますが、合意解除以外の判例は、基本的知識として知っておくべき判例でしたから、得点すべき問題でした。

では、平成20年度 行政書士試験 問題29の解答解説を載せておきます。


問題29 A・Bが不動産取引を行ったところ、その後に、Cがこの不動産についてBと新たな取引関係に入った。この場合のCの立場に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当でないものはどれか。

1 AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売したところ、AがBの詐欺を理由に売買契約を取り消した場合に、Cは善意であれば登記を備えなくても保護される。

2 AからBに不動産の売却が行われた後に、AがBの詐欺を理由に売買契約を取り消したにもかかわらず、Bがこの不動産をCに転売してしまった場合に、Cは善意であっても登記を備えなければ保護されない。

3 AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売したところ、Bに代金不払いが生じたため、AはBに対し相当の期間を定めて履行を催告したうえで、その売買契約を解除した場合に、Cは善意であれば登記を備えなくても保護される。

4 AからBに不動産の売却が行われたが、Bに代金不払いが生じたため、AはBに対し相当の期間を定めて履行を催告したうえで、その売買契約を解除した場合に、Bから解除後にその不動産を買い受けたCは、善意であっても登記を備えなければ保護されない。

5 AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売したところ、A・Bの取引がA・Bにより合意解除された場合に、Cは善意であっても登記を備えなければ保護されない。



問題29 正解 3
1 妥当である。
 判例 (最判昭和49年9月26日)は、民法96条1項、3項は、詐欺による意思表示をした者に対し、その意思表示の取消権を与えることによって詐欺被害者の救済を図るとともに、他方その取消しの効果を「善意の第三者」との関係において制限することにより、当該意思表示の有効なことを信頼して新たに利害関係を有するに至った者の地位を保護しようとする趣旨の規定であるとした上で、この第三者の範囲は、同条項のこのような立法趣旨に照らして合理的に画定されるべきであって、必ずしも、所有権その他の物権の転得者で、かつ、これにつき対抗要件を備えた者に限定しなければならない理由は見出し難いとしている。
 したがって、Cは善意であれば登記を備えなくても保護される。

2 妥当である。
 判例 (大判昭和17年9月30日)は、民法96条3項の「第三者」とは、取消前から既に法律行為の効力について利害関係を有する第三者に限定して解すべく、取消後において始めて利害関係を有するに至った第三者は、たとえその利害関係発生当時詐欺及び取消しの事実を知らなかったとしても同条項の適用を受けないが、同条項の適用がないからといって、直ちにそのような第三者に対しては取消しの結果を無条件に対抗しうるものとすることはできないとした上で、本件売買の詐欺取消しにより、土地所有権は売主に復帰し、初めから買主に移転しなかったものとなるが、この物権変動は民法177条により登記をしなければ、第三者に対抗できないとしている。
 したがって、Cは善意であっても登記を備えなければ保護されない。

3 妥当でない。
 判例 (大判大正10年5月17日)は、解除前の第三者が保護されるためには、登記がなければならない、としている。
 したがって、Cは、善意であっても登記を備えなければ保護されない。

4 妥当である。
 判例 (最判昭和35年11月29日)は、不動産を目的とする売買契約に基づき買主のため所有権移転登記があった後、売買契約が解除され、不動産の所有権が売主に復帰した場合でも、売主はその所有権取得の登記を了しなければ、解除後に買主から不動産を取得した第三者に対し、所有権の復帰をもって対抗できないのであって、この場合、第三者が善意であると否とにかかわらないとしている。
 したがって、Cは、善意であっても登記を備えなければ保護されない。

5 妥当である。
 判例 (最判昭和33年6月14日) は、いわゆる遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法五四五条一項但書の明定するところである。合意解約は、民法545条にいう契約の解除ではないが、それが契約の時にさかのぼって効力を有する趣旨であるときは、当該契約の解除の場合と別異に考えるべき何らの理由もないから、合意解約についても第三者の権利を害することを得ないとした上で、しかしながら、いずれの場合においてもその第三者が不動産の所有権を取得した場合は、その所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであって、もし当該登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきであるとしている。
 したがって、Cは、善意であっても登記を備えなければ保護されない。

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2009.01.28 Wed l 行政書士試験 平成20年度 l コメント (0) トラックバック (1) l top
 昨日は、夜の出勤に行けないため、事務所日記を落としてしまいました。
というのも、娘が風邪をひいているため、息苦しくなって夜中何度も起きるんですよねぇ。
 そのため、妻がその度に起きているようで、私が自宅に帰る午前2時くらいまで、ぐっすりと寝ることができないようです(その後も、娘が泣いたりするのでその度に起きるようです)。そして、7時に起きて会社に出勤しているので、たいへんな感じです。
 それで、昨日は、妻に代わって、娘の面倒をみようと思って、娘と一緒に眠ることにしました。やはり、前日と同様で、娘は息苦しくなって、何度も起きそうになりましたが、背中をさすってやったりすると、気持ちが良いのか、また眠りについてくれました。
 しかし、相変わらす、妻は眠れないようで、今日も朝はグッタリとしていました。やはり、育児休暇は、2年は欲しい感じです。

 さて、昨日は、午前中に行政書士試験問題28の解答解説を書いた後、事務所開設のご挨拶の続きを少しだけやり、午後は、その郵送手続を行った後、「所得税の青色申告承認申請書」及び「個人事業の開廃業届出書」を提出してきました。
 「所得税の青色申告承認申請書」及び「個人事業の開廃業届出書」は、国税庁のホームページからダウンロードした用紙に必要事項をある程度書いていったため、ほとんど提出だけですみました。なお、書き方は、先週買ってきた「青色申告スタートブック」(ダイヤモンド社)等に書かれているものを参照しました。
 昨日から、平成20年度の所得税の確定申告が始まったようです。私も適当な時期に行く予定です。

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2009.01.28 Wed l 事務所日記 l コメント (0) トラックバック (0) l top
先ほど、合否通知書が届きました。
記述式問題については、その採点基準を知りたいと思って、次のような幾つかの試みをしてみました。

問題44
取消しの訴えのみを記載し、義務付けの訴えとの併合提起を記載しなかった。

問題45
「賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊されたとは認められない特段の事情がある場合」と正しく記載。

問題46
譲渡人の通知のみを記載し、債務者の承諾を記載しなかった。


これで、何点だと思われますか?
何と、たったの22点でした。
ということは、問題45で20点をいただいたとして、問題44は0点、問題46は2点ということになりそうです。部分点はあるものの、かなり厳しい採点基準ですね。

今年の場合、記述式以外の問題がかなり易しかったので、このような採点基準になったのか分かりません。
来年も、同様のチャレンジをしてみたいと思いますが、やはり監督者をやらされるでしょうね。残念。

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2009.01.27 Tue l 行政書士試験 記述式 l コメント (1) トラックバック (0) l top
平成20年度 行政書士試験 問題28は、「無権代理」に関する問題でした。

代理プロパーの問題は、ここ数年出題されていなかったのですが、条文及び重要な判例を問う問題であり、必ず得点すべき問題でした。

では、平成20年度 行政書士試験 問題28の解答解説を載せておきます。


問題28 Aの子Bが、Aに無断でAの代理人としてA所有の土地をCに売却する契約を結んだ。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1 CはAが追認した後であっても、この売買契約を取り消すことができる。

