平成19年度 行政書士試験 問題56は、「公的個人認証法」に関する正誤問題でした。
情報通信関連の法律として、必ず押さえておいて欲しいのは、行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(いわゆる「行政手続オンライン化法」)、電子署名及び認証業務に関する法律(いわゆる「電子署名法」)、電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律(いわゆる「公的個人認証法」)の三つです。
その他に、過去に出題された法令(e‐文書通則法、不正アクセス禁止法、迷惑メール防止法)は、今後も出題される可能性があるので、時間があれば、目を通しておくとよいでしょう。
さらに、今後出題される可能性が高いのは、プロバイダ責任制限法と電子契約法でしょうか。
本問は、公的個人認証法からの出題であり、正解肢も基本知識レベルですから、得点すべき問題でした。
なお、市販の過去問の中には、選択肢1において、住民基本台帳法39条をあげずに、「住民基本台帳に記録されている者に外国人は含まれない」とのみ記載しているものがあります。
「あなたは、分かっているかもしれないが、それでは、受験生に対する解説になっていませんね!!」と申し上げたくなりました。
では、平成19年度 行政書士試験 問題56の解答解説を載せておきます。
問題56 「電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律」 (いわゆる公的個人認証法) に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 この法律は、地方公共団体の住民である外国人に対しても認証業務を提供することを定めている。
2 この法律は、地方公共団体で公的な機関として署名をする職員をも公的個人として認証することを定めている。
3 この法律により発行される電子証明書には、氏名、生年月日、性別、本籍地が記載される。
4 この法律により発行される電子証明書は、民間での取引にも使えるように、一般の民間企業等でもその検証 (失効情報の問い合わせ) が認められている。
5 この法律により発行される電子証明書は、その発行の日から起算して3年の有効期間が定められている。
問題56 正解 5
1 誤り
公的個人認証法3条1項は、「住民基本台帳に記録されている者は、その者が記録されている住民基本台帳を備える市町村 (特別区を含む。以下同じ。) の市町村長 (特別区の区長を含む。以下同じ。) を経由して、当該市町村を包括する都道府県の都道府県知事に対し、自己に係る電子証明書 (利用者署名検証符号が当該利用者に係るものであることを証明するために作成される電磁的記録 (電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。) をいう。以下同じ。) の発行の申請をすることができる。」と規定している。このため、「住民基本台帳に記録されている者」に外国人が含まれるかが問題になるが、住民基本台帳法39条は、「この法律は、日本の国籍を有しない者その他政令で定める者については、適用しない。」と規定し、外国人を除外している。したがって、「住民基本台帳に記録されている者」に外国人は含まれない。
よって、「この法律は、地方公共団体の住民である外国人に対しても認証業務を提供することを定めている。」との記述は誤っている。
■ 外国人については、外国人登録法に基づいて、その氏名等が外国人登録原票に登録され、これが市町村の事務所に備えつけられる (同法4条)。
2 誤り
公的個人認証法は、「住民基本台帳に記録されている者」のみを認証の対象としている (同法3条1項)。
よって、「この法律は、地方公共団体で公的な機関として署名をする職員をも公的個人として認証することを定めている。」との記述は誤っている。
3 誤り
公的個人認証法7条は、電子証明書には、①電子証明書の発行の番号、発行年月日及び有効期間の満了する日、②利用者署名検証符号及び当該利用者署名検証符号に関する事項で総務省令で定めるもの、③利用者に係る住民票に記載されている事項のうち住民基本台帳法第7条第1号から第3号まで及び第7号に掲げる事項 (同号に掲げる事項については、住所とする。) 、④その他総務省令で定める事項を記録するものとすると規定している。ここに、「住民基本台帳法第7条第1号から第3号まで……に掲げる事項」とは、氏名、出生の年月日及び男女の別である。このため、本籍地については記載されない。
よって、「この法律により発行される電子証明書には、氏名、生年月日、性別、本籍地が記載される。」との記述は誤っている。
4 誤り
公的個人認証法は、行政機関等に係る申請、届出その他の手続等において、本人確認手段として従来書面等による申請等で行われてきた署名等に代わる手段をどうするのかという問題に対処するために制定された。それゆえ、本法に基づいて地方公共団体が発行する電子証明書が、民間での取引において利用されることは予定されていない。このような本法制定の経緯等にかんがみれば、一般の民間企業等からの電子証明書の検証 (失効情報の問い合わせ) が認められないことは当然である (同法7条、8条参照)。
よって、「この法律により発行される電子証明書は、民間での取引にも使えるように、一般の民間企業等でもその検証 (失効情報の問い合わせ) が認められている。」との記述は誤っている。
5 正しい
公的個人認証法5条は、「電子証明書の有効期間は、当該電子証明書の発行の日から起算して3年とする。」と規定している。
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