2 Bが未成年者である場合、Aがこの売買契約の追認を拒絶したならば、CはBに対して履行の請求をすることはできるが、損害賠償の請求をすることはできない。

3 Aがこの売買契約の追認を拒絶した後に死亡した場合、BがAを単独相続したとしても無権代理行為は有効にはならない。

4 Aが追認または追認拒絶をしないまま死亡してBがAを相続した場合、共同相続人の有無にかかわらず、この売買契約は当然に有効となる。

5 Cが相当の期間を定めてこの売買契約を追認するかどうかをAに対して回答するよう催告したが、Aからは期間中に回答がなかった場合、Aは追認を拒絶したものと推定される。



問題28 正解 3
1 妥当でない。
 代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる (民法115条本文) が、本人が追認をすれば、もはや相手方が取り消すことはできない。
 したがって、Cは、Aが追認した後は、この売買契約を取り消すことができない。

2 妥当でない。
 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う (民法117条1項) が、当該規定は、他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用されない (同条2項)。
 したがって、Bが未成年者である場合、Aがこの売買契約の追認を拒絶したならば、CはBに対して履行の請求及び損害賠償の請求をすることができない。

3 妥当である。
 判例 (最判平成10年7月17日)は、本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解すべきであるとしている。なぜなら、無権代理人がした行為は、本人がその追認をしなければ本人に対してその効力を生ぜず (民法113条1項)、本人が追認を拒絶すれば無権代理行為の効力が本人に及ばないことが確定し、追認拒絶の後は本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることができず、追認拒絶の後に無権代理人が本人を相続したとしても、追認拒絶の効果に何ら影響を及ぼすものではないからである。
 したがって、Aがこの売買契約の追認を拒絶した後に死亡した場合、BがAを単独相続したとしても無権代理行為は有効にはならない。

4 妥当でない。
 判例 (最判平成5年1月21日)は、無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属するところ、無権代理行為の追認は、本人に対して効力を生じていなかった法律行為を本人に対する関係において有効なものにするという効果を生じさせるものであるから、共同相続人全員が共同してこれを行使しない限り、無権代理行為が有効となるものではないとした上で、他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではないとしている。
 したがって、Aが追認または追認拒絶をしないまま死亡してBがAを相続した場合において、共同相続人がいるときは、他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、Bの相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない。

5 妥当でない。
 民法114条は、代理権を有しない者が他人の代理人として契約をした場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなすと規定している。
 したがって、Cが相当の期間を定めてこの売買契約を追認するかどうかをAに対して回答するよう催告したが、Aからは期間中に回答がなかった場合、Aは追認を拒絶したものと「推定される」のではなく、追認を拒絶したものと「みなされる」が正しい。

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2009.01.27 Tue l 行政書士試験 平成20年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
昨日は、平成20年度 行政書士試験の合格発表があったせいか、いつもの倍のアクセスがありました。
合格した方のブログなどを読んでいると、次のステップを踏み出す喜びに溢れていて、読んでいてとても嬉しくなりました。がんばって下さい。
当方の昨日の仕事は、午前中に、合格発表の雑感を書いた後、事務所開設の挨拶状を作っていましたが、ラベル印刷で手間取り、ようやく本日の午前1時に終了し、このブログを書いています。
エクセルの表を作っていれば、それからワードによりラベル印刷ができることを知り、結構感動したのですが、そのやり方についての解説は、私のパソコンの次のバージョンのものばかりであり、私のパソコンのバージョンは、結構操作項目が多く、厄介でした。
何とか、次回からは、短時間で操作することができそうですが、そうそうラベル印刷をする機会があるはずもなく、またその時は、1からの出直しでしょうね。
では、これから帰って寝ます。2時くらいには、布団に入れそうです。
おやすみなさい。

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2009.01.27 Tue l 事務所日記 l コメント (0) トラックバック (1) l top
今日の午前9時に、平成20年度 行政書士試験の合格発表がありました。
(最初に受かった平成13年度試験の発表を、目黒の財団法人行政書士試験研究センターまで見に行ったのが懐かしく思い出されました)
当方の気づいた点を、いくつか箇条書きしておきます。

① 全体の合格率
 6.47%です。
 当方の予想では、10%を超えるものと思っていましたから、記述式の採点を、かなり厳しくしたようですね。
 また、この数字から、当局では、おおよそ5%前後に合格率をもっていきたいという意図が見えますね。

② 地域別合格率
 これは、いつもながら都市部の率が高いですね。
 やはり、資格学校が多く、受験生が切磋琢磨しているのでしょうね。

③ 合否判定基準
 例年と変りません。下記をご参照下さい。
 http://gyosei-shiken.or.jp/hantei/index.html

④ 試験問題
 今年から、試験問題がデータとして取り出せるようになりました。
 これは、評価すべきことと思います。

⑤ 試験問題の正解
 問題27までは、このブログで既に検討済みです。
 問題28以降については、今後このブログで検討する予定です。
 
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2009.01.26 Mon l 行政書士試験 平成20年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
残念な結果に終わられた方のほうが多数でしたね。
試験の結果は実に無情なものです。
でも、合格する可能性だけは与えられていたことを、もう一度再確認して、
来年受験するかを決めて下さい。
きちんとした日程をたてて、きちんと学習すれば、受からない試験ではありません。
将来実務をやりたい方は、必ず通らなければならない関門ですから、
実務への憧れが強ければ、ぜひ再チャレンジして下さい。
2009.01.26 Mon l 行政書士試験 平成20年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
合格なさった方、心からおめでとうございます。
これから、実務につかれる方もいらっしゃるかと思います。
ぜひ、成功なさって下さい。
2009.01.26 Mon l 行政書士試験 平成20年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
 平成20年度 行政書士試験 問題27は、「民法の規定する通謀虚偽表示」に関する問題でした。

 解説を書いていて気づいたのですが、選択肢オの記述が、ちょっと変というか、強引に「妥当でない」肢にしたという感じがします(問題作成者が、まだ問題作成に慣れていらっしゃらないのかもしれませんが)。おそらくは、正誤問題で、選択肢イ(元は選択肢2だったのでしょう)を「妥当でない」選択肢として選ばせる問題ではなかったのかなぁと推測します。それでは、問題が簡単すぎると思って、組合せ問題にした感じです。

 問題的には、選択肢イ、エ及びオは、基本知識のレベルであり、得点すべき問題でした。

 では、平成20年度 行政書士試験 問題27の解答解説を載せておきます。


問題27 Aが自己の所有する甲土地をBと通謀してBに売却 (仮装売買) した場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア Bが甲土地をAに無断でCに転売した場合に、善意のCは、A・B間の売買の無効を主張して、B・C間の売買を解消することができる。

イ Bが甲土地をAに無断でCに転売した場合に、善意のCに対して、AはA・B間の売買の無効を対抗することはできないが、Bはこれを対抗することができる。

ウ Aの一般債権者Dは、A・B間の売買の無効を主張して、Bに対して、甲土地のAへの返還を請求することができる。

エ Bが甲土地につきAに無断でEのために抵当権を設定した場合に、Aは、善意のEに対して、A・B間の売買の無効を対抗することができない。

オ Bの一般債権者FがA・B間の仮装売買について善意のときは、Aは、Fに対して、Fの甲土地に対する差押えの前であっても、A・B間の売買の無効を対抗することができない。

1 ア・イ
2 ア・ウ
3 ア・オ
4 イ・エ
5 イ・オ


問題27 正解 5
ア 妥当である。
 民法94条2項は、「意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない」と規定しているが、ここに「第三者」とは、虚偽表示の当事者及びその包括承継人以外の者であって、虚偽表示の外形について新たな利害関係を取得した者をいう。そして、当該規定については、善意の第三者からは有効・無効のいずれかの主張をすることが許されると解されている。したがって、善意の第三者であるCは、A・B間の売買の無効を主張して、B・C間の売買を解消することができる。

イ 妥当でない。
 虚偽表示の当事者が、善意の第三者に対して無効を主張することは許されない。したがって、虚偽表示の当事者であるA及びBは、善意の第三者であるCに対して、A・B間の売買の無効を対抗することはできない。

ウ 妥当である。
 民法94条1項は、「相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。」と規定しているが、この無効は、原則どおり、誰からでも主張することができると解される。したがって、Aの一般債権者であるDは、A・B問の売買の無効を主張して、Bに対して、甲土地のAへの返還を請求することができる。

エ 妥当である。
 判例 (大判昭和6年10月24日) は、虚偽表示による譲受人からその目的物について抵当権の設定を受けた者は、民法94条2項の「第三者」に含まれるとしている。したがって、Aは、善意の第三者であるEに対して、A・B間の売買の無効を対抗することができない。

オ 妥当でない。
 財産の仮装譲受人の一般債権者は、民法94条2項の「第三者」に含まれない。なぜなら、この者は、仮装譲受人の一般財産の一部としての目的物に着目しているにすぎず、いまだ目的物に関して抽象的な利害関係を有しているにすぎないから、虚偽表示に基づいて新たな利害関係を取得した者とはいえないからである。したがって、Aは、Fに対して、Fの甲土地に対する差押えの前であれば、A・B間の売買の無効を対抗することができる。

以上により、妥当でないものはイ・オであるから、正解は5となる。

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2009.01.26 Mon l 行政書士試験 平成20年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
皆様のアクセスのおかげで、とてもありがたいことに、FC2ブログランキングの就職・お仕事>資格・スキルアップ部門で一時的ではありましょうけれど、トップを取らせていただきました。
これに慢心することなく、皆様のためになる情報をお届けすることができるようにします。
今回は、皆様に心から感謝いたします。
2009.01.25 Sun l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
昨日からの雪は、先ほどから雨に変わりましたが、自宅のマンションを出てくるときに、高さ30cmほどの雪だるまが4つ作ってあるのを見かけて、結構な雪の量だったのだなぁと分かりました。
さすがに、自転車で滑って転んだのでは、この時期シャレにならないなぁと思い、昨日の夜の出勤は取りやめ、自宅で青色申告の本を読んだりしていました。
自宅のパソコンで、事務所日記を書こうと思っていましたが、ノートパソコンに慣れていないため、途中で断念してしまいました。ブログを期待していた方(?)にはお許しをいただきたいです。
内容的には、次のようになる予定でした。

今日は、午前中、平成20年度 行政書士試験 問題26の解答解説を書き、午後は、ご近所の皆様向けチラシの作成をしていました。次の内容になる予定です。

                    行政書士事務所開設のご挨拶

 この度、皆様のお住みの町に、行政書士事務所を開設させていただくことになりました。下記取扱業務でご依頼・ご相談を承りますので、今後ともよろしくお願い致します。

                       <事 務 所 案 内>
〒810-0074 福岡市中央区大手門3丁目1番3号 ニューライフ大濠305号
(地下鉄空港線大濠公園駅4番出入口徒歩3分。(株)ふくおかフィナンシャルグループ本社向い)
電話 092 (▼▼)▼▼

                         <取 扱 業 務>
●日常生活におけるトラブルの予防・処理(たとえば、各種契約書の作成・チェック、内容証明・示談書・離婚協議書等の作成、交通事故に係る損害賠償・保険金請求のサポート等)
●相続に関する手続 (たとえば、遺言書の作成相談、遺産分割協議書の作成等)
●自動車に関する手続 (たとえば、車庫証明・名義書換の申請等)
●法人関係 (たとえば、設立手続 (定款作成)、議事録・契約書の作成・チェック等)
●許認可の申請 (たとえば、建設業許可・医薬品店舗販売業許可・農地転用許可の申請等)
●その他の業務についても、ご相談をお受けいたします (30分3,150円 (税込)。ただし、初回10分は無料です。)。お気軽にご相談下さい。
                                    行政書士かさはら事務所  
                                    行政書士 笠 原 裕 明  

〈略 歴〉佐賀市立新栄小学校~佐賀市立昭栄中学校~佐賀西高等学校~中央大学法学部  各卒業
〈主な執筆・掲載書籍〉 『行政書士試験用六法』 (法学書院より発刊予定)
               『不動産法律セミナー』 (東京法経学院)
 ※ブログは毎日更新していますので、ご覧下さい。http://hiroohirooyagi.blog54.fc2.com/

自分でも、そこまでやるかという感じはしていますが、既存の顧客ゼロからのスタートであれば、これくらいでは、まだ足りないのかもしれないと感じています。
なお、先月事務所の所在確認にいらっしゃった先輩行政書士である和田先生によると、自分もチラシを作って配ってみたけど、あまり反応がなく、やはり人からの紹介が主になっていますとのことでした。
でも、やらないで悲しい結末を迎えるより、やって納得して終わりたいですからね。
というわけで、これから、妻に文面等をチェックしてもらって、事務所開設の挨拶状やご近所の皆様向けチラシの作成を行う予定です。

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2009.01.25 Sun l 事務所日記 l コメント (2) トラックバック (0) l top
平成20年度 行政書士試験 問題26は、「行政調査」に関する問題でした。

地方自治法の問題の後に、なぜ行政法の一般的な法理論に関する問題が入っているのか、ちょっと疑問ですが、推測するに、平成18年度試験において、情報公開法をここで出題した流れで、情報公開法を出題しない年度は、ここが空くため、代わりにこの問題を入れたようです。

 余談はさておき、選択肢4の判例を知っているか否かが分かれ目となったように思えます。そういう意味では、刑事訴訟法をやっている方には、圧倒的に有利な問題でした。

 では、平成20年度 行政書士試験 問題26の解答解説を載せておきます。


問題26 行政調査に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。

1 保健所職員が行う飲食店に対する食品衛生法に基づく調査の手続は、行政手続法の定めるところに従って行われなければならない。

2 税務調査については、質問検査の範囲・程度・時期・場所等について法律に明らかに規定しておかなければならない。

3 警察官職務執行法2条1項の職務質問に付随して行う所持品検査は、検査の必要性・緊急性があれば、強制にわたることがあったとしても許される。

4 自動車検問は国民の自由の干渉にわたる可能性があるが、相手方の任意の協力を求める形で、運転手の自由を不当に制約するものでなければ、適法と解される。

5 税務調査の質問・検査権限は、犯罪の証拠資料の収集などの捜査のための手段として行使することも許される。


問題26 正解 4
1 誤り。
 保健所職員が行う飲食店に対する食品衛生法に基づく調査の手続 (同法28条1項等) は、食品衛生法の規定に基づいて行われている。たとえば、同条2項は、「前項の規定により当該職員に臨検検査又は収去をさせる場合においては、これにその身分を示す証票を携帯させ、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示させなければならない。」と規定している。
 なお、保健所職員が行う飲食店に対する食品衛生法に基づく調査は、行政調査の性質を有するが、行政手続法には、行政手続法が行政調査一般について適用されるとした規定は置かれていない。

2 誤り。
 判例 (最決昭和48年7月10日) は、所得税法234条1項は、国税庁、国税局又は税務署の調査権限を有する職員において、当該調査の目的、調査すべき事項、申請、申告の体裁内容、帳簿等の記入保存状況、相手方の事業の形態等諸般の具体的事情にかんがみ、客観的な必要性があると判断される場合には、職権調査の一方法として、同条項の各号規定の者に対して質問し、又はその事業に関する帳簿、書類その他当該調査事項に関連性を有する物件の検査を行う権限を認める趣旨であって、この場合の質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられているとしている。

3 誤り。
 判例 (最判昭和53年6月20日―米子事件) は、警察官職務執行法2条1項は、同条項所定の者を停止させて質問することができると規定するのみで、所持品の検査については明文の規定を設けていないが、所持品の検査は、口頭による質問と密接に関連し、かつ、職務質問の効果をあげるうえで必要性、有効性の認められる行為であるから、同条項による職務質問に附随してこれを行うことができる場合があると解すべきであるとした上で、所持品検査は、任意手段である職務質問の附随行為として許容されるのであるから、所持人の承諾を得て、その限度においてこれを行うのが原則であるが、職務質問ないし所持品検査は、犯罪の予防、鎮圧等を目的とする行政警察上の作用であって、流動する各般の警察事象に対応して迅速適正にこれを処理すべき行政警察の責務にかんがみるときは、所持人の承諾のない限り所持品検査は一切許容されないと解するのは相当でなく、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、所持品検査においても許容される場合があると解すべきであるとしている。

4 正しい。
 判例 (最決昭和55年9月22日)は、警察法2条1項が「交通の取締」を警察の責務として定めていることに照らすと、交通の安全及び交通秩序の維持等に必要な警察の諸活動は、強制力を伴わない任意手段による限り、一般的に許容されるべきものであるが、それが国民の権利、自由の干渉にわたるおそれのある事項にかかわる場合には、任意手段によるからといって無制限に許されるべきものでないとした上で、しかしながら、自動車の運転者は、公道において自動車を利用することを許されていることに伴う当然の負担として、合理的に必要な限度で行われる交通の取締りに協力すべきものであること、その他現時における交通違反、交通事故の状況等をも考慮すると、警察官が、交通取締りの一環として交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者等に対し必要な事項についての質問等をすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解すべきであるとしている。

5 誤り。
 所得税法234条2項は、国税庁等の職員が所得税の調査に関してする質問又は検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならないと規定している。
 なお、判例 (最大判昭和47年11月21日―川崎民商事件) は、旧所得税法63条 (現在の所得税法234条に相当する。) 所定の収税官吏による事業に関する帳簿等の検査の受忍をその相手方に対して強制する作用を伴なうものであるが、同法63条所定の収税官吏の検査は、もっぱら、所得税の公平確実な賦課徴収のために必要な資料を収集することを目的とする手続であって、その性質上、刑事責任の追及を目的とする手続ではないとしている。

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2009.01.24 Sat l 行政書士試験 平成20年度 l コメント (0) トラックバック (1) l top
今日は、寒い一日でしたね。
先ほど、入浴と食事を終えて自宅から事務所に戻ってきたのですが、頬を打つ風が痛いです(こたつねこさんのいる地域とは比べようもありませんけど)。
九州では、明日・明後日と雪になるようですが、九州人は、基本的に雪の用意をしていませんから、今から、そのときのあたふたとした様子が目に浮かぶようです。

さて、本日は、午前中に平成20年度 行政書士試験 問題25を書いた後、行政書士試験の資格書に関するマーケティングをしていました。この成果は、平成20年度試験の合格発表が終わる来週から随時情報を発信することにします。
午後は、青色申告に関する書籍を購入し、もう半分ほど目を通してしまいました。個人事業主にとっては、青色申告による控除額65万円は大きいですからね。青色申告用のソフトがあれば、それほど難しくはなさそうです。迷ったときは、頼りになる先輩や友人もいますからね。

ちょっと役に立つ話をしておきましょう。
毎日、多数の判例を読んでいるのですが、先日読んだ判例は、行政書士実務にもためになるものでした。
ちょっとだけ、その判例を引用します。
「上告人は,平成8年11月ころ,木屋平村が実施しようとしていた村道拡張工事に関し,上告人の本店所在地前の50mほどの区間の工事について指名競争入札に参加させるよう求めた。当該工事は,1工区の工事区間が数百m程度,工事費にして3,000ないし4,000万円程度の工事であったため,本来であれば1,500万円を超える工事について参加資格がなかった上告人を参加させることはできなかったが,木屋平村は,協議の結果,上記の区間について分割発注することとして,上告人を入札に参加させた。」
これは、とてもすごいことですねぇ。
この判例を読むまでは、「私は、1,500万円を超える工事について参加資格がないので、どうかしてくれませんか。」という依頼があれば、それを超える額の工事についても参加資格が得られるようにするしかないとばかり思っていました。
しかし、このような分割発注というやり方があるのであれば、行政庁にお願いする手もありそうです。
行政書士も政治力があると、多様な手段がとれますね。
ただ、競争入札妨害罪等には、気をつけましょう。

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2009.01.23 Fri l 事務所日記 l コメント (2) トラックバック (0) l top
 平成20年度 行政書士試験 問題25は、「地方自治法の規定(主に各種の市)」に関する問題でした。
 選択肢2及び4は基本的知識を問うものであり、選択肢5は一般社会における生活知識として知っている方も多いと思います(昔の炭鉱町で、栄えている頃は市となっていたのに、現在では人口が減っても市となっているのはなぜか等の生活知識です。)。
 そうなると、選択肢1または3に絞ることができます。あとは、法的論理思考を働かせれば、問題は解けます(「せっかく指定都市になったのに、要請しないと権限が移譲されないとするのは、ちょっと変」という感覚です)。
 では、平成20年度 行政書士試験 問題25の解答解説を載せておきます。


問題25 地方自治法の規定に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 都道府県は、指定都市の市長から要請があった場合には、都道府県の事務の一部又は全部を指定都市に移譲しなければならない。

2 指定都市が市長の権限に属する事務を分掌させるために条例で設ける区を、特別区という。

3 市が中核市の指定の申出をしようとするときには、当該市は、あらかじめ議会の議決を経て、都道府県の同意を得なければならない。

4 中核市は、特例市が処理することができる事務のうち政令で定めるものを処理することができる。

5 地方自治法が定める一定の人口要件を下回った市は、町または村となる。


問題25 正解 3
1 誤り。
 地方自治法252条の19第1項は、政令で指定する人口50万以上の市 (以下「指定都市」という。) は、児童福祉に関する事務等のうち都道府県が法律又はこれに基づく政令の定めるところにより処理することとされているものの全部又は一部で政令で定めるものを、政令で定めるところにより、処理することができる、と規定している。このように、指定都市になると、法律上当然に権限が移譲され、指定都市の市長からの要請は不要である。

2 誤り。
 「特別区」とは、都の区をいう (地方自治法281条1項)。
なお、指定都市は、市長の権限に属する事務を分掌させるため、条例で、その区域を分けて区 (たとえば、福岡市中央区。) を設け、区の事務所又は必要があると認めるときはその出張所を置くことができる (同法252条の20第1項) が、このような区は、「行政区」と呼ばれている。

3 正しい。
 総務大臣は、地方自治法252条の22第1項の中核市の指定に係る政令の立案をしようとするときは、関係市からの申出に基づいてこれを行わなければならない(地方自治法252条の24第1項) が、当該申出をしようとするときは、関係市は、あらかじめ、当該市の議会の議決を経て、都道府県の同意を得なければならない (同条2項)。

4 誤り。
 政令で指定する人口30万以上の市 (以下「中核市」という。) は、地方自治法252条の19第1項の規定により指定都市が処理することができる事務のうち、都道府県がその区域にわたり一体的に処理することが中核市が処理することに比して効率的な事務その他の中核市において処理することが適当でない事務以外の事務で政令で定めるものを、政令で定めるところにより、処理することができる (地方自治法252条の22第1項)。このように、「特例市」ではなく、「指定都市」が正しい。
※ 「市」については、普通市→特例市→中核市→指定都市の順に、その権限が拡大されることを知っておいて欲しい。

5 誤り。
 地方自治法8条3項は、「町村を市とし又は市を町村とする処分は地方自治法7条1項、2項及び6項から8項までの例により、村を町とし又は町を村とする処分は同条1項及び6項から8項までの例により、これを行うものとする。」と規定している。このように、市の人口が地方自治法の定める人口要件を下回った場合において、法律上当然に町又は村となるのではなく、市を町又は村とする処分が必要である。

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2009.01.23 Fri l 行政書士試験 平成20年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
事務所での生活が始まって1週間が経過したが、おおよそ一日の生活が固定化しつつある。
朝8時くらいに起床し、娘を保育園に連れて行って9時から事務所で執務を開始し、昼食を自宅に帰ってとることもあるが、ほぼ18時までは事務所で雑務をこなして、娘を保育園に迎えに行った後に、入浴・食事を済ませ、21時に事務所に戻り、夜中の1時~2時位に帰宅する感じである。
娘が夜中に起きるのが最近もっともいやなことで、下手をすると5時からずっと起きているので、こちらも熟睡できずに、そのまま事務所に出勤というつらい日もあった。
ただ、自由業のよさは、眠たいときに、机の上で10分くらいお休みできることであり、それで結構疲れが取れたりする。私には、この生活が性に合っているようである。

話は変わるが、今日は、妻がとても怒って帰ってきた。
話を聞くと、先月は、メールを10回しかしていないのに、2,000円以上の通信料がかかったとのこと。その理由が、迷惑メールの受信にも通信料がかかった為のようである。ファックス等は、紙代がかかるので一目瞭然であるが、迷惑メールにも通信料がかかることは、こちらも初耳であった。激怒して、文書による回答を求めたようであるが、厳に却下されたようである。
確かに、妻がフィルタリングをかけていなかったという過失はあるようであるが、そのような重要事項を告知しないで料金を請求する携帯電話会社にもあきれるものである。

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2009.01.22 Thu l 事務所日記 l コメント (4) トラックバック (0) l top
 平成20年度 行政書士試験 問題24は、「住民訴訟」に関する問題でした。住民監査請求及びそれに続く住民訴訟は、地方自治法の中でも、特別重要な分野であり(なぜなら、住民が地方自治を監視するための道具として、1人でも可能だからです)、これに関連する判例は、きちんと押さえておくことが必要です。
 
 本問で出題された一日校長事件や議員野球大会旅費事件は著名な判例であり、学習しておくべき判例でしたから、易しい問題の部類に入るのではないかと思います。

 ただ、法律試験に長く携わっている方は、「当然」という言葉が入ると、イコール誤りという定式にしたがって、選択肢イを誤りと判断したくなるでしょうね(なお、本判例自体が珍しく「当然」という文言を使っています)。

 では、平成20年度 行政書士試験 問題24の解答解説を載せておきます。

問題24 住民訴訟に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア 教育委員会が教頭を退職前の1日だけ校長に任命した行為を前提に、地方公共団体の長が行った退職手当の支給は、任命行為が違法であるならば当然に違法となる。

イ 懲戒免職処分とすべきところを違法に分限免職処分とした上で行われた退職手当の支給は、当該分限免職処分が退職手当の支給の直接の原因であるから、当然に違法となる。

ウ 地方公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して契約を締結した場合には、当該契約に基づく債務の履行は当然に違法となる。

エ 県議会議長が発した議員の野球大会参加のための旅行命令書に基づき知事の補助職員が行った公金の支出は、当該旅行命令が違法であったとしても適法となる余地がある。

1 ア・イ
2 ア・ウ
3 ア・エ
4 イ・ウ
5 イ・エ


問題24 正解 5
ア 誤り。
 判例 (最判平成4年12月15日―一日校長事件) は、地方自治法 (平成14年法律第4号による改正前のもの。) 242条の2第1項4号の規定に基づく代位請求に係る職員に対する損害賠償請求訴訟は、財務会計上の行為を行う権限を有する職員に対し、職務上の義務に違反する財務会計上の行為による職員の個人としての損害賠償義務の履行を求めるものにほかならない。したがって、職員の財務会計上の行為をとらえてその規定に基づく損害賠償責任を問うことができるのは、たといこれに先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても、当該原因行為を前提としてされた職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られる、としている。本判決の論旨に照らせば、校長への任命行為が違法であるとしても、地方公共団体の長が行った退職手当の支給が当然に違法となるものではないことになる。

イ 正しい。
 判例 (最判昭和60年9月12日) は、地方自治法242条の2の規定する住民訴訟の対象が普通地方公共団体の執行機関又は職員の違法な財務会計上の行為又は怠る事実に限られることは、同条の規定に照らして明らかであるが、その行為が違法となるのは、単にそれ自体が直接法令に違反し許されない場合だけでなく、その原因となる行為が法令に違反し許されない場合の財務会計上の行為もまた、違法となるとした上で、本件条例の下においては、分限免職処分がされれば当然に所定額の退職手当が支給されることとなっており、本件分限免職処分は本件退職手当の支給の直接の原因をなすものであるから、前者が違法であれば後者も当然に違法となる、としている。

ウ 誤り。
 判例 (最判昭和62年5月19日) は、普通地方公共団体が締結する契約が仮に随意契約の制限に関する法令 (地方自治法234条2項、同施行令167条の2第1項参照) に違反して締結された点において違法であるとしても、それが私法上当然無効とはいえない場合には、普通地方公共団体は契約の相手方に対して当該契約に基づく債務を履行すべき義務を負うから、当該債務の履行として行われる行為自体はこれを違法ということはできず、このような場合に住民が地方自治法242条の2第1項1号所定の住民訴訟の手段によって普通地方公共団体の執行機関又は職員に対し当該債務の履行として行われる行為の差止めを請求することは許されない、としている。

エ 正しい。
 判例 (最判平成15年1月17日―議員野球大会旅費事件) は、地方自治法 (平成14年法律第4号による改正前のもの。) 242条の2第1項4号の規定に基づき職員に損害賠償責任を問うことができるのは、先行する原因行為に違法事由がある場合であっても、原因行為を前提にしてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られる (最判平成4年12月15日参照) とした上で、議会はその裁量により議員を派遣することができるが、予算執行権を有する普通地方公共団体の長は、議会を指揮監督し、議会の自律的行為を是正する権限を有していないから、議会がした議員の派遣に関する決定については、これが著しく合理性を欠きそのために予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵がある場合でない限り、議会の決定を尊重しその内容に応じた財務会計上の措置を執る義務があり、これを拒むことは許されないとした。続けて判例は、これを本件についてみると、県議会議長が行った議員に対する旅行命令は違法なものではあるが、県議会議長が行った旅行命令が、著しく合理性を欠き、そのために予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵があるとまでいうことはできないから、知事としては、県議会議長が行った旅行命令を前提として、これに伴う所要の財務会計上の措置を執る義務がある。そうすると、知事に代わって専決の権限を有するYが行った議員の旅費についての支出負担行為及び支出命令は、財務会計法規上の義務に違反してされた違法なものであるということはできないとしている。

以上により、正しいものは、イ・エであるから、正解は5になる。

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2009.01.22 Thu l 行政書士試験 平成20年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
昨日でようやく作問にも一区切りがつき、今日は、午前中に平成20年度 行政書士試験 問題23の解答解説を書き、午後は、親戚・友人に配る事務所開設の挨拶状を作っていました。
次のような文面です。

                     事務所開設のご挨拶

謹啓 新春の候、皆様におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。また、平素は格別のお引立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、この度、福岡城址を臨む福岡市中央区大手門の地に、行政書士事務所を開設させていただくことになりました。学生時代より、多くの紛争を見るにつけ、紛争が生じる前にきちんとした手続さえ踏んでいれば現在の紛争は予防できたのにという思いがあり、予防法務の分野において皆様の手助けをすることができたらと考え、この度の運びとなりました。
 この事務所の開設にあたり、皆様のご期待にそえますよう更なる研鑽を積み、質の高いサービスをご提供していくべく精進する所存ですので、今後ともご厚誼を賜りますよう、お願い申し上げます。
 略儀ながら、まずは書中にてご挨拶申し上げます。
                           記
  〒810-0074 福岡県福岡市中央区大手門3丁目1番3号 ニューライフ大濠305号
   (福岡市営地下鉄空港線大濠公園駅徒歩3分。(株) ふくおかフィナンシャルグループ本社向い)
  電話/FAX 092 (▼▼)▼▼
  携帯電話   090 (▼▼)▼▼
  電子メール  ▼▼@▼▼.so-net.ne.jp
  取扱業務 ●法人関係 (たとえば、設立手続 (定款作成)、議事録・契約書の作成等)
         ●日常生活におけるトラブルの処理 (たとえば、内容証明・離婚協議書の作成等)
         ●相続に関する手続 (たとえば、遺言書の作成相談、遺産分割協議書の作成等)
         ●許認可の申請 (たとえば、建設業許可・農地転用許可の申請等)
         ●自動車に関する手続 (たとえば、車庫証明・名義書換の申請等)
         ●その他の業務についても、ご相談をお受けいたします (30分3,150円 (税込)。ただし、初回10分は無料です。)。お気軽にご相談下さい。
                                                  謹言
平成21年1月吉日
                                     行政書士かさはら事務所 
                                     行政書士 笠 原 裕 明

という感じです。 

それに続けて、封筒にも事務所の名称などが入るように工夫し、その封筒に貼るラベルの印刷まで一応の用意をしました。
週末に、印刷を終え、発送の予定です。
今回知ったのは、エクセルの表からワードのラベルを印刷できることでした。奇遇だったのは、今日妻も会社の仕事の中で同じことを知ったそうです。ラベル印刷は難しいものだと思っていましたが、案外簡単そうです(まだ、出力はしていませんが)。なお、エクセルの表は、年賀状用に買った筆王のソフトから作れるので、その点でも、年賀状作成ソフトはおすすめですね。

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2009.01.21 Wed l 事務所日記 l コメント (0) トラックバック (0) l top
 平成20年度 行政書士試験 問題23は、「普通地方公共団体の財務」に関する問題でした。
 普通地方公共団体の財務に関しては、皆さんの学習が手薄になりがちの部分ですが、きちんと学習なさっている方にとっては、問題自体は、それほど難しくなかったと思われますので、得点すべき問題でした(判例を探して、解説を書くのは、非常に難儀でした)。
 問題についての、若干のコメントをすると、選択肢1及び5は、基本的知識にしておく部分であり、選択肢4は、公費の濫用防止の趣旨が分かっていれば解けます。残っているのは、選択肢2及び3ですが、これについては、「行政庁の裁量が極めて不合理で、社会通念上著しく妥当性を欠いていない限り、裁量権の逸脱又は濫用とならない」という一般論が頭にインプットされていれば、どちらがより正しいかの判断がつきます。
 では、平成20年度 行政書士試験 問題23の解答解説を載せておきます。

問題23 普通地方公共団体の財務に関する次の記述のうち、法令または最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

1 公共用財産については、それが長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、黙示的に公用が廃止されたものとみなしうる場合であっても、取得時効の成立は認められない。

2 行政財産の目的外使用の許可については、当該財産の目的に鑑みて支障がない場合であっても、管理者はその許可を拒否することができる。

3 地方公共団体は、指名競争入札に参加させようとする者を指名する際に、その者が地元の経済の活性化に寄与するか否かを考慮に入れてはならない。

4 地方公共団体の議会があらかじめ承認を与えたときでも、当該地方公共団体は、その財産を適正な対価なくして譲渡することはできない。

5 金銭の給付を目的とする地方公共団体の権利は、時効に関し地方自治法以外の法律に特別の定めがある場合を除くほか、時効により消滅することはない。


問題23 正解 2
1 妥当でない。
 判例 (最判昭和51年12月24日)は、公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共用財産としての形態、機能を全く喪失し、その物のうえに他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、当該公共用財産については、黙示的に公用が廃止されたものとして、これについて取得時効の成立を妨げない、としている。

2 妥当である。
 地方自治法238条の4第7項は、「行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。」として、行政財産の目的外使用を許している。
 そして、行政財産の目的外使用の許可について、判例 (最判平成18年2月7日) は、学校施設は、一般公衆の共同使用に供することを主たる目的とする道路や公民館等の施設とは異なり、本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されている (学校施設令1条、3条) ことからすれば、学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられている、としている。このように、判例は、行政財産の目的外使用の許可について、行政財産の性質に応じて、管理者の裁量を認めているから、行政財産の目的に鑑みて支障がない場合であっても、管理者においてその許可を拒否することを認めるものと解される。

3 妥当でない。
 判例 (最判平成18年10月26日) は、「確かに、地方公共団体が、指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり、①工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることから契約の確実な履行が期待できることや、②地元の経済の活性化にも寄与することなどを考慮し、地元企業を優先する指名を行うことについては、その合理性を肯定することができるものの、①又は②の観点からは村内業者と同様の条件を満たす村外業者もあり得るのであり、価格の有利性確保(競争性の低下防止)の観点を考慮すれば、考慮すべき他の諸事情にかかわらず、およそ村内業者では対応できない工事以外の工事は村内業者のみを指名するという運用について、常に合理性があり裁量権の範囲内であるということはできない。」としている。このように、判例は、地元の経済の活性化にも寄与することなどを考慮し、地元企業を優先する指名を行うことは許されると解している。
 当該判例を分かりやすく解説すると、価格の有利性確保(競争性の低下防止)の観点を考慮せずに、当該①及び②の観点のみを理由として地元企業を優先する指名をすることは、極めて不合理であり、社会通念上著しく妥当性を欠くものとして、そのような措置には裁量権の逸脱又は濫用があるとするものである。
※ なお、指名競争入札の参加者の資格については、契約を締結する能力を有しない者等についての制限があるほか、地方公共団体の長において、あらかじめ、指名競争入札に参加する者につき、契約の種類及び金額に応じ、工事、製造又は販売等の実績、従業員の数、資本の額その他経営の規模及び状況を要件とする資格を定めて、公示しなければならない (地方自治法234条6項、同法施行令167条の11第2項、3項、167条の5)。そして、地方公共団体の長は、資格を有する者のうちから入札に参加させようとする者を指名することになっている (地方自治法234条6項、同法施行令167条の12第1項)。

4 妥当でない。
 地方自治法237条2項は、「地方自治法238条の4第1項の規定の適用がある場合を除き、普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない。」と規定し、普通地方公共団体の財産であっても、条例又は議会の議決による場合であれば、適正な対価なしにこれを譲渡することができるとしている。

5 妥当でない。
 地方自治法236条1項前段は、「金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利は、時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほか、5年間これを行なわないときは、時効により消滅する。」と規定している。

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2009.01.21 Wed l 行政書士試験 平成20年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
行政書士会の入会式でいただいた書類の続きです。

⑥福岡県行政書士会関係法規集
 法規集ですが、書式がたくさん載っています。これを、コピーして使うのでしょうが、どうせならデータでいただけると助かるのですがねぇ。
 なお、例の印鑑紙も載っていて、根拠条文は、指摘したとおり、連合会の会則81条の2でした(どうも、これをコピーして使っていないようですね)。

⑦福岡県行政書士会の会員名簿
 平成20年8月15日現在ですので、当然のことながら、私は載っていません。

⑧福岡県行政書士会の会報
 ちょっと興味を惹かれたのは、「会員のうごき」の欄で、12月号では、退会された会員が5人、入会された会員が5人でした。動きが激しいですね。なお、日行連でも、同じような会報である「月刊 日本行政」がありますが、これは、日行連から行政書士証票等と一緒に送ってくるみたいです。

⑨領収証副本
 これは、1冊650円で、有無を言わさず徴収されました。たくさん書ければ、ペイできますね。

⑩会費についてのお知らせ
 4月以降の会費は、3箇月ごとに銀行からの自動引き落としとなります。会費の月額は、県会費が5,500円、支部会費は支部毎に異なり1,000円~3,000円です。支部会費が異なるのは、活動の違いなのでしょうか?

⑪日本行政書士会連合会のパンフレット
 A4版のもので、お客様にお配りするには、ちょっと大きすぎます。誰を対象に作られたのでしょう?疑問です。

⑫福岡県行政書士会のパンフレット
 A5版のもので、お客様に行政書士の業務を紹介するためのパンフレットとしては、非常に適切なものであると思います。裏に、各会員用のスタンプ欄があるので、ここにスタンプを押して、配りたいと思っていましたが、もはや部数がないようです。残念!
新たに刷ったときは、なるべく多くいただくようにしましょう。

⑬日本行政書士政治連盟のしおり
 いわずと知れた行政書士の圧力団体です。圧力団体については、その悪弊が強調されがちですが、政治はある程度までは個別利益のぶつかり合いである以上、高尚なドグマを唱えて、これを否定される方には与することができません。
 ただ、行政書士が勝ち取れる権限の拡張は、もはや限界にきている以上、政治家に政治資金を供給しても、無駄金に終わりそうなので、私は、今回はこの連盟に入会しませんでした(年会費は、4,800円です)。しかし、もし、新たに権限の拡張が可能なものがありそうであれば、そのときは、入会しようと思っています。

⑭事件簿の見本
 行政書士法9条1項は、「行政書士は、その業務に関する帳簿を備え、これに事件の名称、年月日、受けた報酬の額、依頼者の住所氏名その他都道府県知事の定める事項を記載しなければならない。」と規定しています。この「業務に関する帳簿」は、事件簿と呼ばれています。
 事件簿は、上記要件を備えるものであれば、その形式は自由なのですが、作成例として配られたようです。
 事件を取り扱ってみないと、どのような事件簿が使いやすいのか分からないので、今後の課題ですね。

⑭福岡県行政書士事業競合組合の団体保険のパンフ
 年間1口600円で100万円の死亡保険金が出るようです。配偶者や補助者も加入でき、一人当たり5口まで加入可能です。

⑮行政書士賠償責任補償制度のパンフ
 残念ながら、賠償責任を負う場合の保険です。弁護士の友人は、必ず入っていますが、行政書士の場合、どういう事案で賠償責任を負うのかが分からず、現在のところ、見送ろうとは思っています。なお、講師の方は3万円程度の保険に入っていらっしゃるそうです。

⑯福岡県暴力追放運動推進センターのパンフ
 警察関係の許認可を専門にされている方は、基本的に参加すべき会のようです。私の母親も、警察関係の事務職をやっていたので、この分野のお話は、よく耳にしたものです。

⑰戸籍謄本・住民票の写し等職務上請求書の取扱いに関するガイドライン
 行政書士等は、本人の委任状なしに、戸籍謄本・住民票の写し等が取れます。
数年前になりますが、公器としての自覚が足りない不届き者が、これを悪用して社会問題となりました。それ以来、この請求書の交付には、行政書士会として特別注意を払っているようです。
毎年1回は、これに関する講義を受けた上でなければ、行政書士会は、この請求書を発行しないようになっているようです。当然といえば当然ですがね。

以上が、入会式でいただいた書類です。
とても1週間程度では消化できない量でしょう。
私も、ブログの量を減らして、こちらを少し勉強しようと思っています。

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2009.01.20 Tue l 事務所日記 l コメント (3) トラックバック (0) l top
平成20年度 行政書士試験 問題22は、「地方自治法の定める裁判所への出訴」に関する問題でした。

条文問題ですが、細かな事項を問うものであり、捨て問としてもかまわなかったように思います。

では、平成20年度 行政書士試験 問題22の解答解説を載せておきます。

問題22 地方自治法の定める裁判所への出訴に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 市町村の境界に関する争論について都道府県知事が行った裁定に不服があるときは、関係市町村は、境界の確定について出訴することができる。

2 市町村議会議員選挙を無効とする旨の都道府県選挙管理委員会の裁決に不服があるときは、当該議会は、この裁決について出訴することができる。

3 都道府県知事が所定の期限内に法定受託事務に関する是正勧告に係る事項を行わないときは、各大臣は、この不作為について出訴することができる。

4 都道府県が担当する事務に関する国の是正の要求について国地方係争処理委員会が行った審査の結果に不服があるときは、当該都道府県の知事は、この是正の要求について出訴することができる。

5 市町村議会における条例制定の議決についての都道府県知事による裁定の結果に不服があるときは、当該市町村の議会又は長は、この裁定について出訴することができる。


問題22 正解 2
1 正しい。
 市町村の境界に関し争論があるときは、都道府県知事は、関係市町村の申請に基づき、これを地方自治法251条の2の規定による調停に付することができ (同法9条1項)、当該調停により市町村の境界が確定しないとき、又は市町村の境界に関し争論がある場合においてすべての関係市町村から裁定を求める旨の申請があるときは、都道府県知事は、関係市町村の境界について裁定することができる (同条2項)。
 そして、当該裁定に不服があるときは、関係市町村は、裁定書の交付を受けた日から30日以内に裁判所に出訴することができる (同条8項)。

2 誤り。
 地方公共団体の議会の議員及び長の選挙において、その選挙の効力に関し不服がある選挙人又は公職の候補者は、当該選挙の日から14日以内に、文書で当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に対して異議を申し出ることができ (公職選挙法202条1項)、同条1項の規定により市町村の選挙管理委員会に対して異議を申し出た場合において、その決定に不服がある者は、その決定書の交付を受けた日又は同法215条の規定による告示の日から21日以内に、文書で当該都道府県の選挙管理委員会に審査を申し立てることができる (同法202条2項)。
 そして、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙において、同法202条1項の異議の申出若しくは同条第2項の審査の申立てに対する都道府県の選挙管理委員会の決定又は裁決に不服がある者は、当該都道府県の選挙管理委員会を被告とし、その決定書若しくは裁決書の交付を受けた日又は同法215条の規定による告示の日から30日以内に、高等裁判所に訴訟を提起することができる (同法203条1項)。
 もっとも、本問の標題には、「地方自治法」で定める裁判所への出訴に関する記述とあることから、本選択肢は、誤りである。

3 正しい。
 各大臣は、その所管する法律若しくはこれに基づく政令に係る都道府県知事の法定受託事務の管理若しくは執行が法令の規定若しくは当該各大臣の処分に違反するものがある場合又は当該法定受託事務の管理若しくは執行を怠るものがある場合において、地方自治法245条の8第1項から第8項までに規定する措置以外の方法によってその是正を図ることが困難であり、かつ、それを放置することにより著しく公益を害することが明らかであるときは、文書により、当該都道府県知事に対して、その旨を指摘し、期限を定めて、当該違反を是正し、又は当該怠る法定受託事務の管理若しくは執行を改めるべきことを勧告することができ (同条1項)、当該期限までに当該勧告に係る事項を行わないときは、文書により、当該都道府県知事に対し、期限を定めて当該事項を行うべきことを指示することができる (地方自治法245条の8第2項)。
 そして、各大臣は、都道府県知事が同条2項の期限までに当該事項を行わないときは、高等裁判所に対し、訴えをもって、当該事項を行うべきことを命ずる旨の裁判を請求することができる (地方自治法245条の8第3項)。

4 正しい。
 普通地方公共団体の長その他の執行機関は、その担任する事務に関する国の関与のうち是正の要求、許可の拒否その他の処分その他公権力の行使に当たるものに不服があるときは、国地方係争処理委員会に対し、当該国の関与を行った国の行政庁を相手方として、文書で、審査の申出をすることができる (地方自治法250条の13第1項)。
 そして、当該審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関は、当該審査の結果に不服があるときは、高等裁判所に対し、当該審査の申出の相手方となった国の行政庁 (国の関与があった後又は申請等が行われた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁) を被告として、訴えをもって当該審査の申出に係る違法な国の関与の取消しを求めることができる (地方自治法251条の5第1項)。

5 正しい。
 普通地方公共団体の議会の議決がその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議に付さなければならず (地方自治法176条4項)、当該議決がなおその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、都道府県知事にあっては総務大臣、市町村長にあっては都道府県知事に対し、当該議決又は選挙があった日から21日以内に、審査を申し立てることができ (地方自治法176条5項)、当該申立てがあった場合において、総務大臣又は都道府県知事は、審査の結果、議会の議決又は選挙がその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、当該議決又は選挙を取り消す旨の裁定をすることができる (地方自治法176条6項)。
 そして、当該裁定に不服があるときは、普通地方公共団体の議会又は長は、裁定のあった日から60日以内に、裁判所に出訴することができる (地方自治法176条7項)。

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2009.01.19 Mon l 行政書士試験 平成20年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top
前回の行政書士会入会式が、好評だったので、その2として、いただいたものなどについて追加してお話します。
まず、いただいたのは、次のものです。

①行政書士マニュアル
 講義で使ったものです。行政書士倫理綱領に始まり、行政書士の歴史や行政書士法・同施行規則、日行連会則等の解説が載っています。講義で心に残っているのは、「クライアントの利益」です。何事もクライアントと相談して決めましょうね。

②行政書士倫理綱領
 どこの行政書士事務所でも、その中心に掲げられている例のものです。5箇条からなっています(五箇条の御誓文を意識したのかも)。
 わが事務所でも、掲げる予定です。B4版の紙が1枚なので、破れないように、百金で透明のケースを買ってきて、それに入れましょう。

③行政書士倫理
 上記の行政書士倫理綱領を具体化した条文集です。ただ、残念ながら、条文の性格によるものですが、その抽象性は払拭しきることはできていません。
 どうせ作るのでしたら、具体的懲戒事例を挙げた方が分かりやすいと思うのは、私だけでしょうか。

④報酬額表の見本
 行政書士事務所では、掲げなければならないものです(知らない人は、行政書士法を必ず確認して下さい)。行政書士の徽章のマークが入っている点はグッドです。フォトコピーをとっておいて、改訂版にも、そのマークを入れましょう。ホームページにも使えますね。

⑤報酬額統計調査結果
 日行連のものと、福岡県行政書士会作成のものの二つが配布されました。日行連のものは、ネットから入手できるので、既に手元にあったのですが、福岡県行政書士会作成のものはありがたいですね。日行連のものを基準に、開業前から自分なりの値段付けはやっていたのですが、やはり地域的特性があるのではないかと思っていたので、ちょっといい加減にやっていたことは否めませんね。福岡県のものが入ったので、これを基準に、再度値段付けをしているところです。
 なお、行政書士に相談されるクライアントが聞いてくるのは、費用(報酬を含む)と許認可であればその期間だそうです。
 報酬は、自由に定められる反面、高すぎると、他の同業者に持って行かれるでしょうし、またそうでなくとも、苦情相談がなされて、最終的には、行政書士会等による懲戒の危険さえあります。
 そのため、報酬額は、とても敏感にならざろう得ないですね。私のところでは、当面のところ、平均額を基準に考えています。ただ、簡単なものは、5000円以下でもよいのではないかと考えています。

 蛇足ですが、前回お話した行政書士の徽章代もしっかり取られました。値段は、4,000円です。弁護士バッジほど知られていない点は、残念ですが、コスモスがあしらってあります。
 私は、行政書士会から事務所に戻ってすぐに、これを台所にある固めのスポンジでよく磨きました。金メッキがあまりにもきれいなのは、いろいろな意味でメリットはないと思えたからです。

この話の続きは、次回しましょう。

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2009.01.18 Sun l 事務所日記 l コメント (0) トラックバック (0) l top
平成20年度 行政書士試験 問題21は、「地方自治法の定める条例制定の可否」に関する問題でした。
平成12年度前の行政書士試験の問題かと見間違うような素直な条文問題で、必ず得点しなければならない問題でした。しかも、正解肢は、過去問を解いている方には馴染みの問題でした(私としては、解説が簡単に書けて、ひどく楽でよかったですが)。
では、平成20年度 行政書士試験 問題21の解答解説を載せておきます。


問題21 地方自治法の定める町村の条例制定の可否に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1 町村は、住民による直接の選挙で首長を選出せず、議会で首長を選出する旨の条例を制定することができる。

2 町村は、議会を設置せず、選挙権を有する者の総会をもってこれに代える旨の条例を制定することができる。

3 町村は、教育委員会を設置せず、教育長にその事務を行わせる旨の条例を制定することができる。

4 町村は、選挙管理委員会を設置せず、首長またはその補助機関に選挙管理の事務を行わせる旨の条例を制定することができる。

5 町村は、監査委員を置かず、監査に関する事務を外部に委託する旨の条例を制定することができる。


問題21 正解 2
1 妥当でない。
 憲法93条2項は、「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」と規定している。

2 妥当である。
 地方自治法94条は、「町村は、条例で、第89条の規定 (=普通地方公共団体に議会を置く。) にかかわらず、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる。」と規定している。

3 妥当でない。
 普通地方公共団体には、その執行機関として、法律の定めるところにより、教育委員会を置かなければならない (地方自治法180条の5第1項1号)。

4 妥当でない。
 普通地方公共団体には、その執行機関として、法律の定めるところにより、選挙管理委員会を置かなければならない (地方自治法180条の5第1項2号)。

5 妥当でない。
 普通地方公共団体には、その執行機関として法律の定めるところにより、監査委員を置かなければならない (地方自治法180条の5第1項4号)。

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2009.01.17 Sat l 行政書士試験 平成20年度 l コメント (0) トラックバック (0) l